CARL F. BUCHERER : TIME TRAVELLERS
蘇る、往年の輝き。
January 2022
現ブヘラグループ会長、ヨルグ・G・ブヘラは、ファミリーカーだったリンカーン コスモポリタン タウン セダンを探し出し、入念な修復作業を依頼。往年の輝きが、見事に蘇った。
「ファミリーカー」というと、多くの人は子どもを学校へ送るための面白みのないクルマを思い浮かべるだろう。だがブヘラ家の場合は違う。ブヘラ家とは、1888年にカール・フリードリッヒ・ブヘラが妻とともに高級時計と宝飾の店として創業した、あのブヘラ家のことだ。
カール・フリードリッヒ・ブヘラの息子にあたるカール・エドアルド・ブヘラはある日、1949年製のリンカーン コスモポリタン タウン セダンを手に入れ、家庭に持ち込んだ。それがブヘラ家の歴史に深く刻まれるファミリーカーになるとは知らずに。
このクルマは、エドアルドの息子であるヨルグ・G・ブヘラに大きな衝撃を与えた。当時13歳だったヨルグは、クルマを購入した同年にルツェルンで開催されたコンクール・デクセランス・アンテルナショナルで、このリンカーンがパブリック賞を受賞するのを見ていたからだ。しかしクルマは3年後に売りに出されてしまう。そしてそれ以降は、何人ものオーナーに引き継がれていった。
半世紀以上の時が経った2013年、なんとヨルグはついにこのクルマを見つけて買い戻した。そしてボディを丸裸にし、エンジンも一から組み立て直した。ルツェルンの人々の歓声を受けた当時の輝きを、見事に蘇らせたのだ。
1949年のコンクール・デクセランス・アンテルナショナルでパブリック賞を受賞した、ブヘラ家のリンカーン コスモポリタン タウン セダン。
ではここからはタイムピースについて詳しく見ていこう。188本限定の「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル ルツェルン」は、カール F. ブヘラの地元、ルツェルンの街に敬意を表し、ブヘラ家に愛されたリンカーンからインスピレーションを得てヴィンテージルックを纏ったクロノグラフである。ダイヤルのシルバー、サブダイヤルとタキメータースケールのスカイブルーは、リンカーンの象徴的なカラーリングを引用したものになっている。ダブルドーム型サファイアクリスタルから見えるシルバーダイヤルには、4時と5時の間に月の小窓、12時の真下にビッグデイト表示があり、シリンジ型の針は、当時流行したスタイルを踏襲している。
左:オリジナルの栄光を取り戻したリンカーンは、後ろから見た姿も実に美しい。右:付属のカーフレザーストラップを装着した「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル ルツェルン」。クイックリリースシステムにより、着用する日のスタイリングや予定に応じて素早く簡単にチェンジが可能だ。
このタイムピースを手に入れた者は、ヴィンテージカーの豊かな歴史の一部を預かったと感じるだろう。カール F. ブヘラCEOのサーシャ・モエリはこう話す。
「信じられないような物語です。何年もヨルグ・G・ブヘラとともに働かせてもらっている私たちは皆、このクルマが歴史を刻んだ場所に戻すことに協力し、この出来事を称える素晴らしい時計を発表できることを嬉しく思っています」
たくさんの愛情を注がれたファミリーカーと、ブランドが歴史を紡いできた愛おしい故郷ルツェルンへオマージュを捧げる、特別なタイムピースである
ヘリテージ バイコンパックス アニュアル ルツェルンスモールセコンドとクロノブラフの分積算計のサブダイヤル、そしてタキメータースケール付きのチャプターリングに、リンカーンを象徴するこだわりのスカイブルーを採用。フォールディングクラスプを備えたステンレススチール製ブレスレットのほか、カーフレザーストラップも付属し、クイックリリースシステムにより素早く簡単に付け替えることが可能。搭載するムーブメントは、42時間のパワーリザーブを持つ自動巻きの「CFB 1972キャリバー」。年に一度の調整で済むアニュアルカレンダーと、ビッグデイト表示を備えており、実用性にも非常に優れている。世界限定188本。自動巻き、SSケース、41mm。¥1,045,000 Carl F. Bucherer(スイスプライムブランズ Tel.03-6226-4650)
本記事は2022年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 44