ホームバーを愉しむ

Tuesday, January 26th, 2021

text shige oshiro

 

 

『007 /ドクター・ノオ』(1962年)にてショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンド。マティーニが実によく似合う。©Aflo

 

 

 

 バー巡りを常日頃からこよなく愛する私であるが、1年ほど前だろうか、ふとした瞬間にカクテルを久々に家でも愉しんでみようという気になった。

 

 大学時代の4年間は、学業も程々に、横浜の老舗のバーでバーテンダーとしてアルバイトに明け暮れた。当時の横浜のバーは、老若男女問わずひっきりなしに、夜遅くまでジャズやカクテルを楽しむ人々で賑わい、そのロケーションのよさからかデートでバーを利用する人も多かった。訪れる男女が各々、勝負服を身にまとい、カクテルグラスを傾けながら恋の駆け引きをしていたことを思い出す。

 

 私はその傍らで、蝶ネクタイを決め込み、腱鞘炎になるかと思うぐらいにシェーカーを振り続けていた。おそらく彼らの恋の演出役ぐらいにはなれていたと今でも思っている。ちなみに私は、当時お客様から「君の作るダイキリは、格別に美味しいよ」とよく褒められていた。懐かしい話である。さてこの話の続きはバーでするとして、そう、久々にカクテルを家で作ろうと思い立った。まずは、手始めに道具選びから。シェーカー等はすべてBIRDY.で揃え、カクテルグラスはリーデルからバカラのヴィンテージまで、カクテルのイメージに合わせてひと通り揃えた。実に楽しい時間だった。

 

 あとは、その日の気分に合わせて好きなカクテルを作り愉しむだけ。まずはカクテルの王道、マティーニとマンハッタン、そして妙に当時褒められたダイキリから始めてみた。久々にシェーカーを手にするやいなや、瞬時に当時の懐かしい思い出と嬉しさが込み上げてくるのである。まだ腕は鈍ってないなと心の中で自画自賛した。

 

 カクテルの愉しみ方は、人それぞれあると思うが、私は読書をしながら、また映画やドラマを見ながら、その主人公を想い、時には主人公になりきってカクテルを愉しむのが好きだ。

 

 例えば、マティーニ。このカクテルをこよなく愛した人物といえば、フランクリン・ルーズベルトやウィンストン・チャーチルなど名だたる偉人ばかりだが、やはりなんといっても有名なのは、そう、ジェームズ・ボンドではないだろうか。

 

“Vodka Martini, Shaken, not stirred.”

 

 名主人公・名俳優に敬意を表して。今宵もシェーカーを振るとしよう。

 

 

 

 

Letter from the President とは?

ザ・レイク・ジャパン代表取締役の大城が出合ってきたもののなかで、特に彼自身の心を大きく動かしたコト・モノを紹介する。