今、作るべきビスポークの職人05

【SARTORIA NAPOLETANA IN SEOUL】本場ナポリの薫り強いソウルの巨匠:ジュン・ビョンハ

May 2024

text and photography yuko fujita

Jun Byungha / ジュン・ビョンハ1978年、ソウル生まれ。2008年にナポリに渡って巨匠アントニオ・パスカリエッロ氏に師事。4年間工房に住み込んで、徹底的に鍛え上げられた。2012年にソウルに戻り、自身のサルトリアを始動。既製服のコレクション「Sartoria Jun」も非常に人気が高い。

 イタリアのサルトリア仕立てに見られるソフトでエモーショナルな服を仕立てる職人がソウルにまだいなかった2008年、それを体得するべくナポリに渡り、アントニオ・パスカリエッロ氏に師事。4年ものあいだ小さな工房に住み込んで、徹底的に鍛え上げられたジュン・ビョンハ氏は、「チッチオ」の上木規至氏の弟弟子にあたる。ジュン氏のあとに続いた「トラモント」の佐々木聖男氏が「ペッペ」、「シルヴァーノ」の菅沼知央氏が「シルヴァーノ」というニックネームを親方から頂戴したのに対し、ジュン氏は上木氏と同じく「チッチオ」と呼ばれていたことも手伝ってか、上木氏とは兄弟のように仲がいい。

 が、ふたりが仕立てる服は対照的だ。ファッションやテーラリングだけでなく、あらゆる国の文化が交錯する東京では、イタリアで修業したテーラーもその服が徐々にトキオナイズされた洗練を纏っていくのに対し、ジュン氏は親方の服に通じるナポリの“薫り”をたっぷり残す、朴訥としていて鷹揚な雰囲気の服を仕立て続けている。本人の人間性がそのまま表れているようなジュン氏の服は、実に味わい深い。

 2024年は春に日本でトランクショーを開催することに意欲的だ。その際は、コツコツと集めてきたたくさんの素晴らしいヴィンテージ生地を揃えて迎えてくれるはずだ。ナポリの服を仕立て続けてきた人にも、ジュン氏の服をぜひ味わってほしい。

今日のナポリの服は肩がコンパクトなのに対し、彼は肩幅を広くとり、ゆとりをもたせたフィッティングを好む。師匠の服の流れを汲んだこの顔つきが最高!

Data

スーツ¥540,000~、ジャケット¥435,000~、トラウザーズ¥108,000~、コート¥668,000 ~。仮縫いは1~2回で、納期は約6カ月~。それぞれMTMの展開もあり。
Email:sartoriajun@gmail.com

本記事は2024年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 56

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