Park Hyatt Tokyo × Alain Ducasse

パーク ハイアット 東京×アラン・デュカス、深化するフレンチブラッセリー

October 2025

世界で3番目、アジアで初となるパーク ハイアットとして1994年に誕生して以来、国内外のゲストを魅了し続けてきた「パーク ハイアット 東京」が全館改修プロジェクトを終え、今冬、12月9日にリニューアルオープンを迎える。これを機に、フランス料理界を牽引する巨匠アラン・デュカス氏とパートナーシップを組み、長きにわたり愛されてきたレストランを「ジランドール by アラン デュカス」へと深化。フランス料理の伝統はそのままに日本の感性と食材を織り交ぜた、より現代的で研ぎ澄まされたブラッセリーに生まれ変わり新たな歴史を刻み始める。来日したアラン・デュカス氏に、新レストランへの意気込みを訊いた。

 

 

text chiharu honjo

 

 


Alain Ducasse/アラン・デュカス
1956年フランス・ランド地方に生まれる。16歳で料理の世界に入り、ミッシェル・ゲラール、ガストン・ルノートル、ロジェ・ベルジェなど著名なシェフの店で研鑽を積む。1987年、モナコにある「オテル・ド・パリ」内のレストラン「ル・ルイ・キャーンズ」の総料理長に就任後、1990年にホテル内レストランとして史上初の3ツ星を獲得。2005年、自身のもつ3つのレストランが同時にミシュランの3ツ星を獲得した史上初のシェフに。フードサービスおよびホスピタリティ業界に対する独自のビジョンを確立し、1999年に創設した「デュカス・パリ」に集約。最高基準のマーケットスキルを持つ次世代トップクラスの料理人の育成にも力を注いでおり、国際的な教育機関「エコール・デュカス」を運営している。

 

 

 

 世界中を飛び回り傘下の事業で辣腕を振るうアラン・デュカス氏。時代の潮流に合わせて同レストランを新たなフレンチブラッセリ―にするのは、双方自然な流れだったという。

 

 

伝統とモダニティの架け橋

 

「パーク ハイアット 東京の歴史を象徴するようなこのレストランで思い描いているのは、コンテンポラリーなフレンチガストロノミー。朝食、ランチ、ディナーと時間帯をわけて常にメニューを提供できる、多彩なフランス料理を楽しめる場所にしたいと思っています。私が考えるコンテンポラリーフレンチは、フランス料理のDNAを忘れない料理。そこに、今求められているモダニティのエッセンスを加えます。フランス人も日本人も四季をこよなく愛していますから、旬の恵みを尊重した料理をお届けしたいです」

 

「食材はなるべく地域の食材を使うことをモットーにしています。その土地に美味しいものがあるのに、わざわざ輸入する必要はない。輸送に伴うエネルギーを減少させることができるので環境にも優しいです。でもフランス料理ですから、時にはフランスの材料をほどよく加えながら、日本のエッセンスや自然の恵みがもたらすものすべてを活かしていきます」

 

「私たちのミッションは、世界中にいる美食家の方々を満足させること。このホテルが培ってきた歴史を大切にしながら“フランス料理の伝統とモダニティの架け橋”になる革新的な料理を作っていきたいと考えています」

 

 


左:「ジランドール by アラン デュカス」料理長 堤耕次郎氏。右:アラン・デュカス氏。

 

 

 

 インテリアデザインを手掛けたのは、パリを拠点に数々の輝かしい受賞歴をもつ建築家デュオの事務所「ジュアン マンク」。アイコニックな壁面の鏡やモノクロコラージュはそのままに、ぬくもりを感じるエレガントな木材とベルベット素材でパリの邸宅のような心地よさを醸している。中央には大理石とブラックウォールナットで仕上げられたカウンターが新たに設置され、空間に華やぎを添えていた。

 

 

妥協なく追求することの意義

 

「ジュアン マンクを率いるパトリック ジュアン氏とは長年仕事をしていますが、彼らのプロダクトは私のお気に入りです。今回のデザインはクラシックとモダンの絶妙な調和が素晴らしい。パーク ハイアット 東京が彼らを起用したのは素晴らしい選択だったと思います」とデュカス氏は続ける。

 

「新たなレストランを立ち上げる時、料理はもちろんインテリアやテーブル、アート、食器、カトラリー、メニューの紙質や書体まで、すべてのものを選び抜いています。なぜなら、物理的な場所としての空間だけではなく唯一無二の時を過ごす特別な空間を生み出すためには、そういった細かな美意識を集積することが必要だからです」

 

「そして、マネジメントも重要です。人のキャスティング、制服、すべてにおいて妥協しません。オープニングの日には、料理長である堤シェフはもちろんのこと、パリのアラン・デュカスで15年以上仕事をしていた私の右腕であるシェフやパティシエ、フロアマネージャー、すべてのスタッフが一丸となるチームを編成し、すべての点において様々な配慮ができるようにします」

 

 同レストランの料理長を務めるのは長年ジランドールの厨房を任されてきた堤耕次郎氏。今春、アラン・デュカス氏率いるパリのレストランで7週間研鑽を積んだ堤シェフは次のように語った。

 

「パリにはアラン・デュカス氏のレストランが9つあるのですが、それぞれに確固たるコンセプトがあり、同じところはひとつもありません。「ジランドール by アラン デュカス」も、料理はもちろん、すべての要素にこだわり、特別な個性が光るレストランとなるでしょう」

 

「私たちが目指しているのは、ここぞという時のみに行くようなレストランではなく、友人や家族と『今日はフランス料理が食べたいからジランドール by アラン デュカスへ行こうか』と言っていただけるようなファインフレンチブラッセリー。お客様が入店してからお帰りになるまで温かみのある会話と心のこもったサービスでもてなし、食事体験そのものでもパリのエスプリを感じていただける雰囲気にしたいです」

 

 

 

 

 

「飽くなき好奇心が私を駆り立てる」

 

 世界9か国に30以上のレストラン、原材料から専門工房で手作りするチョコレートやアイスクリーム、カフェ、ビスキュイ、そして教育機関から出版まで多角的に事業を展開するデュカス氏に今後の展望について伺った。

 

「アイデアは際限なく湧いてくるのですが、難しいのはそれを実現することです。チョコレートづくりを学んだのは若い頃でしたが、実際に自分のチョコレートを創り始めたのは、その40年後。世界一と言える最高のボンボンショコラを作るためにチョコレートの素材であるクーベルチュールを作ることから着手し、ショップのオープンまで実に3年の年月をかけました。他も同様に納得がいくまで時間と手間をかけて、ひとつひとつ実現してきたのです。次はマカロンづくりに挑戦したいですね」

 

 どんなときにアイデアが浮かぶのか尋ねると、世界中を移動しながら様々な人や自然からインスピレーションを得ているという。

 

「先日もイタリア・ウンブリア州で出会った人が作っている、世界で一番美しい革に出合いました。2人兄弟で営んでいるのですが、ひとりが職人で、もう一人が営業という最高のコンビネーションの兄弟です。素晴らしい出来栄えだったのでレストランのメニューのカバーに使おうかと。これから色や形もチェックします」

 

「いつも私を駆り立てるのは、“見たい、聞きたい、出会いたい”という好奇心です。その好奇心を持続する秘訣は、美しくて美味しいものを食べることにほかならない」と語る。最後に自身を突き動かす原動力は何かと問うと“私はエネルギーの引き出しを持っている”というウィットに富む一面も見せてくれた。一切の妥協を許さず常に世界一のクオリティを求め続ける仕事人の勢いは、とどまるところを知らない。

 

 

 

パーク ハイアット 東京

新宿区西新宿3-7-1-2

TEL 03 5322 1234

www.hyatt.com/park-hyatt/ja-JP/tyoph-park-hyatt-tokyo

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