リザード製ストラップと真鍮バックルの併せ技リザードのストラップをあしらった、カーフのモンクストラップシューズ。男らしさあふれる真鍮バックルは、久内氏自らがデザインしたものだ。エッジの利いたトウシェイプがエレガントな一足だ。¥290,000~ Il Quadrifoglio
楽譜をレーザー刻印したチャッカブーツイルチェア社のクラッキング風レザーはその表情の豊かさもさることながら、久内氏はこれにバッハの楽譜をレーザー刻印。ドライブ用に履き口のカットをアレンジしたというその発想もユニークだ。¥280,000 Il Quadrifoglio
オリーブグレーの濃淡が色気を生むデザイン自体はクラシックなフルブローグだが、オリーブグレーのスタンプレザーは色合いと革の表情がとても味わい深く、実にセクシー。黒い墨を塗り込んだ陰影あるトウも靴の味わい深さを増している。¥250,000 Il Quadrifoglio
強烈な個性を放つバッファローレザー製メスのバッファローレザーで前足部のみノルヴェジェーゼ製法を採用した、ハーフノルヴェによるレースアップブーツ。独特の型押し模様、力強さとウエストのくびれ、小ぶりなヒールとの対比が大変美しい。¥280,000 Il Quadrifoglio
きっぷのいい男だ。話していて大変心地いいし、お客さんに好感をもたれる好青年である。いい意味で職人然としていない彼のオープンな雰囲気は、お堅い職人のイメージを見事に裏切ってくれる。
久内氏もまた、鈴木幸次氏と同じフィレンツェのロベルト・ウゴリーニのもとで4年間修業を積んだ。2011年に帰国し、神戸に友人たちと共同で構えた(正確にはイタリアに行く前に構えた)工房で、翌年からビスポーク1本で勝負している。
イタリアの血が流れている男の共通点なのか、24時間いつでもどこでもすべてが楽しそうだ。自慢は美人の奥様と、愛車のドゥカティ。ツーリングで仕事モードをリセットすると、さまざまなアイデアが湧いてくるという。
そんな氏の靴だが、上の写真を見てのとおり、発想までもがイキイキとしている。グラマラスなフォルムを、イタリアで買い付けてきたユニークな革が彩る。音楽教師である母親のバッハの楽譜をレーザーで刻印した革、なんてのもある。
肝心の腕のほうは、「1年を振り返るたびに腕が上がっているのが、嬉しくて仕方がない」と自身で分析するように、猛烈な勢いで実力をメキメキとつけている。そんな成長著しい彼と、腰を据えて今から付き合っていくのも粋な楽しみ方だ。やはりビスポークは作り手に共感し、好きな人の靴を履いているほうが楽しいし、満足感だって高くなるわけだから。
自分たちでリノベーションした趣ある工房左は奥様の夕夏さん。彼女は同じ工房で、革小物を手掛けている。
ATSUSHI KYUNAI / 久内淳史1979年、兵庫県宍粟市まれ。2006年、神戸モノ作り職人大学の同級生3名と神戸に工房を構えるも、2007年にイタリアに渡伊。4年間修業を積んだのち、帰国。2012年、元の工房に戻って本格始動。
苗字が「キュウナイ」だからブランド名をQで始まる“Quadrifoglio”(四つ葉のクローバー)にしたという。凄くいい名前なので結果オーライだ。
お店兼工房は、同級生の職人4名でシェアして“ノックスビスポーク”と名付けている。最初はボロボロだった戦後すぐの建物を、まず階段を作り直し、土壁だったのをコンパネにし、床もはがして電気の配線まで自分たちでやり、家具まで自分で作ってしまったという。
工具はやはり蚤の市でコツコツ揃えたものを愛用。
本記事は2015年1月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 02