MERCEDES-BENZ 540 K SPECIAL ROADSTER

戦前のメルセデスを代表する名車
メルセデス・ベンツ540Kスペシャルロードスター

Thursday, June 24th, 2021

1936年のパリモーターショーで初公開されたメルセデス・ベンツ540Kは、戦前のシュトゥットガルトを代表する名車であると同時に、最も重要なクルマでもある。

 

 

by charlie thomas

 

 

 

 

 1936年のパリ・モーターショーで初公開されたメルセデス・ベンツ540Kは、シュトゥットガルトが生んだ戦前のクルマの中で、おそらく最も素晴らしく、また最も重要な一台である。

 

 フラッグシップモデルであった500Kの成功に勢いづいたメルセデスは、このクルマをあらゆる面で改良し、1930年代で最も魅力的なクルマにしようと考えた。

 

 開発費用は惜しまれなかった。1936年に初めて540K登場したとき、ノーマル・モデルでさえ、十分に驚異的だったに違いない。しかし、メルセデスのジンデルフィンゲン工場の熟練したコーチビルダーが手作業で製作したこのクルマでさえ、540Kの究極の姿である“シュペツィアル・ロードスター”には及ばなかった。

 

 

 

 

 “ロングテール”と呼ばれるリアエンドと“ハイドア”と呼ばれる堂々としたサイド・プロファイルを持つスペシャルロードスターは、ジェイ・ギャツビーが週末にしか持ち出さないようなクルマであり、その希少性と素晴らしさは折り紙つきだ。

 

 540K スペシャルロードスターは、クルマというよりも美術品のような存在だ。自動車が大量生産され、政府が定めたルールや安全基準によって統制されるのではなく、ラグジュアリーな高級品として設計・製造されていた失われた時代を体現している。

 

 540Kの全長は17.5フィート(5,33cm)を超え、4人の乗客が快適に過ごせる現代のメルセデスSクラス・ロングホイールベースより長い。しかも驚くべきことに、スペシャルロードスターはツーシーターなのだ。

 

 

 

 

 このクルマは巨大だが、伝説の300SL“ガルウイング”を描いたデザイナー、フリードリッヒ・ガイガーの見事な手腕で、信じられないほどのウェル・プロポーションを手に入れている。

 

 メルセデス独特のグリルは、フロントバンパーから奥まった位置に設置されており、シェイプされたフェンダーがフロントの主役となっている。フェンダーはホイールアーチの上をクルマの後部に向かって滑るように流れ、爆発するように上昇して流れるようなリアの“ロングテール”の一部を形成している。

 

 

 

 

 このクルマは紛れもなく美しいのだが、いくつかの点では“形よりも機能”を追求している。滑稽なほど長いボンネットは、巨大な5.4リッター直列8気筒のエンジンを収めるために必要だった。最高出力は115bhpだった。これは、ドライバーが作動させる、ルーツ式スーパーチャージャーが回転していないときの数値である。そのスーパーチャージャーは、アクセルペダルが最後まで踏み込まれたときにのみ作動し、さらなる65bhpと忘れがたいサウンドを生み出した。

 

 1938年、『Autocar』誌のH・S・リンフィールドは、このクルマを見事に表現している。

 

 ”足を強く踏み込むと、ほとんど悪魔のような吠え声が聞こえてくる。レブカウンターとスピードメーターの針がダイヤルを飛び回る。メルセデスのスーパーチャージャーが出す音ほど、特徴的な自動車のサウンドは、おそらく世界にないだろう“

 

 

 

 

 しかし、スペシャルロードスターはスポーツカーではない。豪華なレザーインテリアと2.5トンを超える巨大な車重がそれを物語っている。

 

 それは世界初の“ラグジュアリー・グランドツアラー”であった。2人の乗客が長距離を快適に移動でき、なによりもその退廃的なスタイルが、人々を惹きつけて止まなかった。