クルマ好きなら間違いなく心揺さぶられる1台

今、敢えて、V型8気筒5.0ℓ自然吸気エンジンを積むモデルが登場した。ハイパワーFRならではの醍醐味を、自動車評論家、島下泰久がリポートする。

 

 

 

text yasuhisa shimashita

 

 

 

Lexus IS500 F SPORT Performance
全長×全幅×全高：4,760×1,840×1,435mm／車両重量：1720kg／エンジン：V型8気筒DOHC 4,968cc自然吸気／最高出力：481PS/7,100rpm／最大トルク：535N・m/4,800rpm

 

 

 

　レクサスのコンパクトFRスポーツセダン、ISのラインナップに新たに追加されたのは、Ｖ型8気筒5.0ℓ自然吸気エンジンを搭載したIS500“F SPORT Performance”である。V8を積んだISと言えば、かつてのIS Fが想起されるところだが、今回敢えてそれを名乗らないのは、サーキット走行を主眼とするのではなく、今や希少な大排気量・自然吸気・高回転型エンジンの歓びを多くの人が、さまざまなシチュエーションで堪能できるクルマとするため。それが故の“F SPORT Performance”なのである。

 

　最高出力481PS、最大トルク535N・mを発生するこの珠玉のエンジンには、最短0.2秒という変速スピードを実現したATの8速SPDS（スポーツダイレクトシフト）を組み合わせる。

 

　車体は、そのパワーを受け止めるべく、ボディのねじれやたわみを減衰させて、安定した挙動に導くパフォーマンスダンパーをフロントに加えてリアにも装備。あわせてサスペンションも適度に締め上げられ、電子制御ダンパー、電動パワーステアリングの制御にも手が入れられた。

 

　V8ユニットを収めるべく50mm伸ばされ、そして大きく膨らんだボンネットフードやリアの4連エキゾーストなど、その外観にはいかにも只者ではない雰囲気が漂う。そして室内はと言えば、バックスキン調の合成皮革、ウルトラスエードが各部にあしらわれ、スポーティかつ上質な空間に。エンジンスタート時のオープニング画面もIS500専用とされて、走り出す前から気分が昂揚してしまう。

 

 

 

 

 

 

　試乗の舞台はアメリカ、サンタバーバラ近郊。まずはゆったりと流し始めると、IS500は大排気量ならではの余裕のトルクと、引き締まっていながらもしなやかさを感じる乗り心地で、快適なドライブを楽しませてくれた。

 

　無論、本領を発揮するのはアクセルペダルを更に深く踏み込んだときだ。回転上昇に伴ってサウンドは音の粒が細やかさを増していき、同時にパワーが高まってくる。そして高回転域に向けて、まさに一気に勢いで吹け上がっていく様には、快感という以外の表現が思い浮かばない。特に、まるで管楽器を奏でているかのような荘厳なサウンドには、思わず引き込まれ、また右足に力を込めてしまうのだ。　フットワークも心地よく、軽やかにコーナーを駆け抜けることができる。加速していく際の、後輪にグッと力がかかって路面を蹴り出していく感覚は、まさにハイパワーFRならではの醍醐味。ドライビングの根源的な歓びが、その走りには濃密に詰まっている。

 

　レクサスが今、敢えてＶ型8気筒5.0ℓ自然吸気エンジンを積むスポーツモデルを登場させたのは、ひとつにはレクサスならではの研ぎ澄ませた走りで、多くのクルマ好きに楽しんでほしいという思いもあるだろうし、更に言えば、電動化に向かうこの先にも、将来の期待に応えるブランドであり続けるというアピールでもあるはずだ。いや、理屈はいいだろう。とにかく乗れば、クルマ好きなら間違いなく心揺さぶられる1台。それがIS500“F SPORT Performance”である。

 

 

 

V8エンジンを収めるためノーズが伸ばされフードも猛々しい雰囲気ではなく、まさに“羊の皮をかぶった狼”だ。インテリアは表皮にウルトラスエードとL texを組み合わせたシートなどで精悍に演出。エンジンは今や希少なV型8気筒5.0ℓ自然吸気ユニットを搭載。リアビューでは4連エキゾーストが識別点となる。

 

 

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