今、作るべきビスポークの職人01
【FALCO】フィレンツェでの11年を経て、佐久で舞う鷹:内山貴詞
May 2024
Takanori Uchiyama / 内山 貴詞1986年、兵庫県生まれ。20歳から名古屋で1年間靴作りを学んだのち、姫路に戻って渡伊に向け3年間貯蓄し、2010年にフィレンツェに渡る。イル・ミーチョの深谷秀隆氏のもとで修業を積み、2021年に帰国。奥様の出身地である長野県佐久市に工房を構え、自身のビスポークシューズブランド「ファルコ」を始動。
ファルコはイタリア語で「鷹」を意味し、タカノリだから「ファルコ」。鈴木幸次氏の「スピーゴラ(イタリア語で鱸(すずき)の意)」から始まったイタリア的ネーミングも、イタリア修業組の間では今やすっかりお馴染みとなった。が、ファルコとは言い得て妙だ。内山貴詞氏が手がける靴は鷹のように気高く、そして美しく、その靴と対峙した人間のハートを“鷲摑み”ならぬ“鷹摑み”にする。狙った獲物は逃さない、そんな魔力を秘めている。
兵庫県姫路の出身だが、奥様の出身地である長野県佐久市、かつて中山道の宿場として栄えた塩名田の古民家を大々的にリノベーションし、アトリエを構えた。千曲川のすぐそばで、内山氏が長らく住んだアルノ川が流れるフィレンツェとどこか重なる。
左から、チンギアーレのエプロンダービー、バッファローのダブルモンク、型押しカーフのフルブローグは、すべて¥280,000。
2010年にフィレンツェに渡り、イル・ミーチョの深谷秀隆氏のもとで11年間修業した。フィレンツェの靴といったら自分の中では100%イル・ミーチョだと言い切る内山氏は、師匠への畏敬の念に満ちている。
「クラシックな靴を作りたいんです。奇抜なデザインもできるんですけど、後にデザインが古いと感じられたらいちばん悲しいじゃないですか。クラシックに個性が入るのって違うと思うんです。受け継がれて初めてそう呼ばれるものの気がしますし、師匠のしてきたことを受け継ぎたい気持ちも強くあります。だから、私の靴にはそこまでの個性は必要ないと思っているんです」
そういえば、トウからボールジョイントにかけてのアウトサイドの内側に抉れたカーブラインは、かつてのイル・ミーチョに見られた仕様ではないか!
左上から時計回りに、ラクダ¥280,000、クジラ¥310,000、チンギアーレ¥280,000、型押しスエード¥280,000、ヒポポタマス¥320,000、ヒグマ¥330,000など、ユニークな革が揃う。
伝統工芸の木曽堆朱を施した芸術的なシューツリー各¥80,000。
目指している理想は、地元で愛される町の靴職人だという。ちょうど築100年を迎える古民家を、時間をかけてリノベーションしたショールームにて。
ビスポーク¥280,000~、仮縫いは2~3回。納期は約1年。
住所:長野県佐久市塩名田1350
Email:falco-@ymail.ne.jp
instagram: @falco_shoemaker
本記事は2024年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 56