DISCIVER NORTHERN TERRITORY
大自然が広がるノーザンテリトリーは旅の新たなデスティネーション
June 2023
text yuko fujita
遊覧飛行して上空から眺めた神聖なカカドゥ国立公園。
ワイルドな旅になる予感しかなかった。
オーストラリア北部の準州ノーザンテリトリーは142万㎢もの面積(日本の国土面積の約3.8倍)を誇りながら、人口は僅か約25万人。州都のダーウィンでさえ人口は僅か14万人ほどだから、広大な土地にまったく手つかずの大自然がどこまでも広がっているのが容易に想像できる。
ノーザンテリトリーで最も知られているのは巨大な一枚岩のウルル(旧名:エアーズロック)だ。州都ダーウィン、その北80kmにあるティウィ諸島、オーストラリア最大の国立公園カカドゥなどもあげられるが、シドニーやメルボルン、ゴールドコーストと比べると、オーストラリア観光のデスティネーションとして、それらは決してメジャーではない。
が、未開の原野が延々と広がる思いっきりワイルドなノーザンテリトリーは、未知の体験の連続となることは必至だ。期待と不安が交錯した感じと表現すればいいのだろうか。
小中学生のときにテレビで観た映画『クロコダイル・ダンディー』(1986年)は、大自然の中でクロコダイルと格闘する主人公ミックが猛烈にワイルドだった記憶がある。オーストラリアのシーンはノーザンテリトリーで撮影されたことを今回知り、あの大自然が僕を待ち構えているのかと思うと、クロコダイルを筆頭に、野生動物と否が応でも遭遇しまくることは容易に想像できる。
最初に書いたように、広大な面積に対して人口僅か25万人ほどのノーザンテリトリーは、あれから37年が経とうとも、当時の自然が完全に手付かずのまま残っていることは、どう考えても明らかであるからだ。
さて、ノーザンテリトリーを旅するうえで切っても切れないのがアボリジナルのカルチャーだ。アボリジナルとは6万年以上前まで遡ってオーストラリアに定住してきた先住民のことを指す。ここノーザンテリトリーには今なお多くのアボリジナルピープルが暮らしており、人口の約2割がアボリジナルといわれている。今日まで古の文化が脈々と受け継がれ、ツアーや体験をとおして彼らの歴史・文化を学び、先住民特有の芸術作品に触れられるのも旅の醍醐味となる。
州都ダーウィンに始まり、そこから軽飛行機でティウィ諸島(人口の90%がアボリジナルの子孫であるといわれている)に飛び、大自然の楽園「Tiwi Island Retreat(ティウィ・アイランド・リトリート)」に2泊し、ダーウィンに戻った足でクルマを飛ばしカカドゥ国立公園の大自然やアボリジナルの文化に触れてきた。広大なノーザンテリトリーの中でもトップエンドと呼ばれる北のエリアを回ってきた次第である。
それぞれの場所で感じ取ったっぷりの魅力を、3回に分けてご紹介する。
大自然への突入前に州都ダーウィンで学習&肩慣らし
©Tourism NT/Shaana McNaught
ノーザンテリトリー準州の州都であるダーウィンは、今回滞在するティウィ諸島と世界複合遺産として知られるカカドゥ国立公園に移動する際の拠点となるだけでなく、ノーザンテリトリーを知るための素晴らしいノーザンテリトリー博物美術館やこの地に生息するクロコダイルや爬虫類を身近に体験することができる施設「クロコサウルスコーブ」があって、旅をスタートするには最適の街だ。
ただし、日本からの直行便はなし。今回は東京からダーウィンを通過してシドニーに入り、サクッとシドニー観光とグルメを楽しんでからダーウィンへ北上するというルートを選択したのだが、日本からはシンガポール航空が便利と評判だ。他にオーストラリアのケアンズ経由などの選択肢がある。
宿泊したのは、ダーウィンのビーチフロントに位置する唯一の5つ星リゾートホテル「ミンディル・ビーチ・カジノ・リゾート」。トロピカルガーデンに囲まれたのどかなロケーションにあってダウンタウンからも至近なため、市内を観光するのにはうってつけだ。
ミンディル・ビーチ・カジノ・リゾートは南国情緒たっぷりの、巨大なリゾートホテル。
ホテル棟とヴィラからなるリゾート棟があり、今回はリゾート棟のヴィラに宿泊。
宿泊したラグーンヴィラより。
1階のスーペリアルームはバルコニーからラグーンプールに入れる。午後になるとプールに浸りながらシャンパーニュやカクテルなどのアルコール類を優雅に楽しんでいるカップルやファミリーの姿も。
ホテル棟のスーペリア スパ ホテル ルーム。こちらの室内は落ち着いた雰囲気がとてもよい。プライベートパティオの眺めも最高。
スパもファイブスターホテルにステイする楽しみのひとつになる。ここで使用されているオーストラリアのオーガニックライフスタイルブランド「iKOU(イコウ)」の製品は、お土産としても喜ばれそうだ。
インフィニティプールから見るダーウィンの夕陽は最高の旅の想い出に。奥にはビーチが広がる。©Tourism NT/Nick Pincott
ホテルの目の前に広がる砂浜のビーチでのサンセットは絶対に見てほしい。さらに陽が沈んでいくと、見よ、この美しさ!
さて、熱帯気候に属し、平均最高気温が年間を通して30度を超えるダーウィンでは、4月の最終木曜から10月の最終木曜まで「ミンディル・ビーチ・サンセット・マーケット(Mindil Beach Sunset Market)」が開催されている。1987年から続いているとのことで、今やすっかりダーウィンの風物詩となっているという。今回はタイミングが早くて体験ができなかったが、今の季節はぜひこちらも楽しんでほしい。
ミンディル・ビーチ・サンセット・マーケットは開催期間中は毎週木曜と日曜の16時~21時まで開催されている。地元の料理や世界各国の料理をはじめ、さまざまなアート、工芸品まで、200を超えるユニークな屋台が集まっている。ノーザンテリトリーのミュージシャン、クリエイティブ&パフォーミングアーティストをサポートし、彼らの作品・才能を披露する場にもなっている。©Tourism NT/Helen Orr
かわいらしい街並みのダウンタウンを散策
ダーウィンはオーストラリアきってのアングラーの聖地であり、ビッグバラマンディやサラトガ、ジュウフィッシュやコーラルトラウト、ゴールデンスナッパーなどの大物がたくさん潜んでいる。街を少し離れるだけですぐに手付かずの大自然が姿を現すが、これからそっちの世界にどっぷり浸かることになるので、ダーウィンでは可能な限り、ノーザンテリトリーではとても貴重な“街”のエンタテインメントを楽しむことにした。
ダーウィンのダウンタウンはこんな感じで非常にのどか。1974年12月25日の早朝にこの町を襲った“サイクロン・トレーシー”によって、市内の建物はほぼ全壊してしまい、その後、現在の街並みが再建された。©Tourism NT
ノーザンテリトリーといえばクロコダイルということで、ダウンタウンの中心部にあるクロコダイルと爬虫類のテーマパーク「クロコサウルス コーブ(CrocosaurusCove)」へ足を運んでみた。
ここの目玉のひとつとなっているアクティビティが、巨大なイリエワニと水中で15分間対面する「Cage of Death(死の檻)」。イリエワニの本能を刺激するような餌やりが行われ、地球上で最強という3トンもの噛みつき力を目の前で見られる。
ノーザンテリトリーの中でも北部の「トップエンド」に生息する、希少なヘビやトカゲなども展示されている。VIPツアーでは、観賞するだけでなくリクエストをすればそれらの爬虫類に実際に触らせてもらえる。またとない貴重な機会なような、触れ合いたくないような……。
VIPツアーではベビークロコダイルを抱くこともできる。このサイズなら、クロコダイルもかわいい? ワニの噛む力は地球上で最強だが、口を開く力は弱く、テープで口を縛ってあるので、これはまったくもって安全!©Tourism NT/Tourism Australia
次に訪れたのは、ノーザンテリトリー博物美術館(MAGNT)。ここではアボリジナルの芸術や文化、第二次世界大戦、1974年にダーウィンを襲った“サイクロン・トレーシー”に至るまで、地元の歴史に触れながらノーザンテリトリーに関するさまざまなことを知ることができる。大自然のさまざまな動物や鳥類、魚の剥製が展示されており、そちらも見応えたっぷりだ。ノーザンテリトリーの旅の最初、あるいは最後に改めて訪れたい場所だ。
1979年に捕獲された際、身長5.1m、最大胴回り2.3m、重さ780kgという記録的な大きさだったクロコダイル「スウィートハート」。胃の中には豚の骨と剛毛、クサガメ2匹、大型バラマンディ1匹の一部が残っていたという。さて、今回の旅行中、これからどれだけの天然のクロコダイルと出会うのだろう……。
ダーウィンの海で遊泳が推奨されていないのは、ボックスジェリーフィッシュ(ハコクラゲ)がいるからだ。刺されると死に至ることもある、非常に危険なクラゲである。
ノーザンテリトリーに生息する動物や哺乳類、鳥類、魚など、さまざまな生き物が展示されている。いかに手つかずの自然が残っているのか、また太古の歴史があるのか理解できて大変興味深い。
アボリジナル アートの重要なコレクションも管理・展示されている。
さて、ダーウィンの初日は深夜到着となったため、2日目の夜がレストランでの初めてのディナーとなった。
選んだのは、ノーザンテリトリーのナショナルエステートに遺産登録されているほど絶好のロケーションで素晴らしい料理を楽しめると評判のダイニング「ピーウィーズ・アット・ザ・ポイント(Pee Wee’s at the Point)」。
早い時間からのディナーならば、これ以上ないロマンチックな雰囲気の景観を楽しめる。
店内も広々としていてヒップな雰囲気がよし!©Pee Wee’s at the Point
バラマンディーも気になったけれど、オーストラリアといえば羊ということで、メインディッシュに選んだのは、ラムラックとマカダミアの香草焼き。めっちゃうまし! 赤ワインも進む! ロマンチックな雰囲気で、料理も最高! オーストラリアワインは美味しいし、明日からの秘境にちょっとビビり始めてきてしまった。果たしてこういうおいしい料理と出合えることはできるのだろうか? なんてことを考えながら、大満足でレストランをあとにした。
ホテルは名前のとおり、ディナー後ホテル戻ったらカジノで遊ぶという選択肢も! 写真は朝にパチリ。
さて、初めてのノーザンテリトリーの準備体操はこれでOK!
明日は軽飛行機に乗って、アボリジナルの島であるティウィ諸島へ出発だ!
ティウィ諸島の飛行機の離着陸場所、こんな感じです。