SCABAL
スキャバル賢者だからこそ語れる私だけが知るスキャバルの魅力
November 2023
photography setuso sugiyama
(左)楠本大仁氏 麻布テーラー1984年生まれ。98年から2009年までをイギリスで過ごし、セントラル・セント・マーチンズのメンズデザイン科を卒業。大学時代からサヴィル・ロウで学び、帰国後はテーラーに。現在は麻布テーラーのトップライン、“ 麻布テーラー クレスト”のマネージャーを務めている。
(右)本澤伸道氏 スキャバルジャパン生地畑ほぼひと筋、35年以上のキャリアを誇る、筋金入りの生地のスペシャリスト。2016年よりスキャバルジャパン。この日は、スキャバルの「サヴィル・ロウ」で仕立てたスーツを着用。ラグジュアリーで繊細な生地よりも、実用的でバランスのとれた長く着られる生地を好む。
楠本 スキャバルとは縁があるというか、ロンドンでの大学時代にテーラーで学び始めた際、初めて頼まれた仕事がサヴィル・ロウにあるスキャバルの店に行って、生地を受け取ってくることだったんです。そこに足を踏み入れること自体が感動でしたので、その生地が「クラシックス」だったことは、今でもはっきり覚えています。そのときはまだ知る由もなかったのですが、スキャバルの生地がサヴィル・ロウのテーラーの間でいかに愛されている存在なのか、その後キャリアを積み重ねていくなかで、よくわかりました。そんなこともあってスキャバルに対する思い入れは人一倍強いんです。「クラシックス」は今でも変わらず、スキャバルの中で最も好きな生地コレクションになります。
本澤 「クラシックス」は私が生地業界に関わり始めた35年前から既に生地バンチとして存在していた、正確には1960年代からずっと続いている、スキャバルを代表するマスターピースファブリックなんです。50番手のしっかりした糸で織り上げられた経緯双糸の生地で、オーセンティックな色柄ばかりを揃えたコレクションですので、いつの時代も安心感があるとでもいうのでしょうか。派手さがなく、飽きることなく長く着ていただけて、非常に仕立て映えがする生地となっています。ちなみに楠本さんはスキャバルに対してどういったイメージをお持ちでしょうか?
楠本 そうですね。「クラシックス」のような大定番の生地がある一方で、圧倒的な個性・輝きを放つ唯一無二の生地を揃えているところがスキャバルの魅力だと思います。それは、デザイン面においてもクオリティ面においても両方にいえることです。スーパー200’sを超えるようなヴェリーレアウールを使用した「サミット」や、ウールにダイヤモンドをちりばめた「ダイヤモンドチップ」、同じように鉱石をちりばめた「ラピスラズリ」といった超高級生地のコレクションなどは、他ではまず見られない生地ですよね。お客様との会話の中で、そういった生地コレクションがある旨をお話ししますと、大変興味をもっていただけます。究極のラグジュアリーファブリックを探されているお客様には、ひとつの選択肢としてオススメしたいですよね。
スキャバルは非常にバリエーション豊富なバンチコレクションを揃え、毎シーズン約5000種類もの生地が常に流通しているという。
THE RAKE 相当高価になりますが、本当に究極のラグジュアリーファブリックを求めている方には、「ダイヤモンドチップ」のような生地は候補になりますよね。このクラスの生地になると、相当神経を使って織り上げているでしょうから、究極のラグジュアリー生地であってもクオリティ面ではかえって安定しているといった話はよく聞きます(笑)。
本澤 なるほど、そうかもしれませんね(笑)。ところで、今でこそどの生地メーカーも揃えているバンチブックを1950年に世界で初めて考案し、流通に革命をもたらしたのはスキャバルなんです。ウールに初めてスーパー表記をしたのもスキャバルです。歴史を振り返るとエポックメイキングな事例があるんですよね。
楠本 当店にはスキャバルの生地でしかスーツをお仕立てにならないお客様がいらして、その方に毎シーズン、こだわりの生地をご提案するのは私の密かな楽しみでもあります。長年スーツを仕立てられていてオーダーを熟知されているお客様にも新鮮に思っていただける生地がスキャバルにはたくさんあり、それはクオリティにおいてだけでなく、デザインにおいてもいえることです。
本澤 私も長年、生地業界に携わってきましたが、おっしゃる通り、まさにそこがスキャバルの強みだと思います。
楠本氏オススメのスーパー140’s「ロンドナー」。シティのビジネスマンをイメージした、洗練されながら個性溢れる生地を揃えたコレクションだ。
楠本 さらにいうと、例えば同じスーパー100’sでも、スキャバルの生地は他メーカーと比べて1ランククオリティが高いのではないかな、と。これはさまざまなメーカーの生地に触れてきたからこそいえることです。そういったこともあってでしょうか、長年服を仕立てられているお客様は、スキャバルに対して絶対的な信頼を置いていますよね。高品質で、他にはない生地が揃っている、と。
本澤 ありがとうございます。先ほどの“スーパー”の話ですが、スーパー100’sだったら、一般的にはここからここまでの太さの原毛というのが決まっていますが、そこの基準を他社よりも厳しくしているのは確かです。そういったこともあって、スーパー表記のない生地であっても、スキャバルでは非常に人気があります。個人的にオススメしたいのは、スーパーファインウールの「サヴィル・ロウ」あたりが日常使いできるスーツという意味で、使い勝手がとてもいいのでは、と思っています。
楠本 当店では経営者や企業の重役のお客様からはもちろん、医者や大学教授といった職業の方からも学会や講演会といった場で着られるスーツを仕立てたいとご相談を受けることが多々あります。そういった方には、スーパー140’sの「ロンドナー」などを非常にバランスの取れた素晴らしい生地としてオススメしています。私も自分のフォーマルなスーツはスキャバルの生地で仕立てましたが、ここぞの一着を仕立てたいとき、スキャバルの生地は最適な選択肢になります。一方で、若い世代にスキャバルの素晴らしさを知っていただきたい気持ちもあります。先ほどお話ししたスーパー100’sの「ロイヤル」などは、デザインや色柄のバリエーションが豊富で個性が際立っており、またその数値以上に上質さを感じていただけるはずです。スキャバルに少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ当店でご覧ください。
左:CLASSICS。右:LONDONER。
ともにスキャバルを代表するマスターピース 楠本氏がオススメするのは、スキャバルを代表するふたつの生地「クラシックス」と「ロンドナー」。サヴィル・ロウのテーラー御用達の「クラシックス」は50番手の太い糸で織り上げた経緯双糸による打ち込みのしっかりした生地で、ウエイトは360g/m。スーパー140’sの原毛で織り上げられた250g/mの「ロンドナー」は、その名の通りロンドンの都会的なビジネスマンを意識したコレクションで、ベーシックな無地からスキャバルらしいヴィンテージ調のスパイスの利いたものまで、幅広いデザインが揃っている。
左:SAVILE ROW。右:ETON。
実用性と品質のバランスで選んだ2点超名門イートン校から名前を取った「イートン」は、都会の紳士をイメージしてデザインされた、スーパー130’sの生地コレクション。280g/mで、3シーズン着用可能だ。日常に着るスーツに向いた、バランスのよさが魅力だという。「サヴィル・ロウ」は、スキャバルがサヴィル・ロウに店を構えてから50周年を記念して2022年に登場したアニヴァーサリー・バンチ。310g/mで、過去のアーカイブから選りすぐりのデザインを復刻したものだ。ブルーとグレーを中心に、変化に富んだコレクションが揃っている。
お問い合わせ先
スキャバルジャパン TEL.06-6232-2755