MARKING TIME
マーク・チョー私物時計オークション開催!
November 2022
まもなく世界的オークショナーのフィリップスによって、アーモリーの共同設立者マーク・チョーの時計コレクションの競売が行われる。このイベントを前にして、マークはTHE RAKEのインタビューに応じてくれた。
by TOM CHAMBERLIN
マーク・チョーは、私がこれまで出会った中でも、傑出した人物のひとりである。彼の人生は決してのんびりしたものではなく、いくつものタイムゾーンにまたがって複数の仕事を抱え、さらに家庭においてはよき父親でなければならない、実に多忙な人である。
こういった人間は過度のストレスを抱えていたり、負のオーラを放っていたりするものだが、彼はその真逆である。英国に「クール・アズ・キューカンバー(キュウリのように冷静)」というイディオムがあるが、まさにそんな存在だ。百科事典のような知識と経験を持ち、穏やかな声で周囲に安心感を与える。
時計コレクションのオークションについて話を聞くためにフィリップスに向かったとき、今回ばかりは彼はソワソワしているのではないかと思っていた。なぜなら、このセールの目的は、彼の趣味のよさを称えることではなく、ニューヨークのアーモリーの店舗の改装資金のためだというのである。しかしながら、時計やコレクションについて話す彼は、相変わらず“超クール”だったのである。
「私が時計収集に目覚めたのは、HSBCでの最初の仕事で、中古のオメガ・クロノストップを手にしたときでした。自分はもう大人で、いろいろなことができる、若い力が活かせると思える、というマイルストーンとなりました」
彼は完璧なスタイルの持ち主で、いつも素晴らしいコーディネイトを身に纏っているが、アクセサリーをつけるような人ではなく、時計は重要な装飾品だと考えている。
もちろん、正真正銘のコレクターになるまでには長い道のりがあったはずだが、何が彼をそこまで夢中にさせたのだろうか。
「『こんなに安く時計が手に入るんだ!』という、お得感の面白さだったと思います。コレクションを始めた頃は、誰もヴィンテージウォッチとは呼ばず、ただの中古品として安く取引されていたんです」
これに続いてオメガやIWCを集め始め、ブランドのストーリー性に惹かれるようになった。何年かすると、彼は最初の超高級時計を手に入れた。パテック フィリップのホワイトゴールド製パーペチュアルカレンダー Ref.3940Gである(今回のオークションにはイエローゴールド製が出品される)。
さらに、ノーチラス(1990年製のステンレススチール製Ref.3800/001が今回のロットに含まれている)を収集することでパテック フィリップにのめり込み、さまざまなデザインやファミリー全体を完成させるというアイデアを楽しんだ。
「なりたい自分ではなく、実際にいる自分を表現したかったのです」と彼は言う。コレクターへのアドバイスとして、率直だが爽やかな言葉でこう続けた。
「“間違い”を経験することも重要だと思います。何年も写真とにらめっこしていても何も生まれないし、おそらくその物がどれだけ良いものかという期待を膨らませすぎて、結局は少しがっかりすることになるでしょう」
今回、オークションに出品される16年がかりのコレクションは、まさにマーク・チョーのキャラクターを表すものである。
「私が本当に好きな時計のほとんどは偶然に出会ったもので、論理的な公式などは存在しないことに気づいたのです」
だからこそ私たちは、芸術性と技術において傑出しているという点を除いて一見脈絡のない、しかし素晴らしいラインナップを目にすることができるのだ。シャネル、グランドセイコー、H.モーザー、パテック フィリップ、A.ランゲ&ゾーネなど、すべては彼の審美眼によってランダムに選ばれたものだ。
売却益は、前述の通りアーモリーの拡張に使われる。「いい取引でしょう?」と彼は言う。
「今回のオークションで、私は何も失っていないような気がします。私が所有するものを、自分にとってより意味のあるものに交換するのです。金庫の中に時計を入れておくよりも、クライアントやチームのために店舗を新しくするほうがずっといいのです。手放すことに後悔はありません」
特筆すべきは、これが“生涯の”コレクションと呼ばれていることだ。マーク・チョーはまだ若く、40歳にもなっていない。彼の時計収集における実績が、いかに高いかわかるだろう。
「私はずっと時計を集めてきました。時計を愛しています。コレクションは私のテイストを反映していますが、そのテイストは常に変化し、コレクションも変わっていくのです」
オークションは11月30日にオンラインでスタートし、12月6日に終了する。チョーの個人的なスタイルが反映された時計に入札できる貴重な機会であり、あなたの好みの1本もきっと見つかることだろう。
The Beauty in Everything
シングルオーナーによるオンラインオークション – 入札するにはこちらでご登録を。
www.phillips.com/auctions/auction/HK080422