Autumn Special Dinner at Pierre Gagnaire
秋の美食探訪をピエール・ガニェールで。本店で人気のプラトー・ド・フロマージュも初登場
November 2023
三つ星シェフとして世界に名を馳せているフランス料理の巨匠、ピエール・ガニェール氏が手掛ける東京・赤坂のレストラン「ピエール・ガニェール」。創業以来『ミシュランガイド東京』で二つ星を獲得し続けている、言わずと知れた名店だ。今秋、ガニェール氏が来日した折に魅せた、他では決して味わうことのできない独創性に富んだ料理の数々を紹介しよう。
text chiharu honjo
去る10月18日、“厨房のピカソ”の異名をもつ天才シェフのピエール・ガニェール氏がフランスから来日し腕を振るった。今シーズン始まった、秋の味覚を堪能する全7品のスペシャルディナーコース「PIERRE GAGNAIRE TOKYO」を披露するためだ。客のみならずスタッフも胸が高鳴り、店内は熱気に包まれていた。このコースは独自のユニークな構成になっており、メニューはガニェール氏がすべて監修。今年に入ってすでに3回来日しているほど日本の四季の味覚を熟知しているガニェール氏の料理は、想像を上回る味と素材の組み合わせによって生み出される。コースに合わせるワインはソムリエ厳選のペアリングで。まずはルイナールのシャンパーニュで乾杯し、プレートにススキが飾られたウェルカムフードを愉しみながら秋の夜長に美酒で喉を潤した。
最初に運ばれてきたのは、「ライムの香る岩手産泳ぐホタテ貝 アボカドとマスカルポーネ オシェトラ・キャビア」(写真上)。直前まで泳いでいたホタテ貝をマリネし、アボカドやマスカルポーネチーズのまろやかさとキャビアの塩気を融け合わせて味わう何とも贅沢な前菜だ。鮮度の良いホタテが旨いのは無論のこと、他の食材がほどよいバランスで調和し一皿目にして絶品。合わせたワインは、ドメーヌ・シルヴァン・パタイユのブルゴーニュ・アリゴテ 2020。
2皿目は「ラングスティーヌ(手長海老)」。赤ビーツを効かせた色鮮やかなソースを纏ったラングスティーヌのグリルとともに、「プランクトンの香るラングスティーヌのベニエ」と「ラングスティーヌのタルタル」のスモールポーションも別皿で添えられる。いずれもラングスティーヌを使っているが食感が異なるため面白い。ミネラル感をしっかり残した2012年のドメーヌ・ファビアン・コシュ ムルソー ブランといただく。
続いてサーブされたのは「茸のフリカッセとアオリイカ 烏骨鶏のポーチドエッグ 群馬産生ハム」。セップ茸(ポルチーニ)、トランペット・ド・ラ・モール(クロラッパタケ)、プルロット(ひらたけ)などフランスと日本のキノコで仕上げたフリカッセとアオリイカのポワレに、濃厚な烏骨鶏がトロリと絡み大変美味である。ペアリングは1996年のシャトー・ロル・ヴァランタン サンテミリオン・グランクリュの赤ワイン。
さらに、「リ・ド・ヴォーのポワレ フルム・ダンベールを効かせたムール貝のクリーム ジャガイモのグラチネと香草パン粉」といった、山海の旬の素材を組み合わせた創造性あふれる料理が次々と現れ、多彩な素材を使うガニェール氏の豊かな発想に目を見張る。2016年のマス・ド・ドマ・ガサック ブランとともに。
魚料理は「赤甘鯛 レモングラスの香る貝のブイヨン 赤茄子 シブレットオイルの香るセロリ」(写真上)。蛤など様々な貝のブイヨンでゆっくりと火入れした赤甘鯛に細切りのセロリをのせ、仕上げにレモングラスと生姜を効かせて柑橘の皮で香りづけしたブイヨンソースを注いでいただく一品。柔らかな肉質で皮まで美味しい甘鯛に、ブイヨンソースを加えることで味に奥行きを持たせている。ハーブのニュアンスが前面に出るようなフランスロワールのバロン ド エル 2019年のソーヴィニヨン・ブランと相性が良い。
そして、いよいよメインディッシュの肉料理「京鴨のロースト カボチャのピューレと芽キャベツ チョコレートの香るビガラードソース」(写真上)が登場。オレンジの甘みにチョコレートの苦みを加えたビガラードソースが、京鴨のジューシーな旨みをより一層引き立てている。皿の上にはカカオパウダーが散らしてあり、テーブルにサーブされた瞬間カカオの香りも愉しめる逸品。ペアリングは、ほのかにカカオを感じるスパイシーなワイン、2015年 M.シャプティエ エルミタージュモニエ ド ラ シズランヌの赤で。
今回注目すべきは、パリ本店と同様に、フランスから取り寄せたチーズをプレートに並べてサービスする特別企画「プラトー・ド・フロマージュ」。フランスで数多くの星付きレストランが称賛するチーズ熟成士として名高いベルナール・アントニー氏が厳選したもので、約10 種類のチーズを目の前で披露してくれる。セレクトしたチーズとともに運ばれてくるのは、サラダ、フロマージュ・ブランのソルベ、、ソーテルヌ(デザートワイン)のジュレ、マンゴーのチャツネ、レーズンパンなどガルニチュールと呼ばれる付け合わせである。チーズの種類やガルニチュールは日によって変わるので一期一会。最高の熟成状態でフランスからやってきた究極のチーズと、ソムリエが選りすぐったワインのマリアージュを堪能できる貴重な機会だ。
デセールは、3皿からなる「ピエール・ガニェール ひらめきのデザート」。“リンゴとアプリコットシードのクリーム ソーテルヌワインのジュレ添え”、“コーヒー風味のマデラソース イチヂクのロッティ”など、様々な食材を掛け合わせた創作スイーツが並ぶ。最後のペアリングは2008年のシャトー・スデュイロー。熟成の効いた深みと甘みのあるソーテルヌでデザートと良く合う。
世界を舞台に活躍する今もなお、度々来日してこだわり抜いた料理を惜しげもなく披露するガニェール氏。他に類をみない研ぎ澄まされた料理を生み出すべく、日々食材と向き合い声なき声を聴くという。真摯に向き合う姿勢で一流を体現する料理に、誰もが感動し虜になるだろう。
<秋のスペシャルディナーコース>
12月23日(土)まで開催
18:00~23:00(20:00 L.O.)月曜・火曜を除く
PIERRE GAGNAIRE TOKYO ¥37,290
オプションメニュー:プラトー・ド・フロマージュ ¥4,351
ワインペアリング ¥18,645~
※税・サービス料込、要予約
ピエール・ガニェール
東京都港区赤坂1-12-33 ANAインターコンチネンタルホテル東京 36F
TEL.03-3505-9505
https://anaintercontinental-tokyo.jp/pierre_gagnaire