iichikoSAITEN: A Modern Shochu Given Wings at a Sacred Shrine
三和酒類の新たな挑戦。「iichiko彩天」世界での飛躍を願う祈願奉納祭
November 2025
“下町のナポレオン”を手がける三和酒類が、2年半をかけて生み出した“和スピリッツ”「iichiko彩天(さいてん)」。“天=世界”に日本の新しい彩りを添えるという思いを込めた一本だ。その門出を祝うべく、11月上旬に同社が本社を構える宇佐市の宇佐神宮にてiichiko彩天 祈願奉納祭が執り行われた。本格焼酎の未来を切り開く新商品、神前で静かに、しかし力強く世界へ羽ばたいていく──その瞬間をレポートする。
text yukina tokida
大分県が誇る麦焼酎「いいちこ」。“下町のナポレオン”として親しまれるこのブランドをはじめ、日本酒「和香牡丹」や「安心院(あじむ)ワイン」など、幅広い酒づくりを行う三和酒類から、2年半の歳月をかけた渾身の新作が誕生した。その名は「iichiko彩天(さいてん)」。“天”=世界に、日本の新しい“彩(いろどり)”をもたらしていくという思いを込めて名付けられた本格麦焼酎であり、バーテンダーたちがカクテルを作るために生まれた“和スピリッツ”だ。
工場には最新設備が導入されている。麦をおよそ60〜70%まで精麦した後、「製麹」の工程を経て大麦麹をつくる。つづいて、その大麦麹を使って一次、二次の2段階で「仕込み」を行い、さらに「蒸留」することで本格焼酎の原酒が生まれる。三和酒類では、原料選びから仕込み、蒸留、貯蔵までのあらゆる段階に工夫を重ねており、その結果、実に多彩な原酒がつくられている。この“多様な原酒を生み出せること”こそが、同社の大きな強み。「iichiko彩天」はもちろん、通常の「いいちこ」もそれらの多彩な原酒をブレンドをすることで味を整え安定した品質を保っている。そのブレンド業務を担うことができるのは、社内でも限られた担当者のみだという。むくむくと湧き上がっている泡は、発酵が進んでいる証。
「iichiko彩天」は、厳選した大麦を用いた全麹仕込みによってつくられ、個性の異なる複数の原酒を巧みにブレンドすることで、奥行きのある味わいを実現。世界のトップバーテンダーたちとともに試作、試飲を重ね、ようやく完成へとこじつけた。
口に含むとまず、力強くも澄んだ味わいが広がり、その後に麦麹由来の“うまみ”がゆっくりと立ち上がる。フルーティなアロマや、軽やかな苦味がレイヤーを成して押し寄せる複雑な構造が魅力だ。
アルコール度数は43度。世界のバーテンダーが創造性を発揮できる“余白”を残した度数でもあり、これまでありそうでなかった、理想のカクテルベースとして作られた一本だ。すでに米国とシンガポールでは先行して発売が開始しており、有力メディアや業界誌等でも注目が集まっている。
今回のiichiko彩天 祈願奉納祭が行われた宇佐神宮は、奈良時代の創建と伝わる、全国約4万社を擁する八幡宮の総本宮。応神天皇を主祭神として祀り、古来より皇室や武家の篤い崇敬を集めてきた日本屈指の古社である。
本殿は国宝に指定されており、宇佐神宮独自の「八幡造(はちまんづくり)」と呼ばれる建築様式(横から見るとM字に見える屋根)は、神社建築史においても極めて重要な存在として知られている。1300年にわたり日本の信仰と文化を守り続けてきた場所であり、「いいちこ」の命名披露が行われたゆかりの地でもある。この聖地で新たな焼酎文化の挑戦を祈願する意義は計り知れない。
祈願奉納祭当日は曇りの合間に青空も覗き、風も一切なく、穏やかな天候に恵まれた。とりわけ印象的だったのは、静まり返った境内にシェイカーの音が響いた瞬間。東京の「BAR HIGH FIVE」のオーナーバーテンダーであり、一般社団法人日本バーテンダー協会会長の上野秀嗣氏が監修した3種類のオリジナルカクテルが、その場で次々と作られ、神前へ奉納されたのである。伝統ある神前でバーテンダーがシェイクをする光景は、まさに古と今が交差し、文化が新たに息づく瞬間を体現していた。
奉納された3種のカクテルは、いずれも「iichiko彩天」の個性を際立たせつつ、宇佐神宮の地ならではの物語をまとった仕上がりだった。まず一杯目の「白麹麗人(ホワイト麹レディ)」は、上野氏が得意とするクラシックカクテル“ホワイトレディ”に着想を得たもので、「iichiko彩天」にコアントローとフレッシュレモンジュースを合わせた、爽やかでエレガントな味わいのカクテルだった。
左から順に、「天空の麹」、「白麹麗人(ホワイト麹レディ)」、「神麹(しんきく)」。
二杯目の「神麹(しんきく)」は、三和酒類が手がける、宇佐神宮の勅祭・御鎮座1300年を奉祝して醸造された「安心院ワイン八幡果酒」にグレナデンシロップを合わせたもので、特別なワインの深みと豊かな甘みが重なる飲みやすいカクテル。深い紅色が神前で一層映え、まさに奉納にふさわしい雅やかな一杯だった。
そして三杯目の「天空の麹」は、「iichiko彩天」のボトルを彷彿とさせる鮮やかな青が印象的な一杯。ブルーキュラソーとブラックサンブーカ、そこにフレッシュレモンジュースを合わせ、アニスの香りがクセになる、心地よい余韻をもたらしていた。
今回の奉納は、単なる新商品の披露にとどまらず、日本の酒造文化そのものが次の時代へ進むための象徴的な出来事だ。三和酒類が長年培ってきた技術と理念が、新たな挑戦へと舵を切りはじめたのである。“彩天”という名に託された想いとともに、日本発の蒸留酒が世界にどのような彩りをもたらしていくのか、期待は尽きない。
なお、現在は、大分県内のバーにて、奉納されたカクテルの提供が順次開始されている。具体的には、大分市の「BAR USB」「Bar Weather Report」「Sar.VA」をはじめ、別府市の「BAR Blue point」「ROUTE10」「TANNEL」、中津市の「IRISH BAR ARIGO」、日田市の「BAR if」など、各地の名店ばかり。
また、日本全国のバーで「iichiko彩天」を使ったカクテルも続々と登場している。東京では、ザ・リッツ・カールトン東京の「The Bar」や銀座の「Bar LIBRE GINZA」、関西では大阪・心斎橋の「KARUDA」等で楽しめる。ぜひチェックしてみてほしい。
iichiko彩天















