DISCOVER NORTHERN TERRITORY

オーストラリア最大の国立公園「カカドゥ」の大自然に触れる

August 2023

text yuko fujita 

 

 

 

 

 ティウィ諸島の「ティウィ・アイランド・リトリート」でのワンダフルな体験を終え、再び軽飛行機でノーザンテリトリーの州都ダーウィンに戻った。そこからクルマでユネスコの世界複合遺産(自然遺産と文化遺産)に指定されているオーストラリア最大の国立公園「カカドゥ国立公園」へと向かった。

 

 ダーウィン市内を抜けてスチュアート・ハイウェイからアーネム・ハイウェイに入り、デュクビンジ国立公園やメアリー・リヴァー国立公園の脇を走りながらカカドゥ国立公園へと向かう約4時間のあいだ、携帯電話の電波も届かず家屋ひとつないエリアが延々と続く。

 

 何せ、ノーザンテリトリーの面積は142万㎢(日本の国土面積の約3.8倍)もありながら、人口は僅か約25万人。カカドゥ国立公園の面積だけでも四国四県を上回るほどである。

 

 ノーザンテリトリーの“大”自然とはこのことかと、身をもって実感させられた。その大自然をどっぷり味わうことが、これから始まるカカドゥ観光の目的だ。

 

 道すがらワラビーやディンゴの姿を目撃すること十数回、イエローウォータービラボンのほとりにある宿「ク―インダ・ロッジ・カカドゥ」に到着した。プール、レストラン、バー、ガソリンスタンド(周囲に何もないのでこれ重要!)があり、ただただ大自然に囲まれたカカドゥの中で、ヴィレッジスタイルのここはまるで旅人にとってのオアシスである。

 

 ロッジ棟も用意されているものの、ここでぜひ宿泊してほしいのは、今年5月にオープンしたばかりのラグジュアリーテント「イエロー・ウォーター・ヴィラ」だ。

 

 

 

 

 土地への影響を最小限に抑えるべく高床式に建てられたテントにはエアコンが完備され、キングサイズベッド、バスルーム、ダイニング、キッチン、デイベッド付きのラウンジスペースが備わっている。テラスに出ると、プライベートバスタブのほかバーベキュー設備まであるではないか。

 

 

大自然の中でプライベートバスタブに入りながら読書なんて、最高の贅沢!

 

 

テント内のアートや工芸品の装飾は地元クーインダのアボリジナルアーティストや、ジャビルーのマラウッディ・アート・ギャラリーから取り寄せたものだ。ハンドメイドベッドのこの雰囲気、かなり寛げる!

 

 

夕飯前まで時間があったので、ホテルの周辺を徒歩で散策すると、5分も歩かないうちに野生の馬に遭遇。人間の姿を見ても、まったく逃げるそぶりがない。なんてほのぼのとしているのだろう! このあたりではディンゴやワラビーに遭遇することもよくあるという。

 

 

 

 

 さて、ディナータイムだ。

 

「クーインダ・ロッジ・カカドゥ」のレストランでは、可能な限り地元で採れた食材を使用し、伝統的な先住民の味を現代的な技術で表現した料理を楽しめる。巨大魚バラマンディー、クロコダイル、カンガルー、バッファローと、普段なかなか味わえない食材が揃っているので、ぜひともそれらを味わいたいところだ。

 

 

左上から時計回りに、バッファロー、クロコダイル、バラマンディ―、カンガルー。

 

 

 

 ティウィ諸島で食してからすっかりバラマンディーのファンに。脂質が少なくしっかりした肉質のカンガルーのステーキ、鶏肉のように柔らかなクロコダイルの唐揚げをツマミに、ついついビールが進む。日本ではなかなか食べる機会のないものばかりなので、旅のいい思い出になった。

 

 カカドゥに到着した翌朝は、日の出直前の6;45からのイエローウォータークルーズに参加した。宿泊している「クーインダ・ロッジ・カカドゥ」はイエローウォータービラボンのほとりにあり、ツアーバスはロッジから出発するので朝早くとも心配無用!

 

 

ペーパーバーク、パンダナス、フレッシュウォーターマングローブが生い茂るイエローウォーターには多種多様の動植物が生息している。早朝クルーズでは、豊かな生態系が生き生きと動き出す瞬間を体感できる。

 

 

 

 それにしても、早朝のビラボンの、なんと空気の清々しいことか。水面は実に穏やかで、ボートのエンジンを止めると静寂が訪れ、聞こえてくるのは、さまざまな鳥のさえずりのみ。ここは楽園なのではないかとさえ思えてくる。

 

 

日の出とともに出発!

 

日の出からのひとときは、空の色が絶え間なく変化し、シャッターを切るごとにさまざまな光の表情を楽しめる。

 

 

サウスアリゲーター川水系のイエローウォーターには、クロコダイルがたくさん生息している。ティウィ諸島でもたくさんのクロコダイルを間近で見てきたので、ここではそこかしこに潜んでいるクロコダイルを発見してもさして驚かなくなったが、冷静に考えると、これらはすべて野生のクロコダイルで、中にはここで100年近く生息しているものもいるわけだ。もしや10メートル近い巨体も生息しているのではと想像を張り巡らせると、ついクロコダイル探しに夢中になってしまう。周囲を見回しながらふと、神からの贈りものなのではと思えるほど景観に惚れ惚れする。©kakadu Tourrism danandmoore

 

 

ここには60種以上の野鳥も生息している。©kakadu Tourrism danandmoore

 

 

 

 巨大クロコダイルには遭遇しなかったが、日本では見かけることのないたくさんの野鳥を見ることができ、何よりビラボンが織りなす自然の美しさに圧倒された。都会生活を送っている自分にとっては、イエローウォーターでのクルーズは、果てしなく贅沢な時間だった。ちなみに水が引く乾期には、バッファロー、ワラビー、野生の馬なども見られるという。それもまた見てみたい。

 

 カカドゥ国立公園ではアボリジナルのロックアートにも触れられる。

 

 先住民のアボリジナルは6万年以上も前からこの地で生活を営んできた。カカドゥで最も神聖な場所とされるノーランジーロックにはアボリジナルの先祖が残したロックアートが今もたくさん残っており、アボリジナルの神話的な世界が描かれている。

 

 

アボリジナルの子孫であるジョンさんのガイドのもと、アロボリジナルのロックアートを学んできた。

 

 

1万5000年前のものといわれているロックアート。鉄分を含んだ石を砕いたものとワラビーの血を混ぜたもので描かれているという。隣に描かれているのは大蛇。彼らは文字を使わないので、ロックアートを通して生活の知恵、必要な情報を代々子孫に残してきたのだ。

 

 

さまざまなロックアートを眺めて山を登っていくと、こんな素晴らしい景観が待っていた。

 

 

 

 そして、ラスト。

 

 カカドゥ観光のハイライトは、カカドゥのダイナミックで息を呑む美しさの景観を、上空から眺めることができる、カカドゥエアでの遊覧飛行だ。

 

 

というわけで、女性パイロットのマッケンジーさんとともに、遊覧飛行。操縦しながら、ガイド役もこなしてくれた。

 

 

ワイルドな景色が眼下に広がる。これほどの大自然には、確かに地上からはなかなか足を踏み入れられない。遊覧飛行だけでもひとつのアトラクションになる。窓の外は常に息を呑む美しい景色。ただただ圧倒される。

 

 

見渡す限り原生林の中にカカドゥの有名な滝、ジムジムフォールズが視界に入ってきたときは、感動! 滝の高さはおよそ150m。水がもう少し引くと、4WDで近くまで入っていけるとのことだが、乾期は水が干上がってしまうこともあるため水量が多いこの時期の遊覧飛行がお勧めだ。

 

 

遊覧飛行のもうひとつの目玉であるツインフォールズ。大自然と対峙し、この美しい景色をこうやって眺められるのは、ある意味究極の贅沢で真のラグジュアリーであると実感させられる。超一流ホテルでの素晴らしい滞在、ファインダイニングを楽しむ旅だけがラグジュアリーなではなくの、大自然との対峙はそれらでは決して味わえないインパクトがある。ツインフォールズに身を置いたら一体どんな気持ちになれるんだろう?なんて思いが、ふと頭の中をよぎった。

 

 

サンセットフライトもある。これまた神々しい景観を目の当たりにできそうだ。

 

 

 あっという間の60分間だった。これほどの大自然の中の遊覧飛行は、そうそう体験できるものではない。カカドゥ国立公園を訪れた際は、是非体験していただきたい!

 

 

 

 

 ラグジュアリーな旅は非日常といいつつ、実は日常生活の延長にあるものだが、都会で生活している人間にとって大自然への旅は本当に経験したことのない非日常だ。自分の内側にある凝り固まっている何かがスッとほぐれ、旅を通して新しい自分に生まれ変わったような気にさえさせてくれる、そんな不思議な力を秘めている。ダーウィン、ティウィ諸島、そしてカカドゥ国立公園を巡るノーザンテリトリーの旅は、まさにそうだった。大自然の偉大さに圧倒され、見るものすべてが衝撃的だった。

 

 日本人旅行客にとって、ノーザンテリトリーはオーストラリアの観光地としては現時点では決してメジャーではないけれど、これまでたくさん旅の経験を積んできた人にも、ここでの旅から受けるショックは計り知れないはずだ。新しい旅のデスティネーションとして、ぜひおすすめしたい次第である。

 

 

ノーザンテリトリーでの休暇 (northernterritory.com)

協力:ノーザンテリトリー政府観光局