ANANTARA PALAZZO NAIADI ROME HOTEL
人生初のローマが教えてくれたこと。「アナンタラ・パラッツォ・ナイアディ・ローマ・ホテル」での4日間
Tuesday, August 19th, 2025
日本への進出も予定している「マイナー・ホテルズ」が手がけるラグジュアリーホテル「アナンタラ」。同ブランドが主催するクラシックカーの祭典が今年から始まるということで、その祭典を取材するためにローマへと向かったわけですが、のっけから予想外の展開に。ローマ屈指の歴史ある建物を改修して建てられた「アナンタラ・パラッツォ・ナイアディ・ローマ・ホテル」での滞在とともに、その時の記録をお届けさせてください。
鳥のさえずりと、遠くから響く鐘の音。ひんやりと乾いた空気がカーテンの隙間から忍び込み、頬をそっとなでます。時計を見ると、まだ6時前。長時間のフライトによる時差ぼけは否めませんが、この早起きも悪くありません。だって、ここはローマだから。
4月末、私は「アナンタラ・コンコルソ・ローマ」というクラシックカーのイベントを取材するため、ローマを訪れました。イベントの主催者は、タイを拠点とし、世界57カ国に640軒以上を展開するマイナー・ホテルズ傘下のラグジュアリーブランド「アナンタラ」。2030年には軽井沢に日本初進出が決まっている注目のホテルブランドです。
14時間の空の旅を経て、迎えの車でホテルへ向かいう途中、歴史ある建物がライトアップされ、石畳の街が見事に浮かび上がっていました。窓の外を眺めながら、「ああ、本当にローマに来たんだ」と胸がじんわり。ホテルに到着すると、迎えてくれたのは笑顔のドアマンたち。その瞬間、すでに私はこの街に恋をしていました。
ホテルのレセプション。モダンで洗練された空間が広がる。
チェックインを終えるころ、広報担当の女性と挨拶を交わしました。そして少し声を落として、「残念ですが…イベントは中止になってしまいました」とのこと(中止の理由にはあとで触れますが、イベントの初回開催はすでに来年への延期が決定しており、2026年4月16日から19日に開催されます)。英語だったせいもありますが、状況を理解するのに、少し時間がかかりました。もちろん残念ではありましたが、それ以上に胸の奥にワクワクが広がっていくのを感じました。だって、私は今、ローマにいるのですから。
今回の宿は「アナンタラ・パラッツォ・ナイアディ・ローマ・ホテル」。かつてローマ最大級の公共穀物倉庫として使われていた倉庫も備えている、何百年もの歴史を持つ建物を改装した格式あるホテルです。天井の装飾からエレベーターの細部に至るまで、この街が積み重ねてきた文化と美意識が息づいていました。
翌朝、空腹に誘われて向かったのはホテルのダイニング「ラ・フォンターナ」。エレベーターを降りると、笑顔のスタッフが「ボンジョルノ!」と迎えてくれました。白いカップに注がれたカプチーノからは、濃厚な香りがふわりと立ちのぼります。ブッフェ台には削りたてのパルミジャーノや生ハム、艶やかなサラミ、焼きたてのパンがずらり。プロセッコやフレッシュジュース、新鮮なフルーツやサラダの横には、なんとマグロの握りやカリフォルニアロールまで並んでいます。ここローマでも、日本の味がこんなに愛されていることに、少し誇らしい気持ちになりました。
朝食でしっかりとエネルギーをチャージしたあとは、スパでのマッサージとサウナで時差ボケの頭をスッキリさせて、ホテルの宿泊客向けアクティビティ「ヴェスパ・サイドカーツアー」へ。ローマでヴェスパ、しかもサイドカーに乗るなんて、まるで映画のワンシーンですよね。
石畳の上を軽やかに走り抜けると、爽やかな風が頬をなでます。ガイドの方がマイク越しに歴史や街のエピソードを話してくれるので、景色の奥行きがぐっと広がりました。スペイン広場やコロッセオといった名所が次々と現れ、そのたびに胸が高鳴ります。バイクの経験がなくても安心して楽しめる、特別な時間でした。
ホテルのスパにはサウナも完備。施術の前に体を温めるのがおすすめです。
夕暮れ時には、同じくマイナー・ホテルズが手がける「NH Collection Roma Fori Imperiali」というブティックホテルへ。ルーフトップからは、かの有名な「トラヤヌスの記念柱」が間近に見え、思わず息をのみました。ローマは本当に、街全体が博物館のようです。ディナーでは、上質なイタリアンに加え、地元の旬食材を使った料理が並び、ワインとのペアリングも絶妙。夜風と街の明かりに包まれながら、会話と美食に酔いしれました。
2日目の午前は、宿泊者のために用意されている「ティラミス&ピッツァツアー」へ。最初に訪れたのは「La Renella」。石窯から立ちのぼる香ばしい香りに包まれながら、焼きたてのローマンピッツァをひと口。カリッと薄い生地の上で、ジューシーなトマトをはじめ、薄くスライスされたズッキーニ、モルタデッラ、じゃがいもが乗った軽やかなピッツァはいくらでも食べられてしまいました。
続いて向かった「Panella – L’Arte del Pane」では、まったく異なるスタイルのローマンピッツァをいただきました。厚みがあってジューシーで、噛むたびに小麦の甘みがじんわりと広がっていきます。
次に訪れたのは、モダンで洗練されたティラミス専門店「Casa Manfredi」。ミニマルな店内で、ザクザクなビスケットのベースに、マスカルポーネムースと、コーヒー×マスカルポーネを合わせたムースの2種類をシェフが重ね、仕上げにカカオパウダーを一振り。ほろ苦さと甘さ、滑らかなクリームのバランスが絶妙でした。
写真の「SEEN by Olivier」があるルーフトップには、寿司カウンターやプールまであります。
夜はアナンタラ・パラッツォ・ナイアディ・ローマ・
そして翌日は、どうしても行きたい場所がありました。イベントが中止になった唯一の理由——ローマ教皇の逝去です。最後のお別れを告げるため、朝7時前にバチカンへ。荘厳なサン・ピエトロ大聖堂のなかでは、静けさの中にも温もりを感じました。この瞬間を、一生忘れないと思います。
旅の締めくくりは、ホテル内の星付きレストラン「INEO」でのディナーです。アミューズからデザートまで、ひと皿ごとに物語が紡がれていくようでした。なかでも印象的だったのは、シェフが母から受け継いだというパスタ。手作りパスタのマッケロンチーニを、シェフの母のレシピで作ったラグーと合わせた一品です。シンプルでありながらなぜだかほっこりする、記憶に残るおいしさでした。グラスを傾けながら、この数日間のローマでの出来事が、映画のように頭の中を巡っていきました。
レストラン「INEO」。
日本からはまだまだ遠いローマですが、やはりこの場所でしか体験できない風の匂い、空の色、街の音、人の温もりや料理、そして空間や建物は、SNSやインターネットでは到底感じられないものばかり。「いつかは」という言葉はそっと胸に閉まっておいて、次の休みこそぜひローマへ行ってみてはいかがでしょうか。
アナンタラ・パラッツォ・ナイアディ・ローマ・ホテル
Piazza della Repubblica, 48-49 Roma, Itália
TEL. +39-06-489381















