Saturday, May 13th, 2023
“腕時計の宇宙船”をコンセプトに、「HYT」が再誕
HYTは、2012年に時計産業の中心地であるスイス・ヌーシャテルで設立された時計ブランドだ。時間を液体で表現するというアイデアを形にするため、20年以上にわたり時計・ラグジュアリー業界の要職を歴任したヴィンセント・ペリアード氏ほか、医療、化学、物理学、宇宙工学などの6名の専門家が結集して立ち上げられた。彼らは、伝統の時計技術とNASAが開発した宇宙工学の部品などを組み合わせ、わずか0.4mmのプレキシガラス製のキャピラリー(管)の中で、ふたつの異なる液体により時間を表すことに世界で初めて成功した。
それから10年が経ち、すべてが新しくなったHYTが⽇本市場に再上陸した。流体式ムーブメントは、インスリン注射器などを製造する医療機器メーカー「PRECIFLEX(プレシフレックス)」がその技術力を生かし、液体による時間表示を提供。6つの世界特許技術により、温度と気圧の影響を克服している。例えば、液体は温度によって膨張率が変わるが、それを補正するための機構を備え、-40℃〜60℃の範囲内で精度を保つ。このシステムの気密性は100m防⽔のダイバーズウォッチの1万倍もあるという。
機械式ムーブメントは、今世紀最高の時計師のひとりとされるエリック・クードレイ⽒とタッグを組み、「腕時計の宇宙船」というコンセプトのもと、流体機械式コンプリケーション・コレクションの開発に取り組んだ。そして⽣まれたのが、2022年のWatches & Wondersで発表され、GPHGにノミネートされたムーンフェイズ・ウォッチ “ムーンランナー・コレクション”や、2023 年に公開されたブランド初となるトゥールビヨンなどである。
宇宙をテーマにした「ハストロイド・コレクション」、「ムーンランナー・コレクション」、「コニカル・トゥールビヨン」の計3コレクションから展開されており、すべてのモデルが世界限定品となっている。マニア垂涎のブランドの再来に、時計業界は沸き立っているのだ。
text the rake編集部