HOTELS DELUXE Vol.26
ホテル連載第26回:ホテルで鍋を囲む
December 2023
長かった夏も終わり、ようやく鍋が恋しくなる季節がやってきた。大人数で気軽に集まれるようになった今年の冬は、ホテルならではの手間ひまかけられた贅沢鍋を囲むのはいかがだろう。
text yukina tokida
<グランド ハイアット 東京>
ホテルの鍋といえば“グラハイ”の火鍋! 年内は旬の上海蟹、年が明けたら豪華食材が目白押しの開運鍋が登場。
10年ほど前からある、ホテルの名物ともいえる存在の火鍋。肉や海鮮、野菜や締めの中華麺といった鍋の具材に加え、前菜やデザートもついてくる。上写真:「上海蟹 贅沢火鍋」¥16,500(要3日前予約)下:「開運ドラゴン火鍋」¥20,000(要5日前予約)※いずれもディナー限定。金額は1名分。注文は2人前より。税込・サービス料15%別
ホテルで食す鍋といわれて忘れてはならないのが、グランド ハイアット 東京の火鍋だ。時期によって異なる具材やスープを楽しめるのが魅力で、現在は上海蟹をひとり1杯食べられる「上海蟹 贅沢火鍋」(12月20日まで)が提供されている。そして来年1月15日からは、縁起のよい食材が盛り沢山の「開運ドラゴン火鍋」が登場。伊勢海老(龍蝦)やがんもどき(飛竜頭)、アスパラガス(龍髭菜)などの来年の干支である「辰」にちなんだ具材だけでなく、キャビアやツバメの巣などの高級食材を包み込み、金運・恋愛運・健康運を願った3色の水餃子から、出世の象徴として知られる鯉まで堪能できる。
どちらも土台となるのはふたつのスープで、ひとつはアヒルと豚肉、金華ハムと丸鶏、干貝柱を8時間煮込んだ白湯(パイタン)。そしてもうひとつが、それにシャンタンスープを合わせ、唐辛子や白芷、花椒や生姜といった9種類もの香辛料を加えた麻辣スープ。コラーゲンたっぷりの白と、さまざまな薬膳が入った赤で、肌はぷるぷるに、身体はポカポカになること間違いなし!
身を置いているだけで運気が上がりそうな、深紅に包まれた店内。インテリアを手がけたのはデザイナーのトニー・チー。
中国料理「チャイナルーム」
TEL. 03-4333-8785
<The Okura Tokyo>
なんと予約不要。オークラ東京「山里」の真骨頂を見る、天然ものの「クエ」を余すことなく味わえる贅沢鍋。
「クエのあら炊き」1人前 ¥17,000(税金・サービス料込)※写真は2人前。1人前から注文可能。
“ホテルの和食堂”をコンセプトのひとつに掲げるオークラ東京の日本料理「山里」では、大人数での利用時や特別メニューなどの一部を除き、基本的に食事内容の予約が不要だ。ランチもディナーもアラカルトで注文できるため、100種を超える多彩なメニューから自分好みのコースを作り上げることもできてしまう。
鍋においては、すき焼きやしゃぶしゃぶなどの通年で提供されているメニューに加え、冬期にはふぐちり鍋も登場するが、なんといってもこの冬の主役は、体長1メートル以上にもなる“幻の魚”「クエ」。養殖が増えている昨今でも、山里では主に長崎県産の天然ものにこだわっている。食べ進めるにつれて溶け出す野菜の甘みとクエの旨味を味わえるよう、出汁はかつおと醤油というシンプルスタイル。締めを食べる頃には絶品スープに仕上がっている。特筆すべきは、クエが薄めに切られていること。一度に煮込むのではなく、スタッフが各テーブルで1枚ずつ出汁に軽くくぐらせてミディアムレアの状態でサーブしてくれるのだ。何とも言えない食感と旨味を存分に味わい尽くしていただきたい。12月26日から1月15日を除く1月末までの提供だ。
内装はホテルロビーをデザインした建築家の谷口吉生氏によるもの。個室がある西側の窓の外には、水が渓谷から海に流れ出るまでを表現した石庭、北側には青々とした苔庭が広がる。
日本料理「山里」
TEL. 03-3505-6070
<パーク ハイアット 東京>
2日間かけて取った鶏白湯でいただく奈良の郷土鍋。来年5月の一時休館までに、ぜひとも味わっておきたい。
「匠」コース ¥22,000 /「飛鳥鍋」単品(ディナータイムのみ)¥4,180(税込・サービス料別)※写真は2人前。金額はいずれも1名分。1人前から注文可能。
「大鉢や大皿に盛りつけられた料理を複数人で一緒に楽しんでほしい」。この思いを大切にしているパーク ハイアット 東京の日本料理「梢」は、鍋料理を通年で楽しむことができるホテルダイニングのひとつだ。春は筍や桜鯛、秋には鱧や松茸など、旬の食材の旨味を最大限に味わえる品であるため、コース料理には常に鍋をラインナップしているという。
直近の12月7日から12月30日(20〜25日を除く)に堪能できるのは、鶏肉や野菜を牛乳や出汁で煮込んだ奈良の郷土料理である「飛鳥鍋」。こだわりの白湯(パイタン)スープには鶏を余すところなく使用し、骨や皮、首や足の部分まで大きな寸胴鍋で丸々2日間じっくり煮込んでいる。コク、甘み、旨味がぎゅっと凝縮されたそれは、五臓六腑に染みわたるほど滋味深い。骨付きもも肉やつくねに加え、九条葱や赤こんにゃく、蕪(かぶ)や粟麩(あわふ)といった関西で親しまれている具材を楽しめるのも魅力的だ。2024年の開業30周年を節目にさらに居心地のよい空間へと進化すべく、5月7日のチェックアウト後から約1年の休業が決まったパーク ハイアット 東京。しばらく利用できなくなってしまう前に、ぜひ食べておきたい一品だ。
壁一面の大きな窓から、晴れた日には富士山を、夜は息を呑む煌びやかな夜景を望む。吹き抜けの高い天井が開放的な空間を画家の三輪美津子氏による絵画(写真右上)が彩る。
日本料理「梢」
TEL. 03-5323-3460