THE CARDINALE SIN

罪深き美しさ:クラウディア・カルディナーレ

March 2024

 彼女は“見せないのが良いヌード”という方針を断固として曲げず、それに自信を持っていた。同時代の女優の多くは、ストーリーが少しでも許せば裸身をさらしていたが、カルディナーレにはその流れに追随する気はなかったのである。

 1960年代中期から後期にかけて、カルディナーレは『目かくし』『名誉と栄光のためでなく』『アフリカ大空輸』『プロフェッショナル』といったハリウッド映画に多数出演した。だがその美しさの奥には、内に秘められていながらも、止めようのない何かが生み出す小さな炎が揺らめいていた。

 ボブ・ディランも、そんな彼女の姿を『ブロンド・オン・ブロンド』の最初のアルバムジャケットに使用したほどである。ただ、無断で使用していたことが後に明らかになったので、すぐにそのジャケットは改訂されてしまった。

 彼女の演技の特徴は、物足りなげなアンニュイさであったが、それはやがて実生活にも波及していく。高潔な心、怨恨、銃など、持っているものはそれぞれ違っていても、プレイガールばかりを演じることに疲れた彼女は、より中身のある作品を求めてヨーロッパへ戻ることとなる。

 以来、彼女の演技や作品はそれまでとは異なる重みや味わいを持つようになった。その変化は男女平等というテーマにおいて特に顕著で、2000年には女性の権利保護を支援するユネスコ親善大使に選ばれ、カンヌ映画祭では、審査員団の一員として映画界の発展に尽力しただけでなく、自身もさまざまな賞を受賞したのだ。最近も、『Signora Enrica(原題)』で年配のイタリア人女性を演じ、2010年の第47回アンタルヤ・ゴールデン・オレンジ映画祭で最優秀女優賞を獲得した。

ダイヤモンドのように続く輝き 重要なのは、カルディナーレが今なお役者であり続け、進化の日々を送っているということだ。現在は『Piccolina bella(原題)』と『Der Friseur(原題)』というふたつの作品が進行中。

 さらに近年は、若さを失ってゆく女性を絶妙な筆致で描いたテネシー・ウィリアムズによるふたつの演劇作品にも出演した。また、2014年公開の『Effie Gray(原題)』でカルディナーレと共演したエマ・トンプソンやダコタ・ファニングのように、彼女と一緒に仕事をしたいと熱烈なラブコールを送る役者は後を絶たない。カルディナーレは2014年にこう語った。

「映画に出演するたび、違う女性にならなくてはいけないの。写真も同じよ。けれど仕事が終われば自分自身に戻るの」

 どちらも本物の彼女であり、彼女はまさに、映画『ピンクの豹』のタイトルの由来となったダイヤモンドのような存在だ。多面的で、うっとりするような輝きを湛えた、見る者すべてが手に入れたくなるような女性なのである。それが叶いさえすれば、と願わずにはいられない。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 12
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