Sweets by Yayoi Tokyo × Ishinohana with Glenfiddich at The Bar, The Ritz-Carlton Tokyo
繊細なスイーツに芳醇なウイスキーカクテルをペアリング。グレンフィディックが示してくれた可能性
December 2025
先日、ザ・リッツ・カールトン東京の「ザ・バー」を舞台に、3種類のデザートとこの日のために作られたウイスキーカクテルのペアリングが披露された。互いに交わることのないような世界線のふたつが、ここまでのマリアージュを見せてくれるとは誰が想像しただろう。新たな可能性を秘めた世界へ、大きな一歩を踏み出したい。
text yukina tokida
カクテル「Whisky Sour」とスイーツ「Caramel Gelato」
キャラメルのフレーバーに合うフルーツとスパイスを加えてツイストした「ウイスキーサワー」は、グラスの淵に添えられた黒胡椒がピリッとしたアクセントを加え、パイナップルの甘酸味、アメリカンオーク樽由来の余韻がジェラートとの絶妙な味わいを演出。スイーツは、キャラメルのリッチなコクが、カクテルのキレのある酸味と調和。葉を模したラングドシャーの軽快な食感と、滑らかなジェラートとのコントラストも楽しい。
カクテルというと、ワインや日本酒のようにコース料理と合わせるのはなんだかハードルが高い気がするし、バランスを間違えるとカクテルの風味や味わいを最大限に楽しめない気もする。だが、それぞれが単体で完成されていながら、互いを合わせるとさらなる美味しさを引き出してくれる、そんなペアリングについ先日巡り合う機会に恵まれた。
今回のイベントの発案者は、ザ・リッツ・カールトン東京の「ザ・バー」を率いる和田健太郎氏。グレンフィディックの新たな魅力を、ふたりの世界チャンピオン、バーテンダーの石垣忍氏とパティシエの大塚陽介氏の感性を通して表現するという試みだ。
石垣氏は、渋谷の「Bar 石の華」のオーナーバーテンダーであり、世界大会での優勝経験を持つ、日本を代表するバーテンダーのひとり。一方の大塚氏もまた、三軒茶屋に店を構える「YAYOI TOKYO」のオーナーであり、洋菓子の国際コンクールで頂点に立った経歴を誇る。
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バーテンダーの石垣忍氏(左)とパティシエの大塚陽介氏(右)。
今回主役として用いられたのは、「グレンフィディック12年」「15年」、そして新たに登場した「16年」。それぞれの個性に寄り添うかたちで特製スイーツが考案され、そのスイーツを引き立てるような、これら3種のウイスキーを使った3つのペアリングカクテルがつくられた。楽しみ方は至ってシンプル。まずスイーツを楽しみ、そのままカクテルを口に運ぶ。スイーツが口に残っている状態でカクテルを堪能するのがポイントだと石垣氏が教えてくれた。
印象的だったのは、どのペアリングも決して“足し算”ではなかったこと。カクテルが前に出過ぎることも、スイーツが主張し過ぎることもない。むしろ、それぞれが一歩引くことで、グレンフィディックそのものの輪郭がよりくっきりと浮かび上がってくる。単体で味わったときとは、まったく異なる表情を見せる瞬間がそこにはあった。
カクテル「Rusty Nail」とスイーツ「Mousse au Montélimar」
グレンフィディック15年を使用し、花をキーワードにスコッチベースのラスティ・ネイルをツイストした一杯。蜂蜜の上品な甘味にエルダーフラワーのエキゾチックな香りがマッチ。スイーツはアルゼンチン産の蜂蜜をメインに使った一品。アプリコットのジュレやヌガー・モンテリマールをムースでしたてたものなど、複数の甘みや華やかさ、酸味といった味わいの層が重なり合う。
カクテル「Espresso Martini」とスイーツ「Poire」
グレンフィディック12年が持つ、洋梨、ココナッツ、オレンジの各フレーバーに相性のよいエスプレッソをペアリングし、通常はウォッカのベースに12年を使用。スイーツは、グレンフィディック12年の象徴的な香り「洋梨」がテーマ。伝統菓子のババロア「シャルロットポワール」をアップグレードし、ココナッツ、オレンジ、キャラメルの要素をプラス。レイヤーごとに味わいが変わる。
会場となった45階の「ザ・バー」は、東京の夜景を眼下に望む静かな空間。都会の喧騒から切り離されたこの場所で、変化する味わいに意識を集中させる。ペアリングという体験は、味覚だけでなく、時間の流れまでもゆるやかに変えていく気がした。
ウイスキーは、ただ飲むものではなく、どう体験するか、なにと合わせるかでその価値が広がっていくように思う。今回の試みは、その可能性を雄弁に物語っていた。グレンフィディックが示したのは、新しい飲み方というよりも、新しい向き合い方なのかもしれない。












