Hotel Hatsuhana in Yumoto, Hakone
【試泊記】全館リニューアルした箱根の「はつはな」で四六時中温泉三昧
October 2025
全館リニューアルを経て、2022年9月に箱根の名宿「はつはな」が生まれ変わった。全客室に自家源泉の露天風呂を備え、四季の景色とともに楽しむ極上の湯浴み、神奈川の恵みを生かした美食、そして滞在中は好きなだけお酒も味わえる。日常を忘れ、心と五感を満たす“癒やしの時間”がここにある。
text yukina tokida
日本の宿泊文化の象徴ともいえる「旅館」は、日常を忘れさせてくれる特別な存在だ。なかでも館内を浴衣で移動できる旅館では、チェックイン直後から温泉に浸かり、その後も好きなときに好きなだけ湯浴みを楽しめる。食事の準備も片付けも不要で、翌朝のチェックアウトまで心身ともに解きほぐされる──そんな贅沢な時間が待っている。
最近試泊の機会を得た箱根の「はつはな」も、そんな理想的な過ごし方のできる宿だった。“はつはな”の名を聞いて、ご存じの方もいらっしゃるのではないだろうか。前身は、小田急リゾーツが1993年に箱根の地に開業した和風ホテル「ホテルはつはな」。約30年の時を経て、現代のスタイルに寄り添った設えにアップデートするべく、2022年9月にリニューアルオープンを果たした。
新たなコンセプトは、「心と五感が満ちる静かなとき」。ゆったりとしたチェックインエリア兼ラウンジをはじめ、壮大な景色をより楽しめるような客室の配置、全室に備えられた自家源泉の温泉、さらには地元の食材を最大限に生かした食事など、四季の移ろいとともに箱根、そして神奈川を存分に楽しめる館へと進化した。
立地は、湯坂山を目の前に、右手の遠くに相模湾を望み、テラスや露天風呂からは須雲川の水音が心地よい場所。箱根湯本駅からは車で5分程度と非常に便利なロケーションにあり、箱根湯本駅からの送迎も行っている。
この宿の最大の特徴は、どの客室にも自家源泉の露天風呂を擁していること。文字通りいつでも好きな時に極上の温泉を楽しめるのだ。
室内は、靴を脱いで上がるスタイルで、畳の部屋や絨毯、なぐり加工の無垢材の床など、いろいろな表情を見せてくれる。13タイプもラインナップしている多彩な客室のなかでも、THE RAKEのおすすめは、ロビーフロアに位置するラグジュアリー Eタイプの「雅(みやび)」。約90㎡の空間には、5メートル近い天井高と大きな窓がもたらす開放感が広がり、リビングでは読書や語らいを楽しみ、畳の間では昼寝をするなど、思い思いの時間を過ごせる。テラスの露天風呂に身を沈めれば、川のせせらぎと山の風が五感を優しく包み込んでくれる。
客室の備品等も充実していて、お酒好きな方やコーヒー好きの方にとっても非常に満足度の高い内容になっている。冷蔵庫にはパイパーエドシック(ラグジュアリータイプ限定)やホテルオリジナルの地ビール、さらにはオリジナルハーブティーやコーヒー豆3種類(ゲイシャブレンド/貴腐コーヒー/パプアニューギニア エリンバリ)もラインナップ。コーヒーミルで飲む直前に挽くことで、香り豊かな一杯をいつでも楽しめる。
気になる泉質は、アルカリ性単純温泉。無色透明で、肌がスベスベになると言われる「美人の湯」としても知られ、リュウマチや筋肉痛などの効能が期待できる。客室の温泉だけで満足してしまうと思うが、少し気分を変えたくなったら、予約制の貸切風呂(4タイプから選ぶことが可能)か、趣の異なる2つの大浴場もおすすめだ。大浴場までの廊下には、自由に楽しめるアイスキャンディーや小さいビール、さらにはコーヒー牛乳まで用意されていた。
さらなる特徴のひとつが、チェックイン直後からラウンジにて好きなだけ色々なお酒(ワインや生ビール、ウイスキーやラムまで揃う)やソフトドリンクを楽しめること。食前のアペリティフも、食後のプティフール、コーヒーやお茶も楽しめる。
食事についても、神奈川県産のものを中心に新鮮な季節の食材をふんだんに使った、モダン懐石を堪能できる。筆者が訪れた際の夕食には、鱧と焼き茄子を合わせた出汁が香る椀から、相模湾を中心とした近海で採れた鮮魚盛り、炭火焼した肉厚の相州牛をしゃぶしゃぶのようなトッピングでいただく炭が香る肉料理までボリュームたっぷり多彩に並んだ。締めには、小田原米「はるみ」を使った鰻ご飯まで登場し、神奈川が誇る豊かな食材の恵みを余すところなく堪能できた。
食事に合わせられるドリンクのラインナップも秀逸で、まず日本酒については、神奈川地酒が常時約10種類用意されているし、全国の日本酒も常時10種類ほど北は青森から、南は三重県まで多彩に揃っている。ワインについても、日本のワインからフランスのものまで充実しており、食事に合わせてペアリングを選ぶのもおすすめだ。
ソフトドリンクについても、神奈川県に拠点を置く「ロイヤルブルーティー」のお茶をワイングラスで楽しめるほか、湯河原の桜井農園で栽培している手むきみかんジュースや小田原産の梅を使った完熟梅ソーダなど、幅広い選択肢が用意されている。
翌朝の朝食は、箱根の寄木細工で作られたお重で提供される。小田原名産の蒲鉾や富士山の水で育てられた富士レタス、出来立ての豆腐、その日の焼き魚、そして炊きたての小田原米「はるみ」まで、日本の旅館ならではの、誰もがお腹いっぱいになれるような充実した朝食を楽しめる。
都心からわずか1時間半。思い立ったらすぐに出かけられる距離で、心も身体もほどけていくような温泉旅が待っている。非日常の静けさに身を委ねる週末を、「はつはな」で過ごしてみてはいかがだろうか。
はつはな
神奈川県足柄下郡箱根町須雲川20-1
TEL. 0460-85-7321(受付時間10:00~19:00)
















