GREGORY KISSLING, Breguet CEO —Interview—

ブレゲ250年、その歩みの先にある挑戦

January 2026

ブレゲのCEO、グレゴリー・キスリング氏が、2本の新作を携えて来日。新たな250周年記念モデルは、その先にあるメゾンの挑戦を暗示する。

 

 

text norio takagi

photography tatsuya ozawa

 

 

Gregory Kissling/グレゴリー・キスリング

マイクロテクノロジーを学び、学士号とMBAを取 得。さらにラグジュアリーマネージメントの修士号を取得した後、カルティエの技術部門を経て、2004年にオメガ入社。プロダクトマネージメント責任者として経験を積み、2022年に商品開発担当副社長に就任。新たなコラボレーション、イベントの企画にも携わってきた。 2024年10月1日、ブレゲCEOに就任。

 

 

 

 ブレゲは2024年10月1日、オメガの副社長を務めていたグレゴリー・キスリング氏を新CEOに任命し、その翌年に控えた創業250周年の舵取りを委ねた。彼がCEO就任2カ月後に来日した際は、「250周年記念モデルは複数予定しており、どれもブレゲの遺産と現代、そして未来をつなげるタイムピースになる」と語っていた。今年4月にパリで最初に発表された記念モデルは、時針のみが備わるミニマルな「クラシック スースクリプション 2025」。これはアブラアン-ルイ・ブレゲが、フランス革命で痛手を負った工房を立て直すために販売価格の4分の1を前金で受け取る予約支払い制(スースクリプション)を考案し、売りだした懐中時計をモチーフとしている。

 

「最もシンプルな単針時計を記念モデル最初にリリースしたことは、多くの人に驚かれました。しかしスースクリプションがなければ、ブレゲは今日まで続かなかったと思います。ですから250周年のスタートを飾るにふさわしいと考えました」

 

 同モデルはパラジウムを新たに加えた独自の18金、ブレゲゴールドを初採用。イエローゴールドとピンクゴールドの中間色のような色味が、優しい印象を与える。

 

「これは、18世紀の懐中時計のケースの色に近づけるため開発しました。またパラジウムが銅の酸化を抑制するため、美しい色が長く保たれるのも特徴です。ブレゲゴールドは記念モデル専用ではなく、来年以降、通常モデルでも展開していきます」

 

 以降毎月、世界各地で250周年記念モデルが披露されてきた。そして今年10月、東京でキスリング氏が披露したのが「クラシック 7225」と「クラシック 7235」。いずれもダイヤルは初代製作の懐中時計に範をとる。7225は3作目のトゥールビヨンNo.1176、7235は初期の名作No.5である。

 

「No.5をモチーフとしたモデルは80年代から続いていますが、今回の7235はムーブメントを一新したまったくの新作です。ダイヤルにもブレゲゴールドを用い、創業の地であるシテ島とサン-ルイ島をモチーフとした新たなケ・ド・ロルロージュ模様の手彫りギヨシェを施しています」

 

 

クラシック 7225

マグネティック・ピボットは、テンプの軸を浮かせるように保持するため、摩擦を極限まで軽減。毎秒20振動という超ハイビートを実現した。その精度は、日差わずか±1秒。6時位置のパワーリザーブ計は、60時間を数える。手巻き、18Kブレゲゴールドケース、41mm。¥12,617,000 Breguet

 

 

 

 一方の「クラシック 7225」が規範としたNo.1176は、トゥールビヨンに加えて伝達トルクを均一にするフュゼ・チェーンが備わった高精度機だった。

 

「7225では、テンプの軸の両端を磁石で保持するマグネティック・ピボットで高精度化を図りました。時計の姿勢が変わっても軸先は磁力で常に軸受けの中央に保持されるため、精度が保たれます。これは現代版のトゥールビヨンともいえるでしょう」

 

 さらにケース左サイドのスライダーを操作すると、10時位置のスモールセコンドが0位置にフライバックするクロノグラフ機構も組み込まれている。そしてエングレービングで美を織り成したムーブメントのブリッジには、Bのロゴの周囲に模様を配した見慣れぬ刻印が見つかる。これは新たに制定した独自の品質保証マーク、“ブレゲ・シール”である。メゾン伝統の装飾仕上げ、精度、防水性など美観と機能のすべてに既存の社内規定より厳しい基準を定め、それに準拠していることを示す。

 

「来年以降、他のモデルでも同じ基準に準拠させていきます。ハードルはかなり高く、きっと時間はかかるでしょうが、全モデルでブレゲ・シール認定を目指します」

 

 ブレゲにとって250周年は大きな節目だが、あくまで通過点。さらなる高品質を実現する新たな挑戦は、始まっている。

 

 

クラシック 7235

既存では日付表示だった6時位置のインダイヤルをNo.5と同じスモールセコンドに改め、やや右に移してアレンジ。オフセットローターによる薄型自動 巻きを搭載し、ケース厚は9.9mmに抑えられ、ドレッシーな印象に。世界限定250本。自動巻き、18Kブレゲゴールドケース、39mm。¥10,945,000 Breguet

 

 

 

『THE RAKE 日本版』Issue67より抜粋