SARTORIA SILVANO“Manica Forchtta”
THE BESPOKE MASTERPIECE 003:
サルトリア シルヴァーノのマニカ・フォルケッタ
June 2022
絶品のラグラン袖

熟練サルトですら手こずる仕立ての難しさゆえ、ナポリでも絶滅危惧種になりつつあるというラグランスリーブのビスポーク・コート。当地で腕利きのマエストロとして知られるアントニオ・パスカリエッロの看板的アイテムだ。同店で修業した菅沼氏のそれはショルダーラインに加え、ラペルの立体的なロールにも注力して仕立てているのがこだわりという。納期は約6カ月〜。¥500,000〜
マニカ・フォルケッタと聞くと、チッチオのそれを真っ先に思い浮かべる人が多いことだろう。しかし、ナポリに同じ師をもつ菅沼氏もまた、素晴らしいマニカ・フォルケッタを仕立てることができる。ルーツは同じだが、作り手が違えば当然作風は変わり、襟のフォルムや全体のラインなど、随所に菅沼氏ならではの美意識を投影した一着として完成されているのが興味深い。
マニカ・フォルケッタとは伊語で“フォーク袖”の意。平たくいえば三枚はぎのラグランスリーブのことだが、ビスポークのクオリティでそれを作るのは滅法大変なのだという。身頃と袖が一体ゆえ、仕立ての要であるショルダーラインを出すのが非常に難しいためだ。
そんな労苦のはてに完成する一着は、肩への“沿い方”が既製とは別次元。首元のノボリから肩、袖先にかけてのラインが一筆書きのように繋がり、ラグラン特有のリラックス感を醸し出しつつも独特な清冽さを発揮する。これがまた、最高にRAKISHな佇まいを演出してくれるのだ。

横から見たとき、3本のシームがフォークのように見えることから“マニカ・フォルケッタ”とよばれるナポリ流ラグランスリーブ。肩にぴったりと沿ったシルエットがビスポークならではだ。シームを片倒しにしているため、独特の存在感を放っているのも特徴的。

ダグデール ブラザーズのツイード目付け520g/mのドライタッチなツイード。柔らかなマニカ・フォルケッタに仕立て上げると、軽快感とウェイト感を両立した一着が完成する。

Tomohiro Suganuma / 菅沼知央1986年生まれ。2013年にナポリへ渡り、アントニオ・パスカリエッロで4年半修業したのち2018年に帰国。現在は東京と神奈川を中心として活動している。ちなみに、氏が写真で着用しているミリタリーコートも顧客の間で人気のアイテムだそう。
サルトリア シルヴァーノオーダー場所などの詳細は下記より要問い合わせ。
sartoriasilvano@gmail.com
Instagram @sartoria_silvano
本記事は2022年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 44