FIFTY FATHOMS 70th ANNIVERSARY ACT 3
【ブランパンのフィフティ ファゾムス】オリジナルを忠実に再現!伝説への回帰
December 2023
1953年に誕生したブランパンの「フィフティ ファゾムス」は、ダイバーズウォッチの始祖。その誕生70周年を記念し、“MIL-SPEC”が現代的なマテリアルで復活を果たした。
text norio takagi
フィフティ ファゾムス 70周年記念「Act 3」
ブロンズゴールドのケースは、緑青が発生しないため、暖かみのある色を長く楽しむことができる。針とインデックスに施した蓄光塗料は、ケースの色調とマッチしてヴィンテージな印象を高める。ストラップ素材は、海洋プラスチック由来で地球環境に優しい。世界限定555本。自動巻き、9Kブロンズゴールドケース、41.3mm。
防水性と視認性に優れ、潜水時間が計れるロック機構付きの回転ベゼルを備える── 今あるダイバーズウォッチのこうしたスタイルは、1953年にブランパンから登場した「フィフティ ファゾムス」によって確立されたものだ。
その開発を主導したのは、当時のCEOジャン=ジャック・フィスター。ダイビングが趣味の彼はある日、潜水時間を把握できなくなり、遭難しかけた。これをきっかけに、海中で時間が正しく読める時計を作ろうと決意したという。開発には、フランス潜水戦闘部隊のロベール・“ボブ”・マルビエ大尉も参画。プロトタイプを付けて実際に潜水し、テストを繰り返した。
かくして誕生したフィフティ ファゾムスは、フランスのみならず、ドイツやアメリカ、ノルウェーの海軍が採用してきた。ブランパンは各国の要望に応え、いくつもの仕様が異なるフィフティ ファゾムスを生み出した。1957年には、アメリカ海軍向けに水が浸入すると色が変わる2トーンの防水性表示ディスクを6時位置に備えた「フィフティ ファゾムス MIL-SPEC」が誕生した(下写真)。
アメリカ海軍が実際に使用したオリジナルの「フィフティ ファゾムス MIL-SPEC」。
今年9月に発表されたフィフティ ファゾムス70周年記念「Act 3」は限定モデルの第3弾であり、アメリカ海軍向けだったMIL-SPECを再解釈し、オマージュを捧げた最新作である。防水性表示や活字体のロゴ、ダイヤルや風防、ケース、ベゼルのデザインなどを忠実に再現している。その一方で、現代的なマテリアルを採用して仕立て直し、再解釈したのだ。
ボックス型の風防はサファイアクリスタル製、逆回転防止ベゼルのインサートはセラミック製である。そして重厚な黄金色を呈するケースは、特許を取得した新素材9Kブロンズゴールド製。その名の通り、素材の重量比で24分の9の純金を含む合金であり、50%がブロンズ、ほかシルバー、パラジウム、ガリウムが含まれている。純金が酸化を抑制し、一般的なブロンズのように緑青が発生しないという。
またオリジナルのMIL-SPECは、軟鉄製インナーケースによる非磁性モデルであった。この耐磁性の伝統も、磁気帯びしないシリコン製ヒゲゼンマイと独自の合金の採用によって現代に継承している。しかも、ブランパンのムーブメントとしては初の耐磁性1000ガウス(ミルガウス)で。
ブランパンの歴史に輝くMIL-SPECの姿と性能を現代のマテリアルで受け継ぎ、フィフティ ファゾムス70周年を寿ぐ。
ボックス型風防は突き出すように膨らんでいるが、ダイヤモンドに継ぐ硬さを持つサファイアクリスタル製ゆえ傷付く恐れはほぼない。
自社製自動巻きCal.1154.P2は、約100時間ものロングパワーリザーブを誇る。
ケースはライン仕上げを主体とし、わずかに入れたポリッシュ仕上げの輝きで、豊かな表情を創出した。