Hymne à l’amour

Sunday, July 26th, 2020

text shige oshiro

 

 

名曲『Hymne à l’amour( 愛の讃歌)』を代表曲として持つエディット・ピアフ(1915-1963)。©Mary Evans Picture Library / Aflo

 

 

 1930年代から1950年代の音楽が、私は特に好きである。

 

 エディット・ピアフ、マリア・カラス、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデー、笠置シヅ子や江利チエミ……。彼女らの歌声もさることながら、国やジャンルを問わず、ファッションや文化、時代背景を想像しながら同年代のヴィンテージウィスキーやワインを飲むことも、また格別である。

 

 若いときから通っている都内のウィスキーバーも、以前は放蕩者が屯(たむろ)している店だったが、ここ十数年で客層が様変わりした。今や国内外から、ジャズやシャンソン、ボサノバなど、音楽をこよなく愛するフリークたちの溜まり場となり、ある意味、知る人ぞ知る有名店となっている。

 

 ただ、私だけは25年前と変わらず夜深くにこの店を訪れ、満員の店内を半ば強引にかき分けて席につき、自分の好きな曲だけをかけてもらうことを繰り返している。我ながら、なんとも我が儘で、この上なく厄介な客だと思う。

 

 だが店主も上手だ。25年という時を経ると、この我が儘な来訪者の扱いも手馴れたもので、私が店に入るや否や、先客を巧みにあしらい、気づくと、いつもの通りの貸し切り状態となっている。そうなればもう私の時間だ。大好きな曲をかけてもらい、只々物想いにふけるわけである。

 

 幾度の戦争や大恐慌と、世界中の人々が悩み、苦しみ、そして生きる希望を、光を探し求めた“時”であるこの年代に、人々は何を考え、何を求め、どう生きようとしたのだろうか……。グラスを傾けながらそんなことを考え、今、この時代の、混沌とした世界の渦の中で「生きていること」「生かされていること」の幸せを、そして平和を心から祈り、享受し、自分自身の勇気と使命を鼓舞するのだ。

 

 ほろ酔いの私に、店主から私へのいつもの口癖である。「君は、どんなときでもきっと今のように、楽しくお酒を飲んでるよ」と。人生は、一度きりである。読者の皆様も全力でレイキッシュに人生を謳歌していただきたい。“La vie en rose!”

 

 

 

Letter from the President とは?

ザ・レイク・ジャパン代表取締役の大城が出合ってきたもののなかで、特に彼自身の心を大きく動かしたコト・モノを紹介する。