LALIQUE: CRYSTAL LIMITED EDITIONS

ラリックのコレクターズアイテム:今年は“マグマ”のエネルギーを纏って

January 2026

コレクター垂涎の限定ラインに登場した新作《マグマ》。130年を超えるクラフツマンシップと、大地のエネルギーが溶け合ったボトルには、力強さを秘めた美が息づく。
text yukina tokida

Magma 《マグマ》
クリスタルボトルコレクション2025
2025年は《マグマ》がテーマ。クリスタルが放つ美しさに、グレーからブラックに変化するグラデーション、そして力強いシェイプが融合したデザインがエレガント。中身はこれまでと同様に「ラリック ドゥ ラリック」。1992年に発表された同社を代表するフローラルな香りだ。「《マグマ》クリスタルボトルコレクション 2025」(120ml、世界500点限定、シリアルナンバー入り)¥316,800 Lalique

 今でこそ「Lalique(ラリック)」は、誰もが知るフランス屈指のクリスタルブランドだが、実は香水瓶に“芸術”という新たな価値を与えたパイオニアでもある。

 革新をもたらしたのは、他の誰でもなく、ひとりの天才工芸家であり創業者のルネ・ラリック。1860年、フランス・シャンパーニュ地方に生まれた彼は、若くしてジュエリーデザイナーとして頭角を現した。当時主流だった宝石を豊富に使い豪華に仕上げるスタイルではなく、古代とジャポニスムにインスパイアされた精巧な金細工を施し、エナメルやガラス、真珠層、象牙といった素材を取り入れることで、ジュエリー製作の伝統を打ち破った。

 20世紀初頭になると、ラリックはジュエリーからガラス工芸へと活動の場を移す。香水商フランソワ・コティとのコラボレーションにより、香水を魅力的なボトルに収めた芸術作品を生み出し、香水文化に新たな時代を切り開いたのだ。

 1945年のルネ・ラリックの死後、息子のマルクがブランドを継承。素材をガラスからクリスタルへと進化させ、ラリックはより透明感と光沢に満ちたクリスタルブランドへと飛躍する。卓越したクラフツマンシップは、戦後のフランス工芸を象徴する存在となった。そして娘のマリー=クロードがCEOに就任し、ジュエリーデザインの伝統を刷新するとともに、フレグランス事業を拡大。1992年にはブランド初のオリジナル香水「ラリック ド ラリック」を発表し、アイコニックな限定クリスタルボトルコレクションが幕を開けることとなる。

 記念すべき一作目のボトルは、1994年に誕生した「Les Muses(レ・ミューズ)」。ギリシャ神話のミューズ(女神)をモチーフにしたこのボトルは、サテン仕上げのクリスタルに優美な女神像が浮かび上がる、まさに“香水とアートの融合”と呼ぶにふさわしい作品だ。世界限定500本、1本ごとにシリアルナンバーが刻まれ、発売と同時にコレクターズアイテムとして大きな注目を集めた。以来ラリックは、毎年異なるテーマとデザインで、香水ボトルを“芸術作品”として発表し続けている。

 たとえば、水の精をモチーフにした「Ondines」(1998年)、妖精を刻んだ「Les Fées」(2006年)、仮面舞踏会を描いた「Commedia」(2007年)、そして植物の生命力を象徴する「Fougères」(2022年)など数々のモデルがその歩みを彩ってきた。いずれも素材は最高品質のクリスタル、洗練されたデザイン、そして熟練した職人による手仕上げで、ひとつひとつが独立したアートピースとしてコレクターの心を摑んでいる。

 そして今年登場したのが「Magma(マグマ)」。スモーキーなグラデーションを伴うクリスタルの輝きと、香水のエレガントな淡いピンク色のコンビネーションが実に印象的だ。火山のエネルギーをテーマとした、生命の根源を象徴するデザインからは、従来の透明感とは異なる力強さや官能性をも感じられる。

 クラシックで妖艶な「レ・ミューズ」から始まったこのコレクションは、30年を経て誕生した「マグマ」によって新たなステージに突入したといえるだろう。

宝石のような美しさを放つ過去のコレクション


左:ギリシャ神話のミューズ(女神)をモチーフにした第一作「Les Muses」(1994年)。サテン仕上げのクリスタルに浮かぶ優美な女神像が、ラリックの美学を象徴している。4つのユニークなポーズは、神秘的な儀式のさまざまな段階を表現したもの。誕生から30周年の節目となった2024年には限定復刻版が発表され、再び注目を集めた/右:水の精をテーマに、流れるようなラインが印象的な「Ondines」は1998年に登場したモデル。瑞々しい曲線美が、ラリックならではの詩的な世界観を描き出している。


左:妖精が刻まれた、幻想的な「Les Fées」(2006年)はアール・デコの伝統に軽やかさを融合させた、2000年代を代表する一作/右:2022年に発表された「Fougères」は、作品名にもあるシダの葉をモチーフに、生命の息吹と自然の力強さを表現。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 67