トッキーのラグジュアリー日記
Tocky's Luxury Escapes

THE RAKE 日本版 編集部員トッキーこと時田が出合った国内外のホテル、ダイニング、バーについて紹介します。

ASUKA Ⅱ with BLUE NOTE TOKYO

【乗船記】BLUE NOTE TOKYOと航く、飛鳥Ⅱの“ジャズ三昧”な2泊3日クルーズ

Sunday, April 20th, 2025

クルーズに乗るなら、“いま”がいい。幅広い年齢層がクルーズを楽しんでおり、2泊3日や3泊4日のショートクルーズが増えているのです。今回は、新造船のデビューを間近に控えている郵船クルーズが運航する「飛鳥」に乗ってきました。しかも乗船したのは、あの「BLUE NOTE TOKYO」とのコラボクルーズ。ジャズのコンサートやトークショーがそこかしこで開催される、贅沢な船旅となりました。

 

 

「飛鳥Ⅱ」は、総乗客数872名、約5万トンの日本籍最大級の客船。デッキ7にあるプロムナードデッキは、ぐるっと1周(1周は1マイル=440m)できるので、クルーズによっては「ウォーク・ア・マイル」というプログラムも実施されています。もちろん自由にデッキウォーキングを楽しむこともできます。

 

 

 

「仕事が落ち着いて時間ができたら、クルーズに乗ろう」と思っている皆様、2泊3日や3泊4日のショートクルーズが増えていることをご存じですか。

 

「まとまった時間がないと難しいだろうなぁ」といった漠然としたイメージを抱いている読者の皆様の思い込みを、この機会に一掃できたらとの思いを込めて今回は記事を書いてみます。

 

 私が乗船したのは「飛鳥Ⅱ」。BSで冠番組も持っているもはやクルーズ界のレジェンドともいえる「飛鳥Ⅱ」です。これまでクイーンエリザベスや三井オーシャンクルーズ、ガンツウの3つに乗船してきた経験があります(まだまだクルーズ初心者です)が、日本船籍の豪華客船に乗るのは今回が初めてでした(クイーンエリザベスと三井オーシャンクルーズは外国船籍で、ガンツウは日本船籍だけど19室のみという超エクスクルーシヴ)。

 

 期待に胸を膨らませて、「飛鳥Ⅱ」の母港でもある、乗船場所の横浜港大さん橋国際客船ターミナルへ。あいにくの曇天でしたが、その華麗な姿に期待は高まります。

 

 この時まで知らなかったのですが、この大さん橋ターミナルには、乗船1時間前に利用できる「アスカラウンジ」があります。ここは、上級客室カテゴリーである「Sロイヤルスイート」、「Aアスカスイート」のゲストおよびMy ASUKA CLUB プラチナ会員のみが利用できる場所です。まるで空港のようですよね。

 

 毎回感動するのが、乗船時の乗組員(船のスタッフ)たちの歓迎具合。溢れんばかりの笑顔で、海外のスタッフも丁寧な言葉遣いで迎えてくれます。

 

 客室に着いたら、まずは部屋にある船内新聞『アスカデイリー』をチェック。その日の出航時間や避難訓練の時間、さらにはドレスコードや夕食の時間、催し物、船内で開催されるすべての情報が記載されています。避難場所の確認を終えたら、気になる場所へ赴くのがいいでしょう。

 

 

こちらは映画なども上映される「ハリウッドシアター」。今回の乗船時は、BLUE NOTE TOKYOのアーカイブ映像の上映会や音符チャームイヤリング作り教室、トークショーが開催されていました。他にも畳の部屋で靴を脱いで囲碁や将棋ができる和室、カジノコーナーやダンスフロアもあります。

 

 

 

 ちなみに今回私が乗船させていただいたクルーズ名は「JAZZ ON ASUKA Ⅱ with BLUE NOTE TOKYO」。アルフレッド・ロドリゲスやエリック・ミヤシロをはじめとする総勢10名のミュージシャンたちによる、生演奏やトークショーなどがまるまる2日間船内の各所で催されていました。

 

 たとえば乗船直後の15時からウェルカムドリンクの提供が開始し、そのあと出港直前の16時45分からはセイルアウェイパーティ、17時からはサルテーション・デュオ、そしてその後18時15分と20時15分からはアルフレッド・ロドリゲス・トリオによるスペシャルステージなど、船内のいたるところでジャズの生演奏が繰り広げられていました。2日目もお昼頃から夜まで、イベントが目白押しでした。大きなコンサート会場と違って、どの場所もミュージシャンたちとの距離が非常に近く、むしろこちらが恐縮してしまうようなプライベート感で、ゲストは皆とても盛り上がっていました。

 

 しかも、もちろんミュージシャンたちも船内でともに時間を過ごしているわけで、ビュッフェを選んでいるとすぐ目の前に、つい先ほどまで見事な演奏をしていたピアニストがいたりして、そういった時も気軽に小話をしてくれて(みなさん迷惑なんかではなく、ぜひ話しかけてほしいとおっしゃっていましたよ!)、この上ない贅沢な時間となりました。オフ時間のスターたちと交流できるのも、このクルーズならではの楽しみ方なのです。

 

 

出港時の、ピアノとベースによる生演奏。ゲストのワクワク感が船内全体に漂っていました。

 

 

メインステージである「ギャラクシーラウンジ」で開催された、アルフレッド・ロドリゲス トリオによる、スペシャルステージ。客席はもちろん満席で、会場の一体感もすさまじく、観客は熱いスタンディングオベーションを送っていました。©︎Naoki Okuda

 

 

 

誰もが飛鳥クルーズの虜になる料理

 

「飛鳥Ⅱ」に乗るゲストが楽しみにしていることのひとつは、ここでの食事。モーニング、ランチとディナーで利用できる「フォーシーズン・ダイニングルーム」に、朝・昼・夜食と終日ブッフェを楽しめる「リドカフェ&リドガーデン」、ドリンクのテイクアウトができるカフェ「ザ・ビストロ」、クラシックな雰囲気漂うバー「マリナーズクラブ」、そして緑豊かなラウンジとイースクエア(仕事にも最適なハイチェアのカウンターを備えているほか、雑誌や購入可能な日本工芸品が置かれています)を併設した「パームコート」、そして船首に位置するラウンジ&バー「ビスタラウンジ」、そして寿司や和食を楽しめる「海彦」の全7つの多彩なカフェ&ダイニング、バーがあります。

 

 

「パームコート」は、たっぷりの緑が置かれたくつろげるスペース。大きな窓の外に広がる大海原をただただ眺めているだけで、心がリセットされるような、贅沢な空間でした。

 

 

 

 ちなみに、「フォーシーズンズ・ダイニングルーム」での夕食は2回制になっていますが、スイートに宿泊のゲストは、専用ダイニングの「ザ・ベール」にて好きなタイミングで夕食ができます。

 

 ということもありちょっと脱線しますが、THE RAKEの読者におすすめしたい客室は、最上ランクの「ロイヤルスイート」です。その理由としては、88㎡の広さがあり、外の景色を楽しみながら浸かれるゆったり大きなバスタブに、広々とした洗い場を備えていること。

 

 そして、女性用男性用のアメニティが完備していたり、たっぷり収納できるクローゼットがあったり、ダイニングテーブルや書斎もあり、客室内でも快適に過ごせる工夫が随所に施されています。室内のインテリアも高級感あふれる木材が基調になっていて、別邸で過ごしているかのような贅沢感も別格です。

 

 

4室限定の「ロイヤルスイート」。高級感漂う室内は、快適なプライベート時間を約束してくれます。エキストラベッドを利用することで、最大3名での利用も可能です。特定のダイニングや場所の事前予約サービス、無料ルームサービス、ウェルカムシャンパンなど、この部屋だけの特典も満載。

 

 

 

 話を元に戻すと、ダイニングやラウンジはそれぞれが、それぞれの魅力に溢れているので、すべてを紹介したいところなのですが、記事が長くなり過ぎてみなさんに読んでいただけなくなりそうなので(ごめんなさい)、私からは「フォーシーズン・ダイニングルーム」または「ザ・ベール」でいただけるディナーのハイライトと、「リドカフェ&リドガーデン」のブッフェで必ず食べていただきたいもの、そして「マリナーズクラブ」でのおすすめカクテルをご紹介したいと思います。

 

 

 

廃棄物ゼロに向けたシェフのこだわり

 

 今回は、ちょうど3月中旬ということもあり、春御膳と春の日ディナーが2日目に用意されていました。春の食材をふんだんに使った料理ばかりで、なかでも驚いたのは、ディナーのおいしさとその本格的な仕上がりでした。

 

 

 

 

 この日のメニューは、「雲丹と春にんじん トマトの雫」にはじまり、「グリーンアスパラガスの冷製スープ 生ハム添え」「ホタテのマリネ イクラと海ブドウ」、スープには「蛤と菜の花 新じゃがのスープ仕立て」、そしてシグニチャーサラダ「烏賊と彩野菜の菜園風」、メインには「黒毛和牛とホワイトアスパラガスのグリエ 飛鳥伝統のフォンドヴォー」、デザートには「コーヒーわらび餅とバニラアイスのパフェ」が用意されていました。

 

 なかでも印象に残っているのは、「雲丹と春にんじん トマトの雫」と「蛤と菜の花 新じゃがのスープ仕立て」。前者は春にんじんのムースに、昆布出汁とトマトウォーター(刻んだ完熟トマトに塩を当てて、ざるを入れて一晩(!)冷蔵庫で寝かせることで、浸透圧でトマトの透明な“雫”が完成)を合わせたもの。にんじんとウニも甘みが見事にマッチしていて、紫蘇の花や実と、トマトの爽やかな味わいと合わさり、ひと皿目にこれ以上最適な一品はないと思ったほどでした。

 

 後者は、一人前ずつ小さなココットで煮込んで仕上げられていることもあり、蛤の旨みがたっぷりと凝縮したスープでした。フランス産の発酵バターとレモンも添えられており、味わいの変化を楽しめるように工夫がされていました。長期間のクルーズでも一度たりとも同じメニューは出さないという料理長の職人魂が、ここでも光っていました。次乗ってもこの料理にありつけないと思うと悲しいくらい、特に感動した料理でした。

 

 

「雲丹と春にんじん トマトの雫」。

 

 

 

 また、クルーズによっては長期間海上にいることもあり、廃棄物ゼロに向けた取り組みが徹底されています。たとえば、ディナーで一品目のトッピングとして添えられていた穂紫蘇は、花の部分のみ提供され、茎の部分は煮出して他の料理に活用されたりと、食材を余すことなく使い切ることに重点が置かれています。

 

 しかも、船内を歩いていただくとわかると思いますが、デビューから30年以上経っている船なのに、どこにいても古さを感じることがありません。それは、船内にカーペンターたちが乗船し、家具や内装において傷や汚れを見つけたら、すぐに補修しているから。現在のようにサステナビリティが声高にアピールされるようになる前から、当たり前のようにそのような取り組みを行っていることに脱帽です。

 

 自然界への影響が最小限になるように、環境への配慮も徹底されていることが、「飛鳥Ⅱ」の人気を高めている理由のひとつと言ってもよいでしょう。

 

 

 

ブッフェで必食すべき品は?

 

「リドカフェ&リドガーデン」のブッフェも、そのラインナップの多さに誰もが驚くはず。毎日、日本食から洋食、日によってはエスニック料理や中国料理まで用意されており、今日は食べたいものないな、なんてことはないでしょう。

 

 こちらのブッフェで忘れてはならないのが、朝食時だけ楽しめる「あんぱん」。すべてのパンは船内での焼き立てなのですが、なかでもこのあんぱんが絶品でした。ぜひお試しください。

 

 船内には日本人クルーだけでなく、世界各国から集まった乗組員が働いています。なかでも「飛鳥Ⅱ」ではフィリピン乗組員が多いこともあり、朝食ブッフェにはフィリピンの名物パン「エンセマーダ」も並んでいました。

 

 

朝食ブッフェ時の「あんぱん」は要チェック!中身はこし餡です。

 

 

 

 軽食には、ミニハンバーガーがおすすめ。ハンバーガーと、そのハンバーガーにオリジナルキーマカレーをプラスしたもの、そしてフィッシュバーガーの全部で3種類あります。私はシンプルなハンバーガーを選びましたが、新鮮なトマトやレタスも入っており、美味しかったのは言うまでもなく。他のふたつもとても美味しそうでした。

 

 夜には「アスカバル」という名に変わり、いわゆる夜食が並びます。乗船時には、そばやうどんをはじめ、多彩なトッピングと共にお茶漬けも登場していました。生ハムやフルーツ、デザートも揃うため、小腹が空いたらぜひ覗いてみてください。

 

 

 

歴代の船長にまつわる15種のカクテル

 

 さまざまなアクティビティもあり、ダイニングもあり、欲張っているとなんだか「忙しい」と贅沢にもなってしまう「飛鳥Ⅱ」ですが、夜の時間もゲストを飽きさせません。英国を思わせるウッディな内装のバー「マリナーズバー」には、多彩なウイスキーやクラシックカクテルはもちろん、ここでしか飲めない、歴代船長の好みやイメージを形にしたオリジナルカクテルも充実しています。また、テーマクルーズごとに、そのクルーズでしか楽しめない一杯に出合えるのも船旅の醍醐味のひとつです。

 

 今回私がいただいたのは、「JAZZ ON ASUKAⅡwith BLUE NOTE TOKYO」のためだけに考えられたノンアルコールカクテル「A TEMPO〜MARCH〜」と、航海時の田口船長をイメージした、キャプテンが愛してやまないテキーラをベースにミントの香りとココナッツウォータですっきりと仕上げられた一杯。カウンターでバーテンダによって作られるそれは、店内の雰囲気も相まって、日常を忘れてしまうような一夜となりました。

 

 

 

 

 

大海原を見渡す解放的な露天風呂

 

 カクテルを楽しんだ後は、最上デッキに位置する大浴場「グランドスパ」へ足を運んでみました。ここには大きな湯船と水風呂、サウナ、そして露天風呂があります。夜は月明かりに照らされた幻想的で神秘的な景色を楽しむことができたし、朝は水平線いっぱいに広がる朝焼けを眺めていたら、地球の偉大さに涙が出そうになりました。

 

 

日中の露天風呂。目の前には空と海だけが広がります。

 

 

 

 だいぶ長くなってしまったので、この辺りで終わりにしようと思いますが(ごめんなさい)、船内には「AVEDA」初の洋上サロン&スパも備えています。ここでは、ヘアカットやネイルケア、ボディトリートメントを受けることができ、なかでも私のおすすめはヘッドスパです。

 

「ロイヤルスイート」に宿泊される場合は事前予約が可能ですが、他の客室の場合は、直接スパまで足を運んで予約してしまうのが確実だとか。船旅マスターに教えてもらった攻略法です(笑)。乗船日に予約がいっぱいになってしまうことも多いため、お早めにどうぞ。

 

 

「アスカ アヴェダ サロン&スパ」のヘッドスパ専用の個室。

 

 

 

 船旅気分になってきましたでしょうか。この夏に就航する「飛鳥Ⅲ」は、今回私が乗らせていただいたクルーズのように特定のテーマが設けられるというよりは、より自由な滞在スタイルの船になるみたいです(一人用の部屋も用意されるとか)。まずは、テーマ性があり、よりエンターテイメントを充実させたクルーズが多彩に展開されている「飛鳥Ⅱ」を、次のお休みに楽しんでみてはいかがでしょうか。新しい船を存分に楽しむためにも、自分の好みをぜひ見つけてみてください。

 

 

 

 

郵船クルーズ

TEL. 0570-666-154(クルーズデスク/10:30~17:00 ※土日祝を除く)

www.asukacruise.co.jp/

 

 

 

著者 トッキー(時田幸奈)/  Yukina Tokida

THE RAKE日本版のシニアエディター兼ウェブディレクター。国内外のラグジュアリーホテル、ダイニング、バーを中心に取材し、誌面およびオンラインで記事の執筆・編集を手がける。「トッキー」は、編集長からのニックネーム。