MR. JANTLEMAN

中国のファッショニスタ:現代の都市に生きるモダン・ジェントルマン

August 2023

東洋と西洋の文化が強く重なり合う中国・香港は、モダン・ジェントルマンを数多く生み出している。香港出身のジャン・トンはそのひとりである。

 

 

text fengyu

edit ayuan 

photography chantszzfunggg

 

 

 

Jan Tong/ジャン・トン

1991年、香港生まれ。大学を卒業後、2014年よりアーモリー。クラシックのほか、ヴィンテージクロージングにも精通しており、そこから多くのインスピレーションを得ている。アーモリーではセールスディレクター、バイヤー、そして商品開発を担当。着用しているのはリヴェラーノ&リヴェラーノのグレーのウールスーツ。シャツはアーモリー、ネクタイはドレイクス。

 

 

 

 過去8年間、香港の有名なクラシックメンズウェアショップ、アーモリーで最もよく見かける顔は、今回ご登場いただくジャン・トンである。

 

 アーモリー香港でのジャンの仕事は多岐にわたっている。ショップの経営に加え、接客や販売といった日々の“フロントライン”の仕事以外に、彼は多くの時間とエネルギーを、バイヤーとして費やしている。彼はアーモリーの商品開発におけるディレクターなのだ。

 

「ショップでお客様とお話しして、お好みやニーズを把握するのが好きなんです。オーダーメイドの注文も担当しており、サプライヤーとやり取りをするだけでなく、フィッティングや試着も行っています」

 

 

左:ジャンの定番アクセサリー。メキシコ製925スターリングシルバーのヴィンテージ・マネークリップ、S.T. デュポンの925スターリングシルバー製ローラーボールペン、1920年代のナバホ族エスニックリングとブレスレット。右:1960年代のタートオプティカルFDRのアイウェア。

 

 

 

 このような働き方をすることで、ジャンは顧客の好みをはっきりと把握することができ、バイイングや商品開発において、より賢い選択をすることができるようになったという。

 

「クラシックなスーツからカジュアルなジーンズまで、フィットしたものからルーズなものまで、アーモリーでは多くのアイテムを扱っています。 当店のセレクションの中では、実はカジュアルなアイテムが一番好きで、力を入れています。どれもこだわりのメーカーによって作られたもので、アーモリーのドレスウェアに合わせると、とてもクラシックに見えるんです。なかでもお気に入りのアイテムは、日本のザ・リアルマッコイズとコラボレーションしたレザージャケットと、ウエアハウスが私たちのために製作したジーンズです。どちらも自分のヴィンテージ・コレクションにインスパイアされたもので、それを再現してより多くの人に着てもらえることに大きなやりがいを感じています」

 

 ヴィンテージに関していえば、ジャンのワードローブは、世界中から調達したクラシックなアイテムでいっぱいだ。

 

「中学生の頃から古着やヴィンテージアイテムを買っていました。最初は節約のためでしたが、流行り廃りがなく、着回しのきく服が多いことに気づき、ますます古着が好きになりました。でも、私は自分がヴィンテージ・コレクターだとは思っていません。買ったものはすべて自分で着るものなので、せいぜい“使い手”ですね。現在流通しているヴィンテージのほとんどは、デザインよりも機能性が重要視されていた時代のものです。耐久性を考慮し、しっかりとした素材と、熟練した職人技で作られた服が多いからこそ、半世紀以上前の服がまだ残っていて、あと10年、20年は持ち主の役に立ってくれるというわけです。この時間をかけて培われた品質が、それらをクラシックなものにし、未来のすべての新しいデザインの基礎となっているのです」

 

 

<続きはIssue52にてお読みいただけます>