Park Hyatt Tokyo Reopens — A New Chapter Begins

パーク ハイアット 東京がついに再始動。19カ月の休息期間を経て、つぎの30年へ

December 2025

2025年、国内外のホテルファンが最も心待ちにしていた出来事のひとつといえば、パーク ハイアット 東京のリニューアルオープンだろう。1994年の開業以来、東京を象徴する存在として歩んできたこのホテルが、開業後初となる大規模改装を経て、2025年12月9日、再びその扉を開いた。

 

 

text yukina tokida

 

 

Park Hyatt Tokyo, by Jouin Manku ©Yongjoon Choi

 

 

 

 1994年7月9日、新宿に開業したパーク ハイアット 東京。新御三家として鮮烈なデビューを果たしたこのホテルが、30年という時間を経たいまも東京のシンボリックな存在として語られてきた背景には、映画『ロスト・イン・トランスレーション』の影響も少なからずあるだろう。

 

 この作品について少しだけ述べるとすると、淡くて切ない物語であることは確かだが、もっとも、この映画に明確な答えやメッセージがあったのかと問われれば、きっとそれは人それぞれ。当時の東京という都市の空気感や、外国人の視点から見た日本人の特徴が、ある程度的確に捉えられていたことは確かだ。

 

 それに加えて、映画の舞台としてここまで人々の脳裏に焼き付いているホテルは、他にないのではないだろうか。あらゆる時代にあらゆる場所に生きていたとしても、共通言語のように記憶されている唯一無二の存在。そんな空間が開業以来初となる大規模なリニューアルをすると聞いて、驚いたのは私だけではないはず。

 

 あの思い出の空間はどうなってしまうんだろう、とちょっとした不安を抱きながら、待ちわびた1年半。長いようで、意外なほどあっという間だったが、ついに2025年12月9日、装いを新たに再びその扉を開いた。

 

 

 

 

 今回のリニューアルでパーク ハイアット 東京が目指したのは、単なる刷新ではない。次の30年を見据えること。

 

「パーク ハイアット 東京における私たちのアプローチは、“何を変えるべきか”を問うのではなく、“時間がすでに語っていることに耳を傾ける”ことでした。手を触れずに残すべきもの、より引き立てるべきもの、そして柔らかく整えるべきもの──すべては、この場所が持つ呼吸と静けさを尊重するためです。年月がホテルに与えた美しい成熟、その優雅さに心を動かされます」と語るデザインを手がけたパリに拠点を置くデザインスタジオ「ジュアン・マンク」のパトリック ジュアン氏の思いは、館内の随所に表れている。

 

 

Park Hyatt Tokyo, by Jouin Manku ©Yongjoon Choi

 

 

Park Hyatt Tokyo, by Jouin Manku ©Yongjoon Choi

 

 

Park Hyatt Tokyo, by Jouin Manku ©Yongjoon Choi

 

 

 

 大きく変化を遂げたのは、客室だ。色調はより落ち着きを増し、利便性も追求された。時代性を強く感じさせる要素は極力そぎ落とされ、代わりに、木材、ファブリックといった自然素材の質感が静かに主張する。窓の外に広がる東京の景色と呼応するような、余白のある設えだ。

 

 それでいて、かつてのパーク ハイアット 東京が持っていた非日常性は、決して失われていない。ベッドに腰を下ろし、照明を落とした瞬間に訪れる静けさ。窓越しに見える東京の夜景さえも、どこか遠くに感じられる。その距離感こそが、このホテルの本質なのだと、改めて気づかされる。

 

 

Park Hyatt Tokyo, by Jouin Manku ©Yongjoon Choi

 

 

 

 もうひとつ大きく進化したのは、「ジランドール」が、アラン デュカスとタッグを組み、「ジランドール by アラン デュカス」として生まれ変わったこと。

 

 コンセプトは、フレンチブラッセリー。ここぞというオケージョンのみで利用するのではなく、「あ、今夜フレンチが食べたい」というときに、友人や家族とともに訪れられるような肩肘張らずに利用できる空間。

 

 入店してから帰るまで温かい会話と心のこもったサービスでもてなしてくれるため、食事体験そのもので、パリのエスプリを感じられるだろう。フレンチワインのラインナップがより充実したというから、ワイン好きもぜひ注目してほしい。

 

 リニューアルとは、ともすれば「新しさ」や「今っぽいこと」、そして「その土地らしくあること」に偏りがちだ。しかし、パーク ハイアット 東京が今回選んだのは、変わることよりも、変わらない価値を見極めることだった。

 

 

 

 

「ニューヨーク グリルバー」や「梢」、ライブラリーを見てみると、長年愛されてきたスケール感、視線の抜け、そこに流れる時間の速度……それらは丁寧に受け継がれながら、細部に現代的な解釈が加えられている。結果として生まれたのは、“新しい”というよりも、“更新された”空間だ。

 

 姿はほぼそのままだが、スケルトンを経たことで、設備は完全に最新のものに入れ替えられている。細かいところで言うと、電気がLEDに変わっていたり、カーペットや椅子の座面の素材もすべて張り替えられていたり、アート作品はリタッチされていたり。「ピーク ラウンジ」のアイコニックな竹林だって、九州へ一度運ばれて養生と育成を経て、この場所へ再び植えられたという。

 

 

 

 

 高層階から見下ろす東京は、30年前とはまったく異なる表情を見せている。だが、その変化を受け止めながら、静かに寄り添い続けられる場所がここにはある。パーク ハイアット 東京は、東京の変化を映す鏡でありながら、同時に、喧騒や日常から距離を取るための拠点でもあるのだと思う。ただ泊まるための場所ではない。一人でも、誰かとでも、時間を過ごし、記憶を重ね、自分自身と向き合うための空間。

 

 次の30年、この場所でゲストたちがどんな物語を紡いでいくのか。その新たな始まりに立ち合えたこと自体が、他のなにものにも替えがたい贅沢であると思わずにはいられない。

 

 

パーク ハイアット 東京

新宿区西新宿3-7-1-2

TEL. 03-5322-1234

tokyo.park.hyatt.jp