今、作るべきビスポークの職人03

【SARTORIA COSTANTINO】父から子へ、伝統の仕立ての継承:ファビオ・プンツォ

May 2024

text and photography yuko fujita

Fabio Punzo / ファビオ・プンツォ1998年、サンジョルジオ・ア・クレマーノ生まれ。18歳で父のサルトリアに入り、サルトの道を志す。裁断はフェリーチェ・ヴィゾーネ氏(写真左)、縫製はラッファエーレ・マカッリ氏というコスタンティーノ氏のふたりのお抱えサルトから徹底的に叩き込まれた。25歳にしてメキメキと頭角を現している。

 コスタンティーノ・プンツォ氏とは知り合って23年にもなる。いつもジョークを飛ばし、自らを100%ナポレターノと称する彼は、こちらにいわせれば陽気さだけなら120%ナポレターノだ。が、その仕事は見事というほかないほど秀逸である。彼こそは世界でもトップクラスのフィッターであり、凄腕の職人を束ねる最高の目利きであると確信している。

 1990年からマリアーノ・ルビナッチ氏のもとでキャリアを積んだコスタンティーノ氏は、2001年2月、本城修一氏の伝説の店「ピッティ コレクション」にて、日本で初めてのトランクショーを開催した。パニーコやピロッツィも扱っていた本城氏が当時オリジナルレーベル「スカルピーノ」とのWネームを冠してまで惚れ込んだのが、コスタンティーノ氏の服だった。2010年1月からは「エッセチ」の國澤敏志氏とタッグを組んでトランクショーを開催している。

 これまで東京では相当数のテーラーがトランクショーを開いてきたが、年4回のペース(毎回2週間ほど滞在)でトランクショーを今日まで欠かさずに続けられているのはコスタンティーノ氏だけだ。義理堅く、日本を愛し、そして日本のカスタマーを愛してやまない。そして、同じくらいカスタマーからも愛されている。陽気なキャラクターもさることながら、着実に仕立てを進化させながら最高の服を納め続けるという、最上の結果を常に出してきたからこそだ。

2パッチポケットのジャケットは、最近仕立てがアップデートされたばかりで、パッチポケットがまるで身頃と一体化したような見事な縫製。こちらもファビオ氏が裁断しており、洒脱な中にも凛々しさと力強さが宿る。サルトリア コスタンティーノでは、シャツはカミチェリア ロンバルディ(ビスポークで¥77,000~、初回のみ仮縫いありで納期は約6カ月、2回目からは約3カ月)、タイはフランチェスコ・マリーノ(ビスポークで¥20,000~で、納期は約3カ月)が仕立てている。

 7年前からは息子のファビオ・プンツォ氏が高校卒業と同時にサルトリアに入った。裁断はコスタンティーノ氏が抱える巨匠フェリーチェ・ヴィゾーネ氏からすべてを徹底的に叩き込まれた。さらに幸せなことに、工房の弟子にすら裁断を見せないアントニオ・パニーコ氏も、コスタンティーノ氏の息子であるファビオ氏だけには積極的にイロハを伝授した。あのパニーコが秘技を教えるなんて俄かには信じられないが、それはロンドンハウス時代の同僚だったコスタンティーノ氏のすべてを認めている証だ。ファビオ氏は、両巨匠の師である伝説のサルト、ロベルト・コンバッテンテの古(いにしえ)の裁断手法の継承者となったのだ。毎日夕飯前までサッカーに夢中だった小学生時代の彼を知る身としては、実に感慨深い。

巨匠フェリーチェ・ヴィゾーネ氏が若かりし頃、伝説のサルト、ロベルト・コンバッテンテの仕立て学校で学んでいたときのノート。

Data

スーツ¥550,000~、ジャケット¥450,000~、コート¥680,000~、トラウザーズ¥150,000~(すべて仮縫い込みで、納期は約6カ月)
お問い合わせ先:エッセチTEL.042-445-0537 Email:info@esseci.jp

本記事は2024年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 56

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