北川美雪の「良い服」は人生を変える
Good Clothing Can Change Your Life

VESTAのスーツコンサルタント、北川美雪氏が、「パワーオブスーツ」をキーワードに、スーツを単なる服ではなく「人生を変える武器」として捉え、その魅力をお伝えしていく。

【第11回】装いが人生になり、人生が表現になるとき

Friday, February 20th, 2026

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写真家 レスリー・キー × 池田将真

Instagram: @shomaleslie, @lesliekeesuper, @shoma_0223

 

 

トロカデロ広場、エッフェル塔を正面に望む場所で。「これは冬にいちばんよく着ている、僕たちにとって一番心地いいペアルックなんです」と、レスリーと将真は笑顔で声を揃えます。ファレル・ウィリアムズがクリエイティブ・ディレクターに就任して以降のルイ・ヴィトンのコレクションで、2024年12月にパリでレスリーが購入した一着は、自然と定番になりました。付き合い始めた頃、将真はほとんど毎日のように袖を通していたそうです。やがてそのジャケットは店頭から姿を消してしまいました。それでも「どうしても同じものを二人で着たい」と探し続け、約5か月にわたりファッション業界中に問い合わせを重ねたそう。インスタグラムを見せながら、“LOVERS”という大きなプリントとエッフェル塔のロゴが二人にとってどれほど特別な意味を持つかを伝え続けた結果、奇跡のように、ルイ・ヴィトン・グループの重要人物の特別なサポートにより、将真のために同じジャケットを購入することが叶ったのだとか。 インナーのフーディーもルイ・ヴィトン。2026年の干支である「馬」を祝してデザインされたホースプリントが施されており、将真が即決し購入、いま最も愛用しているアイテムのひとつです。ジーンズはリーバイス、レスリーのサングラスはトム・フォード。エッフェル塔を背にしたこのルックは、単なるルイ・ヴィトンの装いではありません。パリという愛する街で過ごした、二人にとって初めての海外旅行を祝うロマンティックな時間——その記憶を織り込んだ“服の記録”なのです。

 

 

 

装いが人生になり、人生が表現になるとき

 

 写真家のレスリー・キーにとって、撮影とは単なる仕事ではありません。人を知るための、最も誠実な行為だと。

 

 ポートフォリオを眺めるより、実際に言葉を交わし、同じ時間を過ごすことで、その人の輪郭は自然と立ち上がってきます。被写体のキャラクターや内面は、レンズを向ける前からすでに滲み出ている━━そう語る彼の姿勢は、長年第一線で活躍してきた写真家としての矜持でもあるのでしょう。

 

 

 

二人の旅を通じ心がひとつになり、そして愛のある風景になる

 

 その哲学は、今レスリーが運命の出逢いパートナーの池田将真と共に歩む日常にも、驚くほど自然に重なり、愛が溢れる日常の風景となっています。二人は旅をし、ファッション、アート、音楽、そして何より食と文化、沢山の出逢いを通して、自分たちの感性を更新し続けてきました。

 

 

アレクサンドル三世橋のたもとで。この日の主役は、ロンドンを拠点に活動し、日本で先に評価された伝説的デザイナー、クリストファー・ネメス。彼の急逝後、そのアーカイブの一部はルイ・ヴィトンに受け継がれ、2015年前後にはキム・ジョーンズのディレクションのもと再解釈され、「クリストファー・ネメスへのトリビュート」として世界に再提示されました。ネメスのグラフィックは決して説明的ではない。顔ではなく、臓器の断片や血管、あるいはロープにも見える抽象的なフォルム。見る者の想像力に委ねられたその曖昧さこそが、ブランドの本質を形づくっています。 この日、二人が纏ったジャケット、シャツ、タイはいずれもクリストファー・ネメス。将真は、レスリーが自分の膝の上に心地よく身を委ねるというロマンティックなシチュエーションを演出し、まるでパリの街で恋に落ちる恋人たちを描いた古典絵画のような一瞬を描き出しています。襟元のピンもネメスの象徴的モチーフで、もともとシャツと一体の存在として構想されたもの。ナポレオン様式を想起させるクラシカルな上半身に、ボトムでさりげなくストリートの要素を加えたスタイリングは、将真の直感によるもので、そこには静かな愛情が滲んでいます。 パンツはヨウジヤマモト、足元はナイキ。ネメスの強いアート性に、ヨウジの構築的なラインとナイキの現代的な軽やかさが重なり合い、詩情とモダニティが共存するルックが完成しました。

 

 

 

パリやミラノのファッションウィーク、異国の街角。

 

 二人でお洒落な格好を並んで歩くだけで、場の空気がわずかに変わることがあります。それは、装いが目立つからではなく。二人の間にある“愛と夢”の関係性そのものが、ひとつの輝かしい“像”として立ち上がっているからなのです。

 

 

 

ペアルックのパワー、感性と理性の対話

 

 二人の共同インスタグラムを見ると、スタイリッシュな男性カップルの写真と映像が世界に向けて発信されています。一見すると、彼らの装いは“ペアルック”と呼ばれるかもしれません。ですが、同じ服を纏っているにもかかわらず、そこに生まれるのは均質さではありません。鏡に映したような対称性の中で、感性と理性が互いを映し合い、補完し合っているように見えます。

 

 愛情と好奇心の塊のように前へ進むレスリー。その爆発的な創造性を、繊細な所作や姿勢、美意識によって静かに支えているのが最愛のパートナー将真です。

 

 二人は同じ服を着ることで、個性を消すのではなく、そのペアルックのパワーで、むしろ互いの違いと魅力をより鮮明に浮かび上がらせています。

 

 

パリの日常の流れの中を歩く二人、その中心にあるのが、アイウェアの存在です。二人揃いのサングラスは、ヨウジヤマモト本人から贈られたもの。レンズ越しに視線を交わしながら、スタイルだけでなく、愛情やパートナーシップそのものを深めてきた象徴的なアイテムとなっています。ロングのダークグリーンコートもヨウジヤマモト。そこにアレキサンダー・マックイーンのブラックシャツがシャープなエッジを添える。足元はナイキで、軽やかで自然体な抜け感を演出。装いは単なる“お揃い”ではありません。それは関係性を映し出すもの。特にパリ・ファッションウィーク期間中のペアルックとして、このルックは二人の原点を静かに物語っています。

 

 

 

ラグジュアリーとの距離が示す、二人の時間軸

 

 ラグジュアリーとの距離感も、二人は対照的です。レスリーにとって、ラグジュアリーブランドは決して特別な存在ではありません。LVMHグループの100人のCEOの肖像撮影をはじめ、ルイ・ヴィトン、ティファニー、フェンディなど数多くのブランドと仕事を重ねてきた彼にとって、それは長年向き合ってきた表現のフィールドの一部でした。

 

 一方で将真は、かつて飲食業界で働き、服装もごくベーシックなものが中心だった青年でした。ユニクロが日常着だった彼の人生は、レスリーとの出会いによって、思いもよらぬ方向へと動き出しました。

 

 

 

想像していなかった人生を大切にして感謝する

 

 世界的な写真家レスリー・キーのパートナーとして、突然スポットライトを浴び、ミラノやパリを行き来する日々。それは、将真自身が想像していなかった人生でした。男性と恋愛する経験は20代の後半からで、自然に自分のセクシュアリティの変化を受け入れたと言います。彼は、その変化を誇張することなく、穏やかにこう語ります。

 

「レスリーと出会えたことで、見たことのない世界を体験させてもらっています。自分にとってとてもいい影響を受けていて、二人の運命的な出逢いは奇跡だと思っています。毎日レスリーと一緒に生活する時間、愛を込めて大切にしているんです」

 

 その言葉には、戸惑いよりも感謝がにじんでいました。

 

 

コンコルド広場とルーヴル美術館のあいだに広がるチュイルリー公園で、バゲットを手に。「ここは私にとってとても特別な場所なんです」とレスリーは語る。2000年に初めてパリを訪れて以来、必ず立ち寄る場所なのだそう。6月、陽射しが美しく心地よい季節には、ファッション業界の友人たちと集まり、午後のピクニックを楽しむこともあります。冬には観覧車が立ち、季節ごとに表情を変えるこの庭園は、彼がいちばん自然体でいられる場所でもあるのだそう。この日二人が纏ったのは、ルイ・ヴィトンのシルクシャツ。交際中に銀座・松屋で初めて目にし、直感的に惹かれ、その後、札幌のルイ・ヴィトンで購入を決めた一着。ブラックのパンツ、ベルト、シューズもすべてルイ・ヴィトン。滑らかなシルクシャツの軽やかさに、黒のシャープさが加わり、セクシーでありながらエレガントなバランスを生み出しています。のちに二人は、この装いでシンガポールの結婚式にも出席しました。将真はクルーのサングラスを、レスリーはレイバンを合わせて。肩の力の抜けた自然さと、深く個人的な記憶が重なるひとときです。

 

 

 

最愛のミューズ、心の鏡のような存在として

 

 興味深いのは、その感謝が一方通行ではないことです。2025年9月9日に付き合い始めた二人。レスリー自身もまた、将真を”最愛のミューズ”そして“心の鏡”のような存在だと語ります。

 

 将真に一目惚れ。彼の姿勢、目の輝き、顔の骨格、仕草、優しさと存在感そのものがまるでモナリサのように美しいと感じているそうです。彼への敬愛から、将真の姿を撮影するライブワークが生まれ、ShomaLeslieというアートワークに残したい、という思いを日々強くするようになったのだそう。

 

 感情で突き進みがちな自分を、所作や視線、日々の振る舞いによって整えてくれる存在でもある将真。芸術家でありながら、レスリーは常に「自分」よりも、レンズの先にいる相手を最優先に考えています。

 

 企業の撮影であれば、その企業がいま映し出すべき姿をありのままに捉え、そこに自身の芸術的視点を重ねることで、未来像を静かに浮かび上がらせていく。その“プラットフォームづくり”の巧みさは、数多くの企業やスーパースターから信頼されてきた理由でもあります。

 

 そんな彼の姿勢の原点は今、特別な現場にあるのではなく、最も身近な存在である将真にあります。ひとりの人間として尊重し、その美しさと本質をすくい上げようとするまなざしにこそ宿っているようです。ミューズであり、鏡であり、人生の伴走者でもある将真。その存在があるからこそ、レスリーの表現はさらに深く、さらに優しく、世界へと向けられていきます。

 

 

カルーゼル凱旋門(Arc de Triomphe du Carrousel)の前で。ナポレオン様式のアーチの下に並び立つ二人が纏うのは、トム・ブラウンの代表作である“4バースーツ。ジャケット、シャツ、トラウザーズ、そしてタイまですべてトム・ブラウンで揃えたこのルックは、彼らにとって特別な意味を持ち、最も愛用しているスーツのひとつでもあります。腕とパンツに走る象徴的な4本ラインは、ペアルックでありながら、それぞれの個性を際立たせています。足元にはルイ・ヴィトンのシューズを合わせ、構築的なシルエットにさりげないラグジュアリーを添えています。眼鏡はプラダ。クラシックなフレームが、トム・ブラウンの知的でどこかアイロニカルな美学と美しく呼応しています。歴史的建築の壮麗さを背に、手を取り合うレスリーと将真。その姿は、心と思考を分かち合いながら一つの心として歩む関係性を象徴しているかのよう。社会の中で誇り高く立つ“知性あるカップル”としての静かな佇まい——それは二つの感性が重なり合う、控えめでありながら確かな宣言の瞬間でもあります。

 

 

 

予定通りにいかない世界で、最善を選ぶ

 

 取材の中で、象徴的な場面がありました。将真がふと、レスリーの写真集をドバイのアルマーニホテルへ350冊、1000キロを届けなければならないという相談をし始めたのです。アルマーニホテルでのガラディナーの準備と並行しながら、二人はすでに次の仕事へと視線を向けています。そこにあったのは、慌ただしさではなく、淡々と状況を受け止め、いま何が最善かを考える姿勢でした。

 

 急なキャンセルも、突然舞い込む大きな仕事も、レスリーにとっては日常の延長線にあります。感情に振り回されることなく、柔軟に、しかし誠実に応える━━その仕事観は、スピードの早いSNS時代の表現者としての強さでもあると感じました。

 

 

トロカデロ広場、エッフェル塔を背に。この日はとにかく風が強かった。強風に翻るシルクスカーフはエルメス。メンズアパレルは決して手の届きやすい価格ではないですが、それでも抗いがたい魅力を放つ存在。二人にとって初めての新年の贈り物として、ハワイで購入した一枚。干支でもある馬のモチーフに強く惹かれ、互いにとって最初のエルメスコレクションとなりました。馬は二人に共通する好きな動物でもあり、この写真をより意味深く、思い出深いものにしています。シャツはアレキサンダー・マックイーン、サングラスはディグナ クラシック、デニムはリーバイス。ラグジュアリーと日常の軽やかさが自然に溶け合い、全体に柔らかな抜け感をもたらしています。撮影は友人のタクミ・サンキョウ。強い風さえも味方につけた、その瞬間が静かに記憶へと刻まれています。

 

 

 

運命と責任、社会に貢献できるカップルになる

 

 その隣で将真もまた、自分の立ち位置を冷静に見つめています。レスリーという偉大な写真家との関係、創作活動のパートナーとしての役割、そして日々の生活を支え合う存在であること。

 

 それらを“運命と責任”のように受け止め、抗わず、流れの中で自分にできることを見つけていく。「大切なパートナーレスリーと共に、社会に貢献できるカップルとなれるように、日々学びながら自分の感性を磨く」その姿勢は、派手さとは無縁だが、確かな成熟を感じさせました。

 

 

 

食という、もうひとつの表現

 

インタビューの終盤、将真は静かに語りました。「自分にとって、食はとても大切な個性であり、人格の一部なんです」。

 

 近い未来、レスリーと一緒にレストランをプロデュースと経営したい。小さくてもいいから、自分が本当に選んだ食材を使い、自分の手で料理をし、それをお客さんに提供できる空間を創りたい━━そうした未来像を、飾り気なく話してくれました。その話を聞くレスリーの眼差しは、とても穏やかで、温かなものでした。

 

 前に出ることなく、しかし確かな信頼をもって、将真の夢を見守っているように見えました。

 

 

夜の石畳に残る湿り気が、静かで紛れもなくパリらしい空気を際立たせる。この日のスタイリングの鍵はレイヤード。アウターはキース、シャツとパンツはルイ・ヴィトンで統一し、足元はナイキで引き締めています。ピーコックを思わせるプリントが施された希少なショート丈のジャケットは、ハワイで将真が一目惚れした一着。「これでいい」ではなく、「これがいい」と迷いなく選んだそう。キースは、二人にとって初めて購入したストリートブランドでもあります。複数のブランドを重ねても過剰にならないのは、色と素材のバランスが整っているから。エッフェル塔を背にしても、服は夜の風景に埋もれることなく、確かな存在感を放っています。

 

 

 

人生の軸が増えた日、その出逢いが宝物

 

 レスリー自身もまた、将真への感謝を率直に語っていました。将真と出逢うまでは、とにかく仕事が好きで、キャリアと情熱だけを燃料に走り続けてきたそう。それが将真と生活を共にするようになり、レスリーの中に少しずつ変化が生まれました。

 

 仕事以外の時間をどう生きるか、大切な人とどのように時間を分かち合うか━人生には、仕事とは別の軸が確かに存在するのだということを、将真から教えられたのだと語ります。将真との出逢いはレスリーにとって人生の宝物です。その言葉は決して感傷的ではなく、むしろ静かな実感として響きました。

 

 

「実はこれ、タイじゃなくてプリントなんです」とレスリーは微笑みながら教えてくれました。一見、きちんと結ばれたネクタイのように見えるが、実際は白いシャツに直接施されたトロンプルイユ。トム・ブラウンならではの遊び心あふれるイリュージョンピースのひとつです。 この日の主役は、ロサンゼルス発のブランド、アミリ。2026年秋冬ショーの招待状が届いたのは、パリ・ファッションウィークの最中、前日の夜でした。しかし二人の手元にはアミリのアイテムがなかったのです。「カップルとして招待されたのなら、デザイナーへの敬意として、やはりアミリのペアルックで出席したい」——そうレスリーは決断し、急いで探しに向かいます。奇跡的に、プランタンで見つかったのは似たテイストの二着のみ。しかもサイズも雰囲気も驚くほどぴたりと合いました。柔らかな生地感、ゆとりのあるプロポーション、控えめなチェック柄。足元はナイキでバランスを取り、将真はクルー、レスリーはレイバンのサングラスを合わせました。計画された装いではありませんでした。しかしタイミングと直感、そして偶然が重なり、その日のアミリは忘れがたい瞬間の記録となったのです。カップルとして大切な決断を共にし、目標と満足を分かち合った一日でもありました。

 

 

 

「ShomaLeslie」そのものが作品になる

 

 ファッション、旅、出逢い、ライフスタイル、そして食。それらを通して発信されるインスタグラム「ShomaLeslie」という表現は、恋愛の誇示でも、戦略的なブランディングでもありません。

 

 生の男性二人が愛と敬意を込めて一緒に暮らしている。お互いの違いを尊重しながら、日々を創作として生きている時間と貴重な思い出、その写真と映像の記録であり、アートそのものなのです。

 

これから彼らがどんな景色を見せてくれるのか━━その先を想像する時間が、いまはただ、楽しみでなりません。

 

 

パリ・ファッションウィーク期間中に撮影された一枚。舞台は、コンコルド広場にある象徴的な噴水《フォンテーヌ・デ・メール》。この日のテーマは“ボリュームのコントロール”。ジャケットはキース、インナーにはクリストファー・ネメスのシャツを重ねています。袖や背中にゆとりを持たせたリラックスしたトップスが、あえて余白を生み出します。対照的に、ボトムスはヨウジヤマモト。サムライパンツを思わせる鋭いラインが、全体のシルエットを引き締めています。足元はナイキで軽さを加え、将真はクルー、レスリーはディグナ クラシックのサングラスを合わせています。「上はフラットに、下はキュッと締める」と二人は同時に語ります。まさに“Great minds think alike”。誇らしげに並び立つその姿は、まるで帝国を守る戦士のようでもありました。緩める場所と締める場所を明確に分けることで、重さを感じさせない緊張感が生まれます。ボリュームは削るものではなく、操るものなのです。

 

 

アレクサンドル三世橋のたもとで。まだ静かで、空気はやわらかく、どこかゆったりとしている、パリの早朝の空気感を感じさせる一枚。この日の装いは、ジョナサン・アンダーソンがロエベで手がけた最後のコレクションによるカーキのジャケットとトラウザーズを軸に、ルイ・ヴィトンのブラックのシルクシャツとグリーンのタイを重ねた構成。構築性とリラックス感のあいだを行き来する動きが、シルエットの中に宿っています。この一枚は、日々の中で将真がレスリーをさりげなく装い、優雅に整えることから始まる、彼の思いやりと愛情を映し出しています。足元はブラックのナイキで軽さを加え、レスリーの眼鏡はトム フォード。全体のバランスを静かに引き締めています。ファッションの本質は、完成された瞬間そのものではなく、センチメートル単位で整えられていく、その繊細な調整の過程にこそあるのかもしれません。

 

 

エッフェル塔を背に、二人は肩を並べて立つ。この装いは、二人が“ペアルック”を始めた頃に手に入れたスタイルの延長線上にある、思い入れの深い原点です。ロングのブラックコート、赤いダリアプリントのシャツ、そしてトラウザーズはいずれもヨウジヤマモト。オールブラックの構築的なシルエットが身体のラインを静かに引き立て、胸元に大胆に配されたフローラルモチーフが、強さの中に宿る情熱を印象づけます。これは、二人が初めてパリ・ファッションウィークに参加する直前に揃えた、最初のラグジュアリーブランドによるペアルックでもあります。サングラスはディグナ クラシック。ジョン・レノンに着想を得た丸みのあるクラシックなフレームが、ヨウジヤマモトのモードな世界観に、知的で柔らかなニュアンスを添えています。深い黒の中から鮮烈な赤いダリアが浮かび上がるこのルックは、単なるリンクコーディネートではありません。時を重ねるごとに深まってきた、真実の愛の関係の原点を静かに物語る一枚なのです。

 

 

Photography: SANKYO

 

 

 

 

 

 

Author: 北川美雪(きたがわ みゆき)

東京・銀座のテーラー「VESTA by John Ford」のゼネラルマネージャー。英語、イタリア語、フランス語に堪能、メンズファッションのエキスパートとして25年のキャリアを持つ。確かな素材選びとセンスの良い仕立てに定評があり、国内外のトップ経営者、政治家、各国の要人・大使らが顧客として名を連ねる。歴代の駐日イタリア大使にも絶賛された。ファッションに関する深い造詣を持ち、多くの雑誌などで記事を執筆している。好きな食べ物は「てっさ」である。https://johnford.co.jp/