GRIMOLDI'S WATCH COLLECTION
グリモルディ氏のウォッチ・コレクション
January 2016
RAKE TIMEは個人が収集した素晴しい時計コレクションの一端に触れる。
コレクションのオーナーは時計一筋の人生の後、現在はイタリア有数の
リゾートで悠々自適の引退生活を送るグリモルディ氏である。
text miki tanaka photography alessandro ottaviani
Anselmo Grimoldi / アンセルモ・グリモルディミラノ近郊のパデルナ・ダッダ生まれ。14歳の時から地元の時計職人のもとで修業を始め、1962年にミラノに工房を開き、その後事業を拡大。現在ミラノに4軒とイタリア有数のリゾート、ポルトフィーノに店を構える。また「GRIMOLDI」、「Va Bene」などのオリジナルの時計のラインは世界的に人気に。現在、事業は4人の子供たちに任せて、ポルトフィーノにて引退生活。
「すべての時計を平等に愛しているよ」 そのオリジナル時計が世界的にも有名な高級時計店「グリモルディ」。創業者、アンセルモ・グリモルディ氏は、実は時計に興味は全くなかった。この仕事を始めたのは“スカウト”されてのこと。
「当時働いていた食堂のお得意さんだった時計職人から『お前は見込みがありそうだからうちで働かないか?』と言われて時計屋で修業を始めたのです(微笑)」
70年代中盤ごろまでは腕時計より置時計の時代。今でも置時計に魅せられている氏は置時計コレクションも100個を超え、博物館級の珍しい時計も多数持っている。その後、80年代ごろから本格的な腕時計の時代が始まり、彼は当初から腕時計のコレクションも並行して始める。当時はミラノのドゥオモ近くの広場でマニアたちが週末に集まっては時計を見せ合ったり、交換したりしていたとか。
「珍しい時計にはやはり心が躍りますが、投資価値よりも自分がこだわるものを集めています。例えば私は昔からモータースポーツが好きなので、長年ホイヤーのコレクションをしています。商品価値はたいしたものではありませんが、タグ・グループに入る前の品ばかりでレアものも多く、複雑時計や永久時計と同様に大事です」
子供たちに事業は任せ、現在は有名リゾート、ポルトフィーノでの優雅な引退生活だが、時計愛は相変わらずだ。
トゥールビヨンを中心としたコレクション。手前の2本はトゥールビヨン発明の父であり、尊敬するブレゲのものなので特に大事にしているとか。奥は左からコルムのトゥールビヨン・スケレット。IWC ポルトギーゼ トゥールビヨン、ピンクゴールド製。パルミジャーニ フルリエのトゥールビヨン、プラチナ製。
コレクションにはパーペチュアル・カレンダー機能搭載の時計も多いが、中でもお気に入りを数本。左からブランパン・パーペチュアル、ピンクゴールド製。フランク ミューラー・トノー・パーペチュアル、ホワイトゴールド製。フランク ミューラー・クロノグラフ、イエローゴールド製。
40年代を中心としたアンティーク時計のコレクション。レザー製のケースにきちんと収納されている。ロレックスのオイスターを中心に、ヴァシュロン コンスタンタン、オメガ、オーデマ ピゲなどが並んでいる。
1. グリモルディ氏の時計コレクションのバリエーションは幅広い。パテック フィリップ社が同社の記念本の撮影のために氏の時計を借りに来るほどの価値のあるものから、約25個持っているホイヤーなどスポーツウォッチまで。ホイヤーのコレクションはタグ・グループに入る前のモノばかりのレアなもの。モータースポーツ好きのグリモルディのこだわりのコレクションだ。
2. 2007年にパテック フィリップが新工場のオープンを記念して作ったパテック フィリップ パゴダのリミテッドエディション。メンズ用にはイエローゴールド製1100本、ピンクゴールド製500本、ホワイトゴールド製250本、プラチナ製150本、レディス用にはイエローゴールド製500本、ピンクゴールド150本、ホワイトゴールド100本が作られたが、グリモルディ氏は全種類を揃えている。パテックフィリップ社の記念本制作の際には同社から依頼され、撮影に使われたとか。普段はこの写真の背景にある本にも掲載されている特製の木箱に入れて保管してある。
3. スポーティな時計のコレクションの中で、特にお気に入りの2本。右は60年代のロレックス・デイトナ。スモールダイアルの部分が茶色なのは非常に珍しい。左はオーデマ ピゲ ロイヤル オーク。1972年に同モデルが発表された際の栄えある初回版モデルで、これは製造4本目のもの。
4. 高級時計ブランドのなかで最も多いのはパテックフィリップ。左は1925年にパーペチュアルが登場した時の初回版モデルのうちの1本。初年度の製造本数は100本以下と言われる中の貴重な1本。中もパテック フィリップのパーペチュアル カレンダー。箱の中には調整のための金のキーが入っている。右は50年代のパテック フィリップ カラトラバ。珍しいステンレススチール製の1本。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 05