今、作るべきビスポークの職人04

【SARTORIA BY ZHANG XIAO】ミラノを軽やかに奏でる青島のサルタ:ジャン・シャオ

May 2024

text yuko fujita

Zhang Xiao / ジャン・シャオ1988年、中国の山東省・日照生まれ。2013年、パターンを学びにミラノへ渡る。2015年1月、通訳として偶然訪れたサルトリア ムゼッラ-デンベックの芸術的な仕立て仕事に衝撃を受け、同サルトリアで約4年間修業。帰国後、2019年、青島にて「サルトリア バイ ジャン・シャオ」を始動した。

 彼女の服にはゾクゾクッとする美しさがある。ジャン・シャオ氏と初めて会ったのは2015年。ミラノのサルトリア ムゼッラ-デンベックを訪ねた際、巨匠フランコチェスコ・ムゼッラ-デンベック氏のアップレンディスタ(弟子)として修業していたのが彼女だった。中国から修業に来ていると話してくれた彼女のことは非常に印象深く覚えている。近い将来、他のアジアの国々においても、イタリアで修業を積んだ職人によるサルトリア文化が広まっていく時代が訪れるのだろうと漠然と思ったものだが、まさかここまで美しい服を仕立てるサルタになるとは想像だにできなかった。

 4年間の修業を経て2019年に帰国し、生まれた育った山東省の青島にて、自身の名を冠した「Sartoria by Zhang Xiao」を開業した。夫はミラノのモデリスト養成校「セコリ」での同級生だった中辻亮多氏だ。以来、中辻氏がタリアトーレ(カッター)、ジャン氏がサルタというきれいな役割分担のもと、夫婦でサルトリアを切り盛りしている。

 ジャン氏が服を仕立てるうえで大切にしているのは“モルビデッツァ”、すなわち柔らかさだ。構築的なミラノのカットの趣を残しながら、特に肩周りにおいてより顕著な軽やかさを表現している。曲面の構成が大変美しく、優美な雰囲気を纏った彼女の服は、力強い師匠の服とは趣を異にするエレガンスを漂わせる。

 ジョージ・ワン氏の店「アトリエ ブリオペキーノ」でもトランクショーを開催しているが、今年は遂に日本でのトランクショーも開始する予定だ。

左:カシミア100%のハウンズトゥースジャケット。襟周りの表情がなんとも美しい。右:ラグランスリーブのコートは袖のセンターにシームが入った「チェントロマーニカ」。かなりマニアックなこの仕様を仕立てるのに驚いた。

Data

スーツ¥396,000、ジャケット¥286,000、コート¥484,000(すべてビスポークで、仕立て工賃のみの価格)。スーツの生地は基本持ち込み。
Email:zhangxiao1209@gmail.com
instagram: @sartoria_by_zhangxiao

本記事は2024年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 56

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