MASTERS OF THE AIR
空の覇者、ブライトリングのナビタイマー
August 2024
ナビタイマー B12 クロノグラフ 41 コスモノート1962年、スコット・カーペンターの依頼により誕生した24時間表示ダイヤルのナビタイマー“コスモノート”を、現代人に向けてアップデート。地上での日常生活に合わせ、自動巻きのマニュファクチュールキャリバーB12を搭載。歴史上の功績と現代人の実用性を融合させた。18Kレッドゴールドケースにグリーンダイヤルを合わせ、エレガントな印象に。パワーリザーブは約70時間。世界限定250本。自動巻き、18KRGケース、41mm。(完売)Breitling ©︎FRANZ J. VENZIN
ジョン・レノンが亡くなる数カ月前に着けていたパテック フィリップの2499、マイルス・デイヴィスが所有していたブライトリングのナビタイマー、バズ・オルドリンが月面で着用していたオメガのスピードマスター……。これらがもし見つかれば、落札者の人生を大きく変えるようなオークションの目玉となるだろう。行方不明になった時計は、時計コレクターたちを魔法のように魅了する。だから2022年5月24日に、宇宙飛行士スコット・カーペンターがマーキュリー・アトラス7号のミッションで着用していた特別なナビタイマー(後に「コスモノート」と呼ばれる)が、数十年の時を経てブライトリングの家族のアーカイブから発見されたというニュースは大きな話題となった。この時計こそ、長年失われたとされていた、“初めて宇宙へ飛んだ(地球を3周した)”スイス製の腕時計である。
歴史的なミッションから60周年となったこの日、ブライトリングはチューリッヒで開催された宇宙についてのイベント(元NASA宇宙飛行士のスコット・ケリー、カーペンター家の家族、そしてグレゴリー・ブライトリングらが登壇)で、この偉大なスペースウォッチを初めて公開。さらに、この歴史ある腕時計へのトリビュートとなる限定モデルを発表した。
1962年5月24日、ケープカナベラル空軍基地より打ち上げられたマーキュリー・アトラス7号。©︎HUM IMAGES/UNIVERSAL IMAGES GROUP VIA GETTY IMAGES
1964年、ブライトリングのコスモノートの広告。
マーキュリーセブンの一員、スコット・カーペンター。©︎NASA
2024年、ブライトリングはブランドの140周年を記念する「140 Years of Firsts」キャンペーンの一環として、ナビタイマーコレクションから、航空機の計時における歴史的な躍進を称える新作の数々を発表した。まずは「ナビタイマー B12 クロノグラフ 41 コスモノート」(本頁写真1枚目参照)。カーペンターからのリクエストだった、宇宙で昼と夜を区別するための“24時間表示ダイヤル”は踏襲されているが、今回は地上での日常使いを考慮し、自動巻きのムーブメントを搭載。18Kレッドゴールド製ケースに、深みのあるグリーンのダイヤルとゴールドの数字、そしてブラックアリゲーターレザーストラップが見事に調和している。ケースバックからは、自社開発キャリバーB12と、「One of 250(250点限定)」、「1962年5月24日、宇宙へ飛んだ初のスイス製腕時計/ナビタイマー コスモノート」を意味する刻印を鑑賞できる。
また、シンプルな3針モデル「ナビタイマー オートマチック 41」も発表された(下写真)。ナビタイマーのアイコニックな外観と両方向回転ベゼルは健在。性別を問わない41mmケースで、ステンレススティール、18Kレッドゴールド、ツートーンを展開する。ブルー、シルバー、アイスブルー、グリーンといったすっきりとしたダイヤルを採用することで、複雑な計算尺を際立たせつつ、全体的な美しさを引き締めている。現代的な刻み入りのベゼルは、ポリッシュとサテン仕上げを交互に取り入れ、豊かな表情を生み出した。アリゲーターレザーのストラップや、バタフライクラスプを備えたブレスレットの着用感も良好だ。
ナビタイマー オートマチック 412022年にリニューアルを果たしたナビタイマーのアイコニックな外観を継承しつつ、2024年にリモデルして登場した3針モデル。シンプルながらバランスの取れたデザインを保っている。自動巻き、41mm。左から:SSケース(ブルーダイヤル) ¥715,000、SSケース(アイスブルーダイヤル) ¥756,800、SSケース(グリーンダイヤル) ¥756,800、SS×18KRGケース(シルバーダイヤル) ¥1,306,800 Breitling ©︎FRANZ J. VENZIN
左:ブライトリングのアンバサダー、サッカー選手のアーリング・ハーランド。右:プロバスケットボール選手のヤニス・アデトクンボ。
そもそもナビタイマーは、1952年、国際オーナーパイロット協会(AOPA)が、まだ黎明期だった民間航空業界のパイロットたちのために、ウィリー・ブライトリングにクロノグラフを製作するよう依頼したのが始まりだ。そこで彼は、平均速度、移動距離、燃料消費量、上昇率、下降率などの飛行中に必要とされる計算を可能にする画期的なデザインを取り入れた。円形計算尺を、小さなノッチで容易に操作できる回転ベゼルに組み込むことで実現したのだ。パイロットの間で大成功を収めたこの時計は、腕時計型の機内用コンピュータの元祖となり、ブライトリングは「世界の航空業界の公式サプライヤー」としての地位を確立した。
ナビタイマーに魅了されたのはパイロットだけではない。マイルス・デイヴィスやセルジュ・ゲンズブールといった流行の発信者たちも、この時計の虜となった。ナビタイマーは航空業界とポップカルチャーの両方で愛される稀有な存在である。現代においては、パイロットが針路を測る道具の域を遥かに超え、人生という旅を計画する人々のシンボルとなっている。マニュファクチュールは、バスケットボール界のスーパースターであるヤニス・アデトクンボ、アメリカン・バレエ・シアターのプリンシパルダンサーであるミスティ・コープランド、冒険家のベルトラン・ピカール、オスカー女優のシャーリーズ・セロンらをメンバーとしたアンバサダーチーム「ナビタイマー・スクワッド」を結成しているが、今年はここに、2022年からブランドのアンバサダーを務めている人気サッカー選手、アーリング・ハーランドを加えた。
今回発表されたナビタイマーの新作は、ブライトリングが誇る時計製造の革新という歴史を現代風にアレンジしたほんの一例に過ぎないという。「今年は1年を通じて140年の間におきた“初めての物語”をお伝えしていきます」と、ブライトリングのCEO、ジョージ・カーンは語る。「ナビタイマーとコスモノート、このふたつの時計がブライトリングというブランド、航空業界、そして時計史全般に与えた影響は計り知れません」。
パイロットウォッチの金字塔「ナビタイマー」
創業から追い続けてきた、“世界最高のクロノグラフを作る”という夢を具現化したアイコンウォッチ。
ナビタイマーは、航空用計器の開発にも力を注いでいた3代目のウィリー・ブライトリングが、「フライトコンピューター」と呼ばれる計算尺を腕時計に統合して1952年に誕生した。ダイヤル外周のディスクが回転するベゼルと連動して可動する仕組みだ。当初は国際オーナーパイロット協会(AOPA)の会員向けに製造されたが、その2年後には一般向けにも製造されるようになった。アマチュアとプロを問わずパイロットに支持されたナビタイマーはやがて航空業界を超えて人気を博し、多くの著名人に愛用された。
現行モデルは2022年のクロノグラフを皮切りにリニューアルが進み、ブランド140周年となる今年は3針のオートマチック、GMTが加わった。THE RAKEのおすすめはやはり定番のクロノグラフだ。中でもゴールドモデルはラグジュアリーかつエレガント。AOPAロゴが復活してよりクラシカルな雰囲気となったナビタイマーを、さらに格上げしてくれる。
クロノグラフは41mm、43mm、46mmの3バリエーション。アリゲーターストラップと7連メタルブレスレットを展開。ケース素材に加えダイヤルのカラーバリエーションも豊富なので、自分好みの1本を見つけてほしい。いずれもマニュファクチュールキャリバー 01を搭載。パワーリザーブは約70時間を誇る。自動巻き、18KRGケース。左から:「ナビタイマー B01 クロノグラフ 41」41mm(シルバーダイヤル)¥2,695,000、「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」43mm(ブラック×シルバーダイヤル)¥2,805,000、「ナビタイマー B01 クロノグラフ 46」46mm(シルバー×ブラックダイヤル)¥2,860,000 Breitling