今、作るべきビスポークの職人06

【ASSISI BESPOKE HOUSE】飛ぶ鳥を落とす勢いのソウルの新星:キム・ミンス

May 2024

text and photography yuko fujita

Kim Min Soo / キム・ミンス1983年、ソサン生まれ。テーラーとしてのキャリアは2009年からで、2018年、ミラノに渡る。フォルビチドーロ(金の鋏賞)を獲得した名匠パオロ・レンティーニ氏のもとで学び、帰国後の2020年、かつてのテーラーで同僚だったディレクターのキム・ダビン氏とともに、アッシジ ビスポーク ハウスを始動。若きサルトリア コレアーナの筆頭だ。

 ソウルの梨泰院の閑静な高台エリアにアトリエを構えるアッシジ ビスポークハウスは、ソウルではもちろん、今日のアジアにおいて最も勢いのあるビスポークテーラーだ。ミラノでの修業を経て帰国したカッターのキム・ミンス氏が前ビスポークテーラーで同僚だった若きディレクターのキム・ダビン氏がタッグを組んで2020年に始動すると、瞬く間に人気を獲得。今では、バンコク、シンガポール、マニラ、ニューヨーク、シドニー、上海、台北、東京と、トランクショーで毎月のように世界を飛び回っている。

 根幹にあるイタリアというスタイルをベースにミラノやナポリといった各都市の仕立ての要素を絶妙にハイブリッドさせながら、ソフトで軽やかに、そしてクリアな仕立てで表現した彼らの服は、全体のまとめ方が実に上手い。実際にアッシジのビスポークスーツを仕立てて印象的だったのは、注文時も仮縫い時も大変細かくリクエストを聞いてくれた点だ。ハウススタイルを崩すことなく、彼らは顧客の好みに寄り添いながら上手くまとめあげてくれる。

 フィッティングも圧巻だった。これまでそれなりの回数のビスポークを経験してきたが、仮縫いでのこだわりは今まででトップクラスだった。2度の仮縫いではチームの皆で入念にチェックし、着用時にどう見えるか、どう調整してまとめていくか、こちらの希望を聞きながらミリ単位のこだわりを見せていた。非常に着用頻度が高い今日この頃だ。

私が仕立てたダブルブレステッドスーツ。私のリクエストで肩幅はやや広めに。ミラノの服のような端正さを感じさせながら、リラックスした雰囲気で、ナポリらしい雰囲気も備えた一着だ。

Data

スーツ¥473,000~、ジャケット¥373,000~、トラウザーズ¥145,000~、コート¥521,000~(すべてビスポーク価格)。仮縫いは2回で、納期は約6カ月~1年。MTMの展開もあり。
お問い合わせ先:サルト銀座店 TEL.03-3567-0016

本記事は2024年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 56