The Macallan Horizon
ザ・マッカランとベントレーの革新の結晶「ザ・マッカラン ホライズン」とは?
October 2024
今年、創業200周年を迎える「ザ・マッカラン」が、英国を代表する高級自動車メーカー「ベントレーモーターズ」とのコラボレーションによって「ザ・マッカラン ホライズン」を発表した。韓国・ソウルで開催された、「ザ・マッカラン ホライズン」のお披露目イベントのレポートとともに、両ブランドの栄光を凝縮したこの特別なウイスキーの魅力を詳しくご紹介する。
text aya hasegawa
世界に名を轟かせるウイスキーブランド「ザ・マッカラン」が今年創業200周年を迎える。スコットランド・ハイランド地区の北東部スペイサイドで農業を営んでいたアレクサンダー・リード氏は、ハイランド地区において、グレンリベット蒸溜所に続き2番目に「蒸溜ライセンス」を取得。1824年、合法的に蒸溜が行える政府登録蒸溜所として発足した。
それから200年目となる2024年、世界中でさまざまなイベントやアニバーサリーを祝うアイテムの発売が企画されている。たとえば、2024年6月、世界初となるザ・マッカランの旗艦店として、香港のセントラルに「ザ・マッカラン・ハウス」がオープンした。3フロア計557㎡のからなる体験型ショップで、スコットランドのザ・マッカラン蒸溜所に続く膨大なコレクションも有している。
今年6月に香港のセントラルにオープンした「ザ・マッカラン・ハウス」。
ザ・マッカランとベントレーモーターズのコラボレーションも話題を呼んだ。その両者がタッグを組み誕生させたのが、シングルモルトウイスキー「ザ・マッカラン ホライズン」である。とにかくビジュアルのインパクトが絶大だ。一見、とてもウイスキーのルックスには見えない。ウイスキーのボトルは180度のひねりを加えたスタンドの中に収められている。これは幻想的かつ近未来的なベントレーの高級車の構造と、マッカランの長い歴史と革新性を体現したものだ。ちなみにお値段は約1000万円也。残念ながら、現時点では日本での購入はできないが、そう言われると余計に実物を見たくなる、あわよくば、一口でいいから飲んでみたくなる。
水平に陳列できるようにデザインされたシングルモルトウイスキー「ザ・ マッカラン ホライズン」。ウイスキーメーカーが、シェリーで熟成させた6種類の樽から選んでブレンドしているため、ザ・マッカランのほかの多くのウイスキーとは異なり、熟成年数は明記されていない。アルコール度数は46.6パーセント。
ウイスキー本体は、厳選された6つのファーストフィルのシェリー樽で熟成した原酒で構成されている。ブレンドを手がけたのは、マッカラン初の女性マスター ウイスキー メーカーであるカースティン・キャンベル氏。巧みにブレンドされたそれぞれの樽の風味が、「ザ・マッカラン ホライズン」という未知なるウイスキーを作り上げた。
──の、飲みたい。いや、飲めなくても一度でいいからお目にかかりたいと思っていたところ、韓国での発売が決まり、そのローンチイベントを取材する機会を得た。一生の運を使い果たしてしまったのではないかという不安にさいなまれながら、筆者は韓国に飛んだ。
「ザ・マッカラン ホライズン」の、アジア地区では初の発売を祝うイベントは、2022年にソウルにオープンした、ベントレー・タワーで行われた。まずは、「ザ・マッカラン」を使ったカクテルで喉を潤しながら、「ザ・マッカラン ホライズン」のコンセプトを紹介する展示を見る。
スコットランド・スペイサイド地区にあるザ・マッカランの蒸溜所には、ザ・マッカランの個性と豊かな精神の基盤となる「6本の柱(The Six Pillars)」(ザ・マッカランのシンボルでもある1700年建造のイースターエルキーハウス、スペイサイド最小のポットスチル(蒸溜釜)、16%のファイネストカット、自社管理のシェリー樽での熟成、ナチュラルカラー(無着色)へのこだわり、職人技)が刻まれた記念碑がある。この6という数に敬意を表し、「ザ・マッカラン ホライズン」には、ザ・マッカランとベントレーモーターズの革新的なパートナーシップに不可欠な6つの素材が盛り込まれているのだ。会場には、その6つの素材が展示される「マテリアルルーム」が設置されていた。
ディナーの前に案内してもらったマテリアルルーム。6つの素材がケースの中に収められていた。
ひとつ目は、両社に共通する素材であるガラス。「ザ・マッカラン ホライズン」では、自動車のように水平に陳列できるようにユニークなガラス容器を特注している。ふたつ目は、ベントレーの彫刻的なボディワークに使用されている素材へのリスペクトとして、ガラスを包むアルミニウムのリボンがピックアップされていた。3つ目は、熟練の技で栗色に仕上げられたローカーボンレザーだ。希少なウイスキーを保護する役割を果たす。
4つ目はその周囲を囲む銅製のフレーム。「ザ・マッカラン ホライズン」には、リサイクル銅も積極的に使用されており、ザ・マッカランの新蒸留所が公開された2019年以前に蒸留所で使用されていた銅も含まれている。5つ目の素材は、クロージャーに使用されるオーク材の象嵌(ぞうがん・木材や陶磁器などに金属を埋め込む技法のこと)である。今回のウイスキー熟成に使用される6つの樽のうちのひとつから作られており、ベントレードライブダイナミックコントロールの回転ダイヤルの美学からインスピレーションを得ている。6つ目は、「ザ・マッカラン ホライズン」の洗練されたシングルモルト・スコッチウイスキー本体そのものだ。
「ザ・マッカラン ホライズン」についての資料には目を通していたが、展示を見て、説明を受けると、「早く実物を見たいという気持ち」が高まり、俄然前のめりになる。
しばらくしてディナー会場へと案内された。ディナーは、今回の6つのキーワードをテーマにした、この日限りの6コース料理だった。たとえば、前菜は“アルミニウム”に入ったフラットフィッシュのパテ。トップにはキャビアが飾られていた。リゾットは、韓国語で“レザー”の名を持つ野菜と豚の首の肉を使ったもの、メインは“ウイスキー”ソースのリブロース。これらに合わせるのは、もちろん、「ザ・マッカラン」。ダブルカスクの15年と18年、さらにシェリーオークの25年が用意されていた。
お披露目のイベントでは、6つのマテリアルをテーマにしたコース料理がふるまわれた。
「ザ・マッカラン ホライズン」は、そのディナーの途中でお披露目された。写真で見て予想はしていたが、圧倒的な存在感だ。ショールームに納品されたばかりの高級車のように、威風堂々と存在している。
そして、ディナーが終盤に差し掛かったタイミングで、この日のゲストに、「ザ・マッカラン ホライズン」がふるまわれることが告げられると、すでに何杯かの「ザ・マッカラン」でほろ酔いになっているゲストたちから大きな歓声が挙がった。
パトリシア、通称トリッシュ。香港のザ・マッカランで個人のクライアントを担当している。「今回のコラボは、『サステナブルでありたい』という、ザ・マッカランとベントレーの思いを実践したすばらしいコラボレーション。両者だからこそなしえたことだと思っています」。
右から、ザ・マッカランをはじめ、ハイランド・パークなどスコットランドを代表するスコッチウイスキーを持つスピリッツメーカーであるエドリントン社の北アジア地域マネージングディレクター、マーティン・ジェイム氏、韓国におけるザ・マッカランの正規輸入販売元であるD&Pスピリッツの創設者、ノ・ドンギュ氏、この日、司会を務めたザ・マッカラン韓国のアンバサダー、ライアン・リー氏。
イベントの最後に配られた「ザ・ マッカラン ホライズン」。スペイサイドのウイスキーの特徴でもあるエレガントで滑らかな口当たりの後、風味豊かなアルコールの刺激が続く(筆者撮影)。
テイスティンググラスを受け渡された時、筆者の手は少し震えていたかもしれない。価格の大部分を占めるのは外装だと理解はしているが、それにしても、一口いくらいするのだろうか。すぐに口に運びたいところだが、まずは香りを確かめることにする。たしかに、高級なレザーの香りが漂う。外装同様、ウイスキー然としていない、もちろんいい意味で。甘美さをも併せ持つレザーの芳香は、しばらくの間、口内でエレガントな余韻を残した。この長く続くフィニッシュは、両者のともに豊かな歴史と、時代を超越した創造性とデザインを反映しているのかもしれない。これまでの「ザ・マッカラン」にはない、デーツやチェリーなどリッチ感のあるドライフルーツとスパイスの風味、さらにチョコレートを感じさせる味わいにも驚かされた。
そして、ザ・マッカランとベントレーがタッグを組み、繊細に作り上げた歴史を内包しつつ、未来を見据えた新たな世界観に心が弾んだ。いったいどんな人がどんな時に飲むのだろう。購入した人は、これをどんな風に飾るのだろう、なんて想像を膨らませながらグラスをちびちびやっているうちに、ソウルの夜は更けていくのであった。
なお、「ザ・マッカラン ホライズン」は、前述のとおり、2024年10月現在日本では販売を行っていないが、ザ・マッカラン エステートブティック、一部の正規販売店および免税店などで購入できる。
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