1 Hotel Seattle: A Sustainable Luxury Prologue to Tokyo
東京へと続く、サステナブル・ラグジュアリーのプロローグ。1 Hotel Seattleが示す、都市と自然の新しい境界線
April 2026
東京・赤坂に誕生した「1 Hotel Tokyo」は、サステナブルとラグジュアリーを両立させた新時代のホテルとして早くも注目を集めている。その世界観をより深く理解するうえでも、ぜひ目を向けたいのが、2025年5月に開業した「1 Hotel Seattle」だ。自然と都市、洗練と再生、その土地の歴史と未来。そのすべてが静かに交差するこのホテルには、1 Hotelというブランドがこれから東京でどう輝いていくのかを読み解くためのヒントが、随所に散りばめられている。
text yukina tokida
2026年3月東京・赤坂で、ついにその幕を開けた「1 Hotel Tokyo」。大都市の喧騒の中に突如現れた、“天空のサンクチュアリ”に驚かされた方も多いだろう。だが、このブランドがこれからさらに力強く描こうとしている物語には、鮮やかなプロローグが存在する。東京のオープンに先駆けることわずか10ヶ月。2025年5月、アメリカ北西部の中心都市シアトルに誕生した「1 Hotel Seattle」だ。
ブランドにとってアジア初進出の東京、そしてテックと自然が共存するシアトル。このふたつの拠点を結ぶのは、単なるエコではない。再生素材をアートに昇華させ、五感を研ぎ澄ます空間をつくることで、その場に身を置く私たちに、自らも地球の一部であることを思い出させてくれる。
場所はシアトルのサウス・レイク・ユニオン。Amazon本社をはじめとするテック関連の大企業がひしめくこのエリアに、1 Hotel Seattleは位置する。ダウンタウンに程近い一方で、周辺には人気のスーパーマーケット「ホールフーズ」や注目のバーが点在し、シアトルのシンボルタワー「スペースニードル」にもアクセスしやすい。それでいて、街の空気は驚くほど落ち着いている。
「1 Hotel」の真髄は、その土地の魂をデザインに宿す「A Sense of Place」にある。東京が日本の職人技を活かした「和の静寂」であるならば、シアトルは「豊かな自然のエネルギーと静けさ」といえるだろう。
ロビーに一歩足を踏み入れれば、地元アーティストによる流木のオブジェや苔に覆われた壁が目に飛び込んでくる。なかでも象徴的なのが、152枚ものパネルで構成された巨大な「モス・ミュール」だ。シアトルの象徴であるマウント・レーニアを描いたこの壁画には、本物の苔や樹皮、キノコ、貝殻といった自然の断片が再利用されており、都市のなかにいながら森の息吹を感じさせる、生きたアートとなっている。
その手前に飾られているホテルロゴの「1」を象った流木のオブジェは、ピュージェット湾周辺のプライベートビーチから集められた575もの流木を用いて制作されたもの。土地に流れ着いた自然の痕跡を新たな姿へと生まれ変わらせることで、このホテルが掲げる“再生の美学”を表現している。到着した瞬間から、ここが単なるデザインホテルではなく、この土地の時間や記憶を凝縮した空間であることを感じさせるのだ。
そして、その壁画の手前にある階段にも注目してほしい。手に吸い付くような温もり溢れるレザーの手すりには、熟練の職人によって、6,500針以上ものステッチが一つひとつ手作業で施されている。効率とスピードが優先される現代において、あえてこれほどまでの時間を費やすこと。それは、ゲストが何気なく触れる場所にこそ、人間の手仕事による温もり(Human Touch)を宿したいという、このホテルの静かな決意の表れだ。
客室にも、数えきれないほどの“このホテルならでは”が詰まっている。例えば壁には、VOC(有害な揮発性有機化合物)ゼロの自然由来の原料からつくられた粘土をベースにしたプラスター(漆喰状の仕上げ材)が使われている。浴室や廊下まわりには、納屋や工場、住宅などから再生されたオーク材のパネルを採用。素材の選定そのものがこのホテルの思想を静かに語っているのだ。
部屋や館内に配された植栽の数にも驚かされる。その数はホテル全体で1,142株にのぼるといい、都市のホテルでありながら、まるで自然の延長線上に身を置いているような安らぎを覚える。見た目の心地よさや美しさだけではなく、空気の質や触感にまで配慮が及んでいる点こそ、1 Hotelらしい。
なかでもおすすめの客室は、リビングルームとベッドルームを擁した「Alder House」。広々としたダイニングテーブルに、バーコーナーやドレッシングスペース、ゆったりとしたバスルームも備えており、自宅のようにくつろいで過ごすことができるだろう。窓の外にはシアトルのシンボルタワーであるスペースニードルを望むこともでき、「ああ、シアトルにやってきたんだ」と思わずしみじみと実感してしまうはず。
客室にペットボトルを置かないために、洗面台には飲用水専用の水栓も設けられており、浄水された水を好きなだけ飲むことができる。こうした細部にも、このホテルならではの思想が宿っている。
ダイニングとバーでも、1 Hotelらしい哲学が息づいている。シグネチャーレストラン「LA LOBA」では、ワシントン州の果物や、Taylor Shellfish Farmsの新鮮な牡蠣など、ハイパーローカルな食材を積極的に使用しながら、バルセロナや地中海、日本の食文化のエッセンスを重ね合わせた料理を提供している。同ダイニングを率いるのは、ラスベガスでタパスの新しい解釈を打ち出してきたシェフ、オスカー・アマドール・エド。土地の恵みを生かしつつ、どこか旅情を感じさせる一皿へと昇華している。
またバー「Drift」では、新たにバーマネジャーに就任したタイラー・ジョーンズ氏によると、この4月からメニューを大幅に刷新し、セイボリーカクテルを充実させるという。例えば「Soup&Salad」というカクテルは、温かいスープのようなカクテルと、サラダのような冷たいカクテルのコンビネーションになるとか。現在鋭意磨き上げている最中だというから、続報を待ちたい。
バー「Drift」にはテラス席もあり、シアトルの空気を感じながら一杯を楽しめるのも魅力だ。
東京と同じように、ゲストが不要な服を置いていくことで地元チャリティへ寄付される「1 Less Thing」プログラムはここでも健在。単なる宿泊施設ではなく、地域社会を豊かにするプラットフォームとしての役割を果たしているのだ。
シアトルで体感した「自然への敬意」というプロローグを目の当たりにすると、東京の物語はより深く響く気がする。これまでのホテルとは全く異なる1 Hotelのアプローチに、そしてこれからの進化からますます目が離せない。
1 Hotel Seattle
2125 Terry Ave, Seattle, WA 98121, United States
TEL. +1-206-264-8111

















