The new GLC
新しいライフスタイルが始まりそう
May 2023
存在感のあるフロントフェイスに対し、リアは水平基調のバンパー、ツーピース構造で内部に立体感のあるコンビネーションランプによりワイドですっきりとした印象となっている。空力性能も優秀でCd値は0.29(欧州参考値)となっている。※ 写真の仕様・装備は、日本仕様と異なります。
メルセデスは「Sensual Purity(官能的純粋)」をデザインの基本思想に掲げている。これを具体的に文字で説明するのはなかなか難しいのだけれど、エクステリアではアクセントラインなど人工的な表現を極力控え、面やラインが持つ抑揚や曲線などで奥深い表情をシンプルに作る、そんな感じである。GLCでそれが最もよくわかるのはサイドビューだろう。光の当たり具合によって変化する陰影を伴う立体感の表現は、このクルマの妖艶なプロポーションを際立たせている。
いっぽうで、後方に向かって緩やかに上がっていくサイドウインドウのラインは、前後のホイールハウスの膨らみとともにスポーティな雰囲気も醸し出している。また、前後のバンパーはエアインレットやクロームのトリムを効果的に使うことで、奥行き感を演出。平面的ではなく3次元的な表現手法が採り入れられている。全体的なシルエットは従来型と大きく変わらないのでGLCだとひと目でわかるのに、より彫刻的で官能的なスタイリングへと生まれ変わった。
室内に広がる光景はCクラスに似たもので、機能性とラグジュアリーな質感をうまく融合させている。ダッシュボードにはリアルウッドのインテリアトリムを採用。標準仕様では光沢のあるブラックの塗装が施されたアッシュが使われている。アッシュはいわゆる「タモ材」とも呼ばれる広葉樹を指す場合が多く、耐久性や耐衝撃性に強く家具や野球のバットなどにも用いられる木材だが、木目がはっきりと見えることも特徴のひとつ。この他にも、オプションで2種類のリアルウッドのトリムが用意されており、ラグジュアリーで上質な室内空間を演出している。
ダッシュボードに置かれた11.9インチのタッチ式ディスプレイはCクラスと同様、よく見るとドライバー側に6度傾けられている。この6度は、ドライバーの視認性の向上や助手席からの操作性など、さまざまな要件を満たす最良の角度だったとエンジニアから伺った。DYNAMIC SELECTに新たに加えられた「OFFROAD」モードを選ぶと、このディスプレイに車体の姿勢、前輪の操舵角(後輪操舵システム装着車は後輪の操舵角も)などが表示され、オフロード走行に関するすべての機能をひとつの画面で網羅できるようになっている。
昨年参加した国際試乗会では特設のオフロードコースが試乗ルートに含まれていた。これがかなり本格的で、もし自分がドライブ中に出くわしたら「これは無理」とさっさと引き返してしまうくらいの急勾配や荒れた路面だった。ところがGLCはそこを難なく走破したのである。世の中にはオフロード走行を想定していないSUVも少なくないけれど、GLCはその端正なスタイリングからは想像できないレベルの高いオフロード走破性も備えているのである。
上質感と機能性を両立させた室内は、最近のメルセデスに共通するデザインランゲージに則っている。「トランスペアレントボンネット」は、OFFROADモードを選ぶとセンターディスプレイにフロント下の路面の映像を仮想的に映し出す機能で、路面状況をいち早く確認することができる。日本で販売されているSUVとしては初めて(2023年2月時点。自社調べ(メーカーオプションとして))ARナビゲーションがオプションとして選べるようになった。もちろん、アクティブステアリングアシストを含む最新の安全運転支援システムも完備する。※写真の仕様・装備は、日本仕様と異なります。
日本仕様のパワートレインは2Lの直列4気筒ディーゼルターボに9速ATを組み合わせたGLC 220 d 4MATICのみ。エンジンとトランスミッションの間にモーターを組み込んだISG仕様となる。従来型にも2Lのディーゼルターボがあったが、実はストローク量を延長して排気量が1950ccから1992ccへと増えた改良型のユニットである。197PS/440N・mは日本で扱うには余りあるパワーで、力不足を感じる局面はまったくない。
そして何より、室内にいる限りではこれがディーゼルだと感じる音や振動もほとんど感じられないのである。アクセルペダルの動きに対するレスポンスもよく、レブリミットまで間断なくスムーズに吹け上がってなんとも気持ちがいい。運転していてエンジンが呼吸している様を実感できるのは、内燃機の永遠の魅力でもあると再認識した。
足周りはAGILITY CONTROLサスペンションが標準で、ばね下の重さを感じさせない秀逸な乗り心地を提供してくれる。もし車高調整機能が必要であれば、オプションでAIRMATICサスペンションも選択可能だ。そもそもGLCは、ボディやシャシーは剛性感が高く体幹がしっかりしているので、前後のサスペンションがよく動いて本来の仕事をまっとうできている。サスペンションがよく動けば、当然のことながら優れたハンドリングも実現する。車高や重心の高さが気にならない安定感のある旋回特性は、セダンのCクラスと比較してもほとんど遜色ない。ステアリングレスポンスがよく、ドライバーの思い通りに向きを変えてくれるから、クルマとの一体感も感じられて運転の楽しさが満喫できる。
新型GLCの魅力は麗しいスタイリングにもあるけれど、決して見た目だけでなく、走る曲がる止まるの基本性能をSUVでありながら高い次元で成立させている。こうした性能による裏付けこそが、メルセデスらしいSUVの最大の魅力であると思っている。
メルセデス・コール Tel.0120-190-610