インドのマハラジャ ーその知られざるライフスタイルー
in the land of KINGS

MAHARAJA OF SAMODE
マハラジャが手がけるホテル&レストラン

April 2015

ジャイプールから約40km離れた、山に囲まれた街サモード。
人がひしめきあう都会の喧騒と離れ、静かで穏やかな時間の流れる、
この美しき古城のホテルで、経営者であるマハラジャと出会った。
photography takashi kobayashi
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Rawal Yadvendra Singh Samode / ラワール・ヤドヴェンドラ・シング・サモード1987年より兄のラグヴェンドラ・シング・サモード氏とともにホテル経営を開始。当時としては画期的なことで、経営者的マハラジャの先駆け。その一方で、地元のインフラ整備や農業発展のためにファンドを作るなど、マハラジャとしての活動も勢力的に行う。

文化的財産を守るホテル経営 間取りの違う40部屋ほどの客室で、欧米人を中心に人気のホテル。ここは16世紀に建てられた宮殿。経営しているのは、サモードのマハラジャ兄弟、ヤダヴェンドラ・シング・サモード氏とその兄だ。

「1987年にスタートさせました。今はここの他に3つのホテルを経営しています」

 古い建築の一番のメンテナンス法は、使うこと。だから、400年以上もの間受け継がれてきたこの宮殿を、ホテルとして運用することに決めた。

「文化的財産としてこの宮殿を守っていく責任を感じています。それは私たちの先祖が代々、大切にしてきた精神です」

 祖父は弁護士、父は輸入ビジネスをし、ともにイギリス留学をしてきたが、サモード氏は高校を卒業してすぐに兄とホテル経営のビジネスをやろうと考えた。地元の雇用や農業支援と直接結びつくホテル業で人々を支援したいと考えたからだ。今も年に数回、ホテルビジネスを海外へ学びに行くほどの熱意を持っている。

 そんなサモード氏は普段からなによりも「食」に興味を持っているのだという。

「ホテルの中でもレストランはとても重要です。滞在での『食』というイベントをもっと楽しんでほしい。だからメニューにも積極的に意見を出します。ベースはラージャスターン州の料理ですが、私も外国に行けば各国の料理を食べるし、美味しかったらその要素を取り入れています」

 実際、ホテルのレストランは西洋料理のエッセンスが感じられる。ホテルの宿泊客の多くが欧米人であることも関係しているという。インテリアもヨーロッパの様式をミックスさせたモダンな空間だ。

「天ぷらもあります。日本には行ったことはありませんが、近々訪れる予定なので、日本食を味わうのが楽しみです」

What’s a Maharaja? マハラジャとは

 19世紀末、イギリス統治時代のインドには560あまりの藩王国が存在していた。イギリスはこの植民地を管理するにあたり、「マハラジャ」にそれぞれの国を治めさせた。「マハ」=偉大な、「ラジャ」=王、という意味が示す通り、彼らは広大な領土と圧倒的な権力、莫大な資産を所有し栄華を極めた。そして誰もが憧れるような、絵に描いたような生活を送っていたのだ。

 その後インドは、1947年にイギリスから独立。さらに71年の憲法改正により称号が廃止となったため、事実上、マハラジャはインドに一人もいないことになった。マハラジャたちの所有する領土や宮殿、所有物のほとんどは、中央政府に奪われた。そのため、中には没落していった王族もいるという。

 しかし今もマハラジャとその子孫たちは確かにインドに存在する。王侯の地位がなくなってもなお、その力は絶大だ。彼らの多くは、政治に携わったり、メンテナンスの目的を兼ねて、古くなった宮殿をホテルや博物館としてオープンするなどしている。彼らのライフスタイルとはいったいどんなものだろうか。6人のマハラジャのライフスタイルを探りに、インドへ向かった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 02