A LIFETIME IN STYLE

赤峰幸生が辿り着いた究極のスタイル

January 2022

喜寿を迎えた赤峰幸生氏は、クラシック界では世界におけるカリスマだ。

日本でも20代、30代のファンが急増している。

服を着倒してきて辿り着いた氏のスタイルとは?

 

 

 

photography JUN UDAGAWA

text YUKO FUJITA

 

 

 

 

赤峰幸生 究極のスタイル1

赤峰幸生/Yukio Akamine

1944年、東京都生まれ。90年、自身の会社インコントロを設立。98年、イタリア生産による紳士服ブランド「Y.Akamine」をスタート。2008年、カスタムクロージングのブランド「Akamine Royal Line」を立ち上げる。スーツやシャツのほか、コートやレザーブルゾンやネクタイなど、真のクラシックスタイルを提案している。

 

本物のフランネルは30年着てこそ味が出る

「フランネルは私が最も好きな秋冬の素材で、このスーツは4年前にフォックス ブラザーズのフランネルで仕立てたものです。茶の粗挽きの塩梅が非常に私の好みで、よく見るとグリーンが絶妙に紡績の段階で入っていて、独特の色合いなんです。着込んでいくと毛が抜け落ちてきて、さらに味わいが増していきます。本物の味というのは30年着て初めて出るものだと思っています。お客様にもよく言っているのですが、経年変化を楽しみたければ、早くオーダーされたほうがいいですよ(笑)」

 

粗挽き感の美しい表情に惚れたブラウンフランネル

赤峰氏が着用しているフォックス ブラザーズのブラウンフランネルは、今年から『アーカイブ フォックス』というバンチに加わっている。スーツとシャツはアカミネロイヤルライン、ミラノで購入したネクタイはブランド不明。氏のシャツ襟は常にレギュラーカラーだ。1930年代の襟を手本にし、特に台襟の首への沿い方にこだわっている。シューズはジョン ロブ。スーツとシャツはアカミネロイヤルライン。

 

 

 

 

赤峰幸生 究極のスタイル2

美しいトップグレイは私が最も好きな色

「1940年代のウェインシールのヴィンテージ生地で仕立てたこのスーツには、私のこだわりが詰まっています。私にとってしっかり織られたトップグレイの縞ものは欠かせない存在ですが、この生地は織りの調子が独特で、ただストライプがのっているのでなく、地組織が非常に凝っているんです。そんなさりげないところがクラシックなイメージを前面にもってきてくれるのです。薄いブルーのピンストライプが入っているのですが、グレイに対する絶妙な色のかぶり方も好みです。ボタンもコントラストをつけないようにしています。私にとってのシックとは、こういう色合わせのことなんです。遠目には無地に見えるマイクロストライプシャツでストライプ・オン・ストライプになり、ネクタイも柄ものなので3パターンなのですが、そう思わせないようまとめるのも私の好きなスタイルです」

 

織りの地組織が美しい

トップグレイのヴィンテージ生地スーツ

グレイのスーツ生地はしっかり織られていてウェイトがあることは大前提で、霜降りの表情にこだわる。1940年代に織られたウェインシールのヴィンテージ生地は霜降り感に加えて地組織も非常に複雑で、その美しさに魅了されたという。シャツはアルモの170双ボイル。波打ったときのシワの表情が美しく、シルクのような表情を生むところに惚れている。ブレイシスはアルバート サーストン、タイはリヴェラーノ&リヴェラーノ、靴はジョージ クレバリー。スーツとシャツはアカミネロイヤルライン。

 

 

 

 

赤峰幸生 究極のスタイル3

カントリースーツを

暖かな色味で楽しむ

「英国の基本のスタイルであるチェンジポケット付きのカントリースーツで、ガンクラブチェックのフランネルは、フォックス ブラザーズとアカミネロイヤルラインのダブルネームです。すべて自然の色から拾って構成される英国カントリーの色彩は、私のスタイルにおける秋の大定番です。全体を柔らかな色彩で合わせるのが好みで、自然といつもこのような色の調子になります。シャツはイタリアでチェレステ(空の水色)と呼ばれる薄いブルーを合わせていますが、チーフにもうっすらとブルーのトーンを足したかったので、白の下にブルーを重ねて2枚挿しています。これまであえて人に言ったことはなかったのですが、チーフの2枚重ね使いは昔からしています」

 

英国カントリーをオマージュして着る

ガンクラブチェックスーツ

赤峰氏が愛用している秋冬のスーツ生地は、1にも2にもしっかり織られたヘビーウェイトのフランネルだ。微妙な色の混じった美しさと柔らかなコシを備えた英フォックス ブラザーズのものを愛してやまない。オッドベストはスウェイン アドニー、タイとスーツとシャツはアカミネロイヤルライン、シューズはジョン ロブ。

 

 

 

 

赤峰幸生 究極のスタイル4

コードレーンはドレスのマインドで

「涼しさを色と独特の素材感で表現したコードレーンは、春から夏にかけて最も愛している素材のひとつで、ドレスマインドでタイドアップして着るのが私のスタイルです。ただ、往年のアメリカのコードレーンだと生地が薄いのと緯糸がポリエステルなので、パンツの脇がスリップしてしまうんです。そこで、自身の理想とするコードレーンを作るべく、アカミネロイヤルラインのオリジナルとして尾州にて旧式のシャトル織機で織り上げてもらったのが、今日着ているコットン75%、シルク25%の生地です。目付けがしっかりしていて、パンツのクリースが取れない、素晴らしい生地に仕上がっています。ブラウンのほかにブルーもあって、お客様からも大変ご好評をいただいております」

 

コードレーンスーツは

ヘビーウェイトのシルクコットンで

ドレスアップ

コットン×シルク素材のコードレーンスーツを100%ドレスマインドで装っている。アカミネロイヤルラインのシャツは、氏が辿り着いた最もスタンダードな襟型である羽根が長めのレギュラーカラー。生地はアルモの170双ポプリン。ネクタイはフランコ バッシ、ビスポークシューズは大分にある山村製靴店の山村浩二氏に作ってもらったものだ。スーツとシャツはアカミネロイヤルライン。

 

 

 

 

赤峰幸生 究極のスタイル5

ネイビーブレザーは

スポーティなドレス感で

「ブレザースタイルも大好きで、私はスタンダードな6ボタンや4ボタンよりも8ボタンを好んで着ています。チャールズ皇太子はゴールドの8ボタンのブレザーを愛用していますが、私にとっての定番はもう少しドレッシーなシルバーボタンです。生地に関してはやはりウェイトのしっかりしたものが好みです。こちらはバスケット織りですが、フランネルやサージも欠かせません。ストライプのシャツとネクタイ、ホワイトフランネルのトラウザーズ、スペルガのスニーカーと、ブレザーの装いにはこのようにドレス感の中にも常にスポーティな要素を出してまとめるようにしています。8ボタンのブレザーは、最近お客様からの人気が非常に高く、若い方たちにも興味をもってもらえているのがとても嬉しいです」

 

ネイビーブレザーは

バスケット織りの8ボタンにこだわる

ブレザーは深みのあるネイビーで、ゴージ位置の低い襟のカットがとても品よい。キャンディーストライプのシャツはアルモの170双ポプリン。ストライプのタイはNYで購入したチップ。尾州で織り上げたオリジナルのホワイトフランネルで仕立てたトラウザーズは、ネイビーブレザーに欠かせない。シェイプされたウエストと裾のフレアが美しい、アカミネロイヤルラインのセットインスリーブコートもよく似合う。素材は高番手のギャバジンで無双仕立て。アンソニー・イーデン(ウィンストン・チャーチル内閣で外務大臣を務め、後の英国首相)が着ていたコートから着想を得たので、モデル名は「イーデン」。ブレザー、コート、シャツ、トラウザーズはアカミネロイヤルライン。

 

 

 

 

赤峰幸生 究極のスタイル6

赤峰イズムが詰まった

傑作レザーブルゾン

「1920~30年代、貴族階級の人たちが競技という目的のために着るいわゆるクラススポーツの服を、赤峰的解釈で焼き直したのがアカミネ クラス スポーツというブランドで、これはその羊革ブルゾンになります。Vゾーンの襟のバランスを美しく見せつつ襟を立てても着られるよう、完全オリジナルのテーラード襟をデザインしました。ドレス=テーラードと考えるのではなく、レザーブルゾンもミディアムグレイのウールトラウザーズとシックに合わせられれば、そのスポーツスタイルはドレスマインドだと考えています。シーンや目的によってはリーバイスのコーデュロイパンツを合わせることもありますが、いちばんはウールトラウザーズですね。これはもう何十年と変わらない私のスタイルです」

 

 

赤峰氏はY.アカミネ時代に数多くのレザーブルゾンを手がけてきたが、このブルゾンもまさに氏の経験と引き出しが生んだ、冴えまくりな1着。マックジョージのヴィンテージニットポロは襟の緩やかなロールが美しい。ノープリーツのトラウザーズはリヴェラーノ&リヴェラーノ。スペルガのスニーカーを合わせていても、確かにドレスマインドたっぷりだ。キャメル色のレザーとミディアムグレイのウールトラウザーズの相性は大変よく、赤峰氏の大定番の組み合わせだ。ショート丈のレザーブルゾンの場合、写真のようにボタンをふたつ留めたとき、いちばん下が開く感じで、横は前下がり後ろ上がりにして着るのも赤峰流だ。レザーブルゾンはアカミネ クラス スポーツ。