DUCATI MULTISTRADA V4

乗る人の個性を輝かせる、ラグジュアリー・バイク

May 2023

text kentaro matsuo
photography rowland kirishima, takeomi matsuura
model reina

一路、熱海の高級リゾートへ そんなドゥカティのムルティストラーダV4を相棒に、東京近郊へラグジュアリーな旅へ出かけようというのが今回のテーマである。ご登場いただいたのは、フォトグラファーの桐島ローランド氏だ。桐島氏は、オートバイ・ライダーとしても知られ、モンゴルラリーやパリ・ダカール・ラリーへの参戦経験もある。また2003年に発売された初代ムルティストラーダのオーナーでもあった。その魅力を知り尽くした人物なのだ。

「当時のドゥカティは996や998などロードレーサーのイメージが強く、高速でゆったりとしたツーリングを楽しみたい私にとっては縁が遠かったのです。愛車としてはBMW R100GSも検討しましたが、私には少し重くて本格的すぎました。そんな時、ムルティストラーダの発売を知ったのです。都会的でお洒落なデザインに惹かれて、すぐに予約をしました。当時こういったスタイルのバイクはなく、まさに“ゲームチェンジャー”のような存在でしたね」

自動車専用道路にてタンデム・ツーリングを楽しむ。大型の上下可動式ウインドスクリーンを備えているため、高速でもライダーへの負担は最小限に抑えられている。ゆったりとしたライディング・ポジションと相まって、ハイスピード走行は快適そのものである。

 最新のムルティストラーダV4に跨った桐島氏は、葉山の自宅から一路、熱海を目指した。当日の天気は快晴・温暖で、ツーリングには最高の空模様である。きらきらと輝く相模湾の海をバックに、バイクは矢のように突き進む。かつてのオーナーの目に最新のムルティストラーダはどう映ったのだろうか?

「初代とは全く違うデザインですが、やはりカッコいいと思います。フロントのあたりは、特にいいですね。驚いたのは“足つき性”が大幅に改善されていたこと。ローシートを選べば、誰でも跨ることができるのでは? それから新しいV4エンジンがよかった。以前のV2エンジンは細かい振動があり、それも味でしたが、ツーリングだと少々疲れました。ところが今回のV4は回り方がシルキーで、高速道路では絶対的なアドバンテージを感じました。サスペンションもよくできていて、道路の繋ぎ目での突き上げ感がマイルドです。シートはフラットでタンデムも問題なし。同乗してくれたモデルのREINAさんも、『座り心地がよかった』と言ってくれました。またクラッチが軽く、トルクがあるので街乗りもイージー。スロットルの開け閉めでチョンチョンと扱える。全体的にトンガリすぎていないところがいいですね」

 ムルティストラーダV4の魅力のひとつに、最新のハイテク装備があげられる。3Dスキャンを駆使したアバターシステムの運用など、先端テクノロジーにも造詣が深い桐島氏は、それらをどう使いこなしたのだろうか?

「ライダーにとって、ナビゲーション・システムはとても重要です。正しい道順を知ることは、安全性にも繋がるからです。その点、ムルティストラーダのディスプレイは明るく大きくて、見やすい。スマートフォンとリンクさせて、画面にマップを映し出せる機能は有り難いですね。またスマホをタンクに取り付けられたカバーに収納できるところもいい。携帯をどこに収納するかは、バイク乗りがいつも悩むところなのです。これなら雨が降っても濡れないし、充電することもできます。それからアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)もクルマと同じように使えます。実はACCがついているバイクに乗るのは初めてだったのですが、前のクルマがスピードを落とすと、ちゃんと減速してくれました。このあたりのシステムは、100点満点ではないでしょうか? このバイクは高価なだけあって、すべてのクオリティが高いといえます」

左:ドゥカティ・コネクト・システムを活用し、スマホとバイクを接続して、大型ディスプレイに画面を映し、ジョイスティック経由でさまざまな機能を操作することが可能。先進的なレーダーシステムを備え、アダプティブ・クルーズ・コントロールやブラインド・スポット検知(ミラーに警告ランプ点灯)も。右:タンク上にはUSBコネクタを設けたスマホの格納ケースを装備している。これで雨でも安心だ。

嘴のようなフロント、19インチホイールなどアグレッシブなディテールを持つが、都会的にまとまっているのは流石イタリア車だ。

 本日の目的地は高級レストランで知られる「ひらまつ」が展開するラグジュアリーホテルである。名家の別荘として建てられた数寄屋造りの建築をリノベーションし、和洋折衷の空間へと生まれ変わらせた。暗灰色の瓦屋根と板塀に、ムルティストラーダV4のモダンなデザインがよく似合う。

「もし私がもう一度ムルティストラーダのオーナーになったら、やはりツーリングをメインに使うでしょう。都内からさほど遠くない熱海に、こんな素敵な宿があるのは知らなかった。実は私は、コテコテの和風旅館は得意ではないのです。ここは全体に和風だけれど、客室にはベッドがあるし、モダンなテイストも加えられている。オートバイでこんな宿を訪ねて、部屋で湯船に浸かりながら、海を見ることができたら最高でしょうね」

 ラグジュアリー・ホテルのエントランスに、ムルティストラーダV4のようなバイクで乗り付けたら、周囲から羨望の眼差しを投げかけられるだろう。ムルティストラーダは、比類なきライディングを楽しめるバイクであると同時に、乗る人の趣味のよさとスポーティネスをアピールする、リュクスなアイテムでもあるのだ。ムルティストラーダV4は、オーナーの個性をひと際アクティブに輝かせてくれる。それは人生における、よきスパイスになるに違いない。

ホテルのメインダイニングはフレンチ。相模灘の新鮮な魚介をはじめ、全国から取り寄せた厳選素材を使った料理に舌鼓を打つ。

相模湾を一望、風光明媚な熱海の高台に位置するラグジュアリー・リゾート。名家の別荘だった数寄屋造りの建物を改装し、和洋折衷の空間に。全室オーシャンビューの客室には心地よいベッドと半露天風呂が設えられている。食事は本格的なフレンチで、ひらまつ本店やパリ店で研鑽を積んだシェフが担当。地元の魚介と銘醸ワインを揃えている。

THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 熱海静岡県熱海市熱海1993-237
TEL.0557-52-3301
www.hiramatsuhotels.com/atami/

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