インドのマハラジャ ーその知られざるライフスタイルー
in the land of KINGS

MAHARAJA OF JAIPUR
世界を見て知る確かなセンス

April 2015

赤く塗られた建物が続く、ピンクシティと呼ばれるジャイプル。
20万㎡もあるという広大な庭を持つ宮殿ホテルで
マハラジャ自身の趣味嗜好について伺った。
photography takashi kobayashi
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Rajkumar Vijit Singh of Jaipur / ラージクマール・ヴィジット・シング・オブ・ジャイプル1960年生まれ。アジメールの大学でアート、ムンバイの大学で政治史を学ぶ。デリーやジャイプル郊外に別荘を所有。また、トラの生息する森をサファリロッジとしてホテルを経営している。2人の息子、1人の娘を持つ。

「裏にはゴルフコースもあるんです。元々は私たちの土地。私もゴルフが好きなので、学生の頃の友人とよくラウンドします。とにかく身体を動かすのが好き」

 そう語るのはジャイプルのマハラジャ、ヴィジット・シング氏だ。ゴルフ以外にも海外の旅先でダイビングやマリンスポーツを楽しむアクティブなスポーツマン。ジャイプルの青空と格調高雅な庭にマッチした、エレガントかつリラックスしたスタイルも大人の余裕を感じさせる。

「ブランドにはこだわっていません。ローカルのテーラーで仕立てたフォーマルや、欧米のごく庶民的なカジュアルも着ますよ。問題は品質。いいものは着心地がいいですよね。靴だったらやわらかさを重視します。トッズの靴が最高です」

 確かな審美眼を持つマハラジャ。世界中の逸品を愛用してきたからこそ、本当にいいものを見分けられるのだ。

What’s a Maharaja? マハラジャとは

 19世紀末、イギリス統治時代のインドには560あまりの藩王国が存在していた。イギリスはこの植民地を管理するにあたり、「マハラジャ」にそれぞれの国を治めさせた。「マハ」=偉大な、「ラジャ」=王、という意味が示す通り、彼らは広大な領土と圧倒的な権力、莫大な資産を所有し栄華を極めた。そして誰もが憧れるような、絵に描いたような生活を送っていたのだ。

 その後インドは、1947年にイギリスから独立。さらに71年の憲法改正により称号が廃止となったため、事実上、マハラジャはインドに一人もいないことになった。マハラジャたちの所有する領土や宮殿、所有物のほとんどは、中央政府に奪われた。そのため、中には没落していった王族もいるという。

 しかし今もマハラジャとその子孫たちは確かにインドに存在する。王侯の地位がなくなってもなお、その力は絶大だ。彼らの多くは、政治に携わったり、メンテナンスの目的を兼ねて、古くなった宮殿をホテルや博物館としてオープンするなどしている。彼らのライフスタイルとはいったいどんなものだろうか。6人のマハラジャのライフスタイルを探りに、インドへ向かった。

本記事は2015年1月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 02