HAKONE RETREAT före & villa 1/f

【試泊記】週末をゆったりと過ごす隠れ家「箱根リトリート före & villa 1/f」

August 2024

text kentaro matsuo

 

 

 

 

 仙石原は、約2万年前は芦ノ湖の湖底だったといわれている。3千年前に中央火口丘の神山が水蒸気爆発を起こし、大量の岩くずがカルデラ床に流れ込んで川がせき止められ、誕生したのが仙石原高原だそうだ。景勝と温泉に恵まれた土地ゆえ、このあたりには昭和の昔から旅館、ホテル、美術館などが集まり、都心から至近のリゾートとして人々に愛されてきた。

 

 

 

 

「箱根リトリート före & villa 1/f」はそのうちの白眉のひとつである。国道から少し入った仙石原の森の中に佇んでいる。標高700mに位置する1万5千坪(東京ドームとほぼ同じ)という広大な敷地内に、37室のモダンなホテル「före(フォーレ)」、18棟からなるコテージエリア「villa 1/f(ヴィラ ワンバイエフ」、料亭、レストラン、カフェラウンジ、温泉・スパ施設などが建ち並んでいる。

 

 

 

 

 2024年8月には施設内に「いぶきVILLAエリア」が設けられ、7棟のヴィラが新築された。それぞれ90〜180㎡の広さを誇っている。木立の中に立つ山小屋をコンセプトとし、室内は天然の木材としっくいが多く使われ、モダンかつ温かみのある空間となっている。

 

 

 

 

 各部屋に共通しているのは、本物の薪を燃やすことができる薪ストーブや、24時間自動で天然温泉湯が張られているヒノキ内風呂などである。空調や電気設備は最新のものが奢られている。自らミルを回すコーヒーセット、世界の銘醸が保管されているワインセラーも用意されている。

 

 

 

 

 プライベートガーデン、屋外テラス、ダイニングルームやキッチンを備えているヴィラもあり、グループでバーベキューパーティを楽しむこともできる(ただしどのヴィラにもテレビはない。自然のなかで静かなひとときを楽しんでほしいとの願いからだ)。

 

 

 

歴史を感じさせる料亭

 

 

 

 敷地内にある料亭「俵石」は、大正3年(1914年)に当時の名大工・島田藤吉が手掛けたもの。110年の歴史を誇る由緒ある建物だ。昭和25年(1950年)には当時の皇太子殿下(現上皇陛下)がご来泊された。

 

 

 

 

 杉板を薄く切って編んだ網代天井、彫り模様を入れた名栗(なぐり)加工の床、現在ではもう作ることができない大正硝子の窓など、珍しい意匠を目にすることができる。

 

 

 

 

 ここでは茶道体験を楽しむことができる。鶴の欄間を頂いた鶴の間に織部床(簡易的な床の間)が立てられ、お点前が披露される。教えるのは裏千家50年の経験を持つ柴崎英一氏(80)である。歴史の薫り漂う建物の中で頂く抹茶はことのほか美味である。日本人のみならず、外国人にも大好評だそうだ。

 

 

 

 

 午後のひとときは、フリースペースの「free bird & terrace」で過ごすのがおすすめだ。15〜18時までの時間帯は、ドリンク類や季節のサービス(8月はかき氷)が無償で提供されている。ブックディレクター、幅允孝氏がセレクトしたライブラリーにて、紙の本の頁をめくるのも楽しい。

 

 

 

料亭での懐石コースに舌鼓

 

 

 

 夕食は俵石が誇る本格懐石料理に舌鼓をうった。京都で修業を積んだ料理長、濱中明利氏の腕が冴えわたる。以下夏の「涼味 懐石」メニューを見てみよう。

 

 

「前菜」ほおずき山桃、鱧小袖すし、ずいき胡麻酢和え、うちわ大徳寺、夏鴨のロース甲州蒸し、小茄子田楽、朝顔長芋

 

 

 涼しげなガラス皿に載せられた夏の味覚。ほおずきの萼(がく)のオレンジが鮮やかだ。

 

 

「煮物椀」ぐじ焼ちり、胡麻とうふ、針山葵、花穂

 

 

 ぐじ(甘鯛)と胡麻豆腐を一椀に合わせたもの。上品さが際立つ一品。

 

 

「お造り」旬の魚盛り、土佐醤油

 

 

 マグロ、鯛の他、新鮮な太刀魚が刺し身として供された。器は織部焼である。鰹出汁の効いた土佐醤油で。

 

 

「焼肴」活け鮎塩焼、ぱぷりか伽羅煮

 

 

 夏の味覚の代表格、新鮮な鮎をシンプルな塩焼きで。頭からかぶりつけば口中に瑞々しい味が広がる。

 

 

「冷し鉢」小芋、姫もろこし、賀茂茄子、花茗荷、あすぱら、ジュレ掛け

 

 

 夏野菜に絶妙な加減で火を通し、冷たいジュレをかけたもの。ここでほっと一息。

 

 

「強肴」黒毛和牛フィレ肉、花付きズッキーニ、万願寺醤油

 

 

 メインは高級和牛を炙ったもの。柔らかく滋味あふれる味。旬の花ズッキーニの天ぷらと。

 

 これにもろこし御飯、赤だし、香の物、水菓子が付く。コースは旬の夏素材がふんだんに使われた、涼感溢れるものだった。

 

 

 

 

 ゆったりと大きな浴槽で手足を伸ばしたいという方には、大浴場も用意されている。露天風呂では四季折々の風景とともに、豊富で高品質な温泉を満喫することができる。併設されたスパ「konoha spa」では、自然界の音を聞きながら、さまざまなトリートメントを受けることが可能だ。

 

 

 

 

 翌朝の朝食は、レストラン「WOODSIDE dining」にて。さまざまなサラダ、グリル、パンなどをブッフェ形式でいただく。新鮮な卵料理などのオーダーも可能だ。このレストランでは、夜には地元の食材を薪窯でシンプルに調理した「薪焼きコースディナー」が提供される。

 

 

 

 

「箱根リトリート före & villa 1/f」は、東京から2時間足らずで行くことができる本格リゾートである。こんこんと湧き出る温泉とプライベート感溢れるモダンなスペースが魅力だ。歴史を感じさせる建物でいただく和懐石は記憶に残る美味しさである。週末をゆったりと過ごす隠れ家として、これ以上の施設はないだろう。

 

 

 

箱根リトリート före & villa 1/f

神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1286-116

TEL.0460-83-9090(10:00~18:00)

www.hakone-retreat.com/villa/

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