HÔTEL de L’ALPAGE IN TATESHINA, JAPAN

パリのエスプリが宿るオーベルジュ「ホテル ドゥ ラルパージュ」

July 2024

2024年3月、蓼科に誕生した「ホテル ドゥ ラルパージュ」には、「上質な日常」が当たり前にある。まるで旧知の知人宅を訪れたような、穏やかで安らぎに満ちた時間を約束してくれる。

 

 

text yukina tokida

 

 

 

自然の光が差し込むウィンターガーデン。高い天井、上部両側に施されたモールディング、回廊へと続く美しいアーチ、洗練されたアート作品や家具など、すべてが見事に調和した空間は、邸宅のような温もりで包み込んでくれる。©Nacasa & Partners

 

 

 

 長野県の蓼科から美ヶ原高原まで続く全長約75kmのビーナスライン。信州随一のドライブロードとして知られるこの道沿い、蓼科湖のほど近くにオーベルジュ「ホテル ドゥ ラルパージュ」は佇む。

 

 旧宮家別邸跡地に建っていたホテルハイジが2018年に老朽化のため休館したあと、新オーナー戸部浩介氏による指揮の下、建て替えを経て全12室のホテルへと生まれ変わった。「ラルパージュ」とは、仏アルプス地方の方言で「夏の高原の牧草地」のこと。アルプスの高原を彷彿とさせるこの地で安らぎの時間を過ごしてほしいという想いが込められている。

 

 青々とした芝生に囲まれたその姿は、まるでフランスのとある邸宅のよう。自然光が差し込むウィンターガーデン、優美な螺旋階段、クラシックなアーチ型の天井が美しい回廊、アンティークのシャンデリア……17 〜19世紀のデザインやアートの潮流を感じさせるインテリアがちりばめられているが、すべてが見事に調和している。不思議と居心地のよさを感じる空間だ。

 

 オーナーの戸部氏は、幼少期からフランスを訪れる機会に恵まれたという。

 

「実業家で美食家の父と仏文学者の母の影響で、フランスの暮らしに感化されました。各地の知人宅はいずれも明るくゆったりとしていて、暖かく穏やかな空間でした。高い天井と大きな窓で圧迫感がなく、心が安まったことを覚えています」

 

 

チェックインを行うレセプション。中華風のパゴダを描いた18世紀の絵画をはじめ、チャイナチェアやチャイナラグなど、神秘的な東洋への憧れから生まれたデザイン様式「シノワズリ」を現代的に捉え、随所にちりばめている。左手に見える暖炉や右手の絵画も18世紀のもので、頭上のシャンデリアは19世紀のヨーロッパで実際に使われていたもの。©Akira NAKAMURA

 

 

職人の卓越した手仕事に触れられる、3階まで続く螺旋階段。ステンドグラスが見せる時間帯によって異なる表情が美しい。©Nacasa & Partners

 

 

 

 デザインや建築への興味を搔き立て、彼の卓越した美的感覚を形づくることになった幾度ものフランスでの体験のすべてをこの場所で体現することは、必然的なことだった。「ホテル ドゥ ラルパージュ」には、戸部氏がかつて見た景色が凝縮されている。行きつけのカフェの看板の色はダイニングの壁に用いられており、知人宅でよく目にした中国趣味「シノワズリ」はレセプションのあらゆるところに見られる。螺旋階段ではドーバー海峡の空の色が壁一面を彩り、照明のスイッチやドアノブまでヨーロッパから取り寄せた。壁の色味や床の質感、家具や照明、蝶番やサッシにいたるまで、戸部氏の審美眼によってまとめあげられている。

 

 客室の窓はフレンチスタイルの内開きで、いずれも縦長の設え。夏には新緑、冬には雪景色や雲海と、蓼科が誇る自然豊かな四季折々の姿を引き立てる。2階と3階の客室には、パリの高級アパルトマンさながらバルコニー付きの広々としたバスルームを備えており、すぐそこに自然を感じながらバスタイムを過ごせる。

 

 

最上階の3階に位置する、屋根裏部屋を思わせる「スイートルーム#31」(126㎡)のリビングルーム。©Akira NAKAMURA

 

 

「スイートルーム#21」(107㎡)のベッドルーム。全客室に「デュヴィヴィエ」のソファや「デュクシアーナ」のマットレスなどを採用し居心地のよさを追求。©Akira NAKAMURA

 

 

大きな窓が設えられたバスルーム。アメニティは「ソティス」のもの。©Akira NAKAMURA

 

 

 

 ダークな木材が基調となったバー「ル・レーヴ」には、オペラ座で実際に使われているものと同じチェアやヴィンテージ調の鏡などが配され、落ち着いた雰囲気が漂う。ここには1000冊以上が揃うライブラリーだけでなくシガールームもあり、自分の別邸のようにくつろげる。

 

 オーベルジュというだけあって、食へのこだわりもひとしお。青山のイル・ド・フランス元総料理長である東敬司氏が監修するレストラン「ル・ジャルダン」では、“毎日食べられるご馳走”をコンセプトに、季節の地産食材を使ったフレンチを楽しめる。コースではあえて品数を少なめに設定。戸部氏がフランスで食べていたような、一皿一皿にボリュームを持たせつつ、雑味を削ぎ美味を凝縮させたライトな味付けの料理を提供することで“あそこのあの料理が美味しかった”としっかりと記憶に残るレストランでありたいという思いをカタチにした。開業したばかりのため現在はコースだけの提供だが、今後はアラカルトも充実させていくという。

 

「家で食事をするのと違って、レストランはみんな違うものを楽しめる場所でありたい。一流のレストランはそうあるべきではないでしょうか」

 

 

絶妙な色使いが実にエレガントなダイニング。©Nacasa & Partners

 

 

スペシャリテのひとつ「特選牛フィレ肉のポワレ ソースボルドレーズ」。東敬司シェフ監修のフレンチは優しい味わいが魅力。朝食では和食も用意されている。©Akira NAKAMURA

 

 

2000本以上揃うワインはすべてフランス直輸入。©Akira NAKAMURA

 

 

バーの壁には建築や芸術など多彩なジャンルの1000冊以上の蔵書が並ぶ。すべて手に取って読むことが可能。©Nacasa & Partners

 

 

バーにはシガールームも。コイーバやパルタガスなど7~8種類が揃う。©Akira NAKAMURA

 

 

 

 酒類のセレクションも非常に充実している。すべて古い馴染みであるフランスの酒屋から直接仕入れたもので、2000本以上あるワインはいずれもフランス産。日本ではなかなかお目にかかれないようなものも揃っており、なかでもぜひ一度ご賞味いただきたいのがサレール(リンドウ酒)だ。フランスの特定の地域でしか造られていないリキュールで、一般的に黄色いキャップのものが出回っているが、ここではパリでもなかなか出合えないという貴重な赤いキャップのものを味わえる。

 

 上質なものだけに触れることができるこの類い稀なオーベルジュで、至福のひとときを満喫していただきたい。

 

 

HÔTEL de L’ALPAGE(ホテル ドゥ ラルパージュ)

長野県茅野市北山4035-1820

TEL.0266-67-2001

https://hotelalpage.com/

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