“IT COMES DOWN TO TASTE… WHETHER YOUR MUM LIKES IT, I CAN’T DO JOBS BASED ON THAT”

スコットランド魂を全開に。スチュアート・マーティン

December 2025

スコットランド出身の俳優スチュアート・マーティンがTHE RAKEに、自身のバックグラウンド、観客とのつながり、そして最新作『In Flight』と『Atomic』について語った。
text chartic domas
photography kim lang
fashion direction grace gilfeather
special thanks to the nomad, covent garden

Stuart Martin/スチュアート・マーティン1986年、スコットランド・エアー出身。ロイヤル・コンセルバトワール・オブ・スコットランドで演劇を学び、2009年にデビューして以来、ドラマ『メディチ』のロレンツォ・デ・メディチ役、『ジェームズタウン』のサイラス・シャロー役、『ミス・スカーレットと公爵』でのウィリアム・ウェリントン警部補役などで知られる。私生活では女優リサ・マクグリリスと結婚しふたりの子を持つ。

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 コヴェント・ガーデンでのフォトシュート現場に姿を見せたスチュアート・マーティンは、Tシャツをハイウエストのプリーツ入りトラウザーズにタックインし、古きよきハリウッドを思わせる風貌だった。今レッドカーペットに立っても、間違いなく最もスタイリッシュな男のひとりだろう。年内に公開予定の新作2本を控え、さらに次回作の準備に入る彼を、束の間の静寂の中で捉えることができた。

 マーティンはスコットランド出身。グラスゴーのロイヤル・コンセルバトワールで演劇を学び、ドラマ『メディチ』(2016–2019年)ではダスティン・ホフマン演じる父のもと、若きロレンツォを演じて注目を浴びた。その後『ジェームズタウン』(2017–2019年)、『ミス・スカーレットと公爵』(2020–2024年)と、歴史ドラマを中心にキャリアを積んできたが、今新たな挑戦のステージに立っている。彼が主演するチャンネル4の新作『In Flight』(2025年~)は、恐喝と麻薬密輸をめぐるスリラーだ。そしてもうひとつの新作『Atomic』(2025年~)では、カルテルの爆弾計画に巻き込まれた市民ふたりが、自分たちを守るか爆弾を阻止するかの選択を迫られる。マーティン自身は、彼らを追い詰める“ぶっ飛んだスコットランド男”を演じ、観客に手に汗を握らせるだろう。

―俳優という道を歩み始めたきっかけ、そして演技への情熱についてお聞かせください。
 特別な計画があったわけではありません。ただ、不思議なことに「これが自分の道だ」とずっと信じていたんです。学校で演劇を学んだことはなく、出身地はグラスゴーから1時間ほどの町。周囲に俳優はひとりもいませんでした。両親も親族もまったく別の職業で、手本となる存在もなかった。勇気を出して教師に「俳優になりたい」と言っても「馬鹿なことを言うな」と笑われるだけでした。それでも高校最後の年に「本当にやりたい」と決意し、演劇を始め、カレッジを経てドラマスクールへと進んだのです。

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―地元には、憧れる俳優もいなかったのですね。
 そうです。ただ、映画への情熱は絶えることがありませんでした。今思えば、自分は非常に“のめり込む”性格で、それはアートの世界では必要不可欠なことだと思います。厳しい仕事だからこそ、突き動かすものがないと続けられない。地元の映画館に通ってスクリーンに没頭する時間は最高でした。別の上映室から響く重低音を感じながら入る劇場、その体験自体が劇場的で、映画を観終えて外に出ると胸の奥が高揚感で満たされる。だからこそ、他の道を考えたことは一度もなかったんです。

―子どもの頃、影響を受けた作品や人物は?
 ブロックバスターで英国のインディーズ映画を片っ端から借りていました。特にスコットランドの作品、ダニー・ボイル監督やフィルム・フォーの作品は欠かさず。ユアン・マクレガーの出演作は全部観ましたし、『シャロウ・グレイヴ』(1994年)、『普通じゃない』(1998年)もお気に入りでした。ロバート・カーライルの作品も追いかけましたね。

―今日、脚本を選ぶ際に重視していることは?
 最初に読んだ瞬間の直感です。「これは響く」と心が動かされるか。ページをめくる手が止まらなくなるような作品ですね。特に今は家族がいるので「やらずにいられない」と思えるかどうかが大切です。数カ月間、家族と離れて過ごすことになるかもしれない。だからこそ心から惹かれるものでなければならないんです。

―自分の作品をどう思われるかは気になりますか?
 もちろん観客に楽しんでもらいたい気持ちはあります。でも、他人の評価で自分の思いは揺るぎません。自分が好きであればそれで十分。「あなたには響かなかったのは残念だけど、僕は大好きだからいいんだ」と思える。意見は変えられないし、それは結局“センス”の問題です。初めて脚本を読んで「これは最高だ」と思えたら、それが僕の基準です。誰かの母親が気に入るかどうかで、仕事を選ぶことはありません。

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―そうした考えは昔から持っていたのですか?
 テレビや映画には強い“所有感”があります。人々の生活に入り込む以上、賛否は必ずある。ポジティブを受け入れるならネガティブも受け止めなければならない。結局のところ、俳優は両親に誇りに思ってもらいたいのだと思います。「あの時は笑われた夢を、本当にやっているんだ」と思ってもらえることが、一番の幸せなんです。

―新作『In Flight』について教えてください。
 主人公ジョーを演じるのはキャサリン・ケリー。息子がソフィアの刑務所に収監されることから始まり、彼を救おうとする中でギャングに脅迫され、麻薬の運び屋にされてしまう―緊張感あふれるスリラーです。脚本はマイク・ウォルデン、撮影は素晴らしい感性を持つヤン・ヨナエウス。映像美と物語の厚みが見どころです。私はギャングの一員を演じますが、表向きの顔だけでは終わらない。どんでん返しが待ち受ける、とてもキャラクター主導の作品です。

―そして『Atomic』も注目作ですね。
 役を終えるたびに、まったく違う人物を演じたいと思うんです。だからこそ「今度は完全にぶっ飛んだスコットランド人を演じよう」と決めました。『Atomic』は砂漠を横断するロードムービーで、物語の中心は「ダーティボム(放射性物質を拡散する爆弾)」。それをめぐり、ふたりの男が運命的に出会い、爆弾を運ぶ羽目になります。彼らを追うのは狂気じみた特殊部隊員、ロシアのギャング、CIAといった面々。主演はアルフィー・アレンとシャザド・ラティフ。バディ・ロードムービーとしての掛け合いに、次々と強烈なキャラクターが加わっていきます。モロッコの砂漠での撮影は素晴らしく、埃まみれになりながら“スコットランド魂”を全開にできました。脚本はグレゴリー・バーク。15年前に舞台『Black Watch』で一緒に仕事をした作家で、再び組めたことはとても嬉しい経験でした。

スーツ 参考商品 Hackett カラーレスのシャンブレー製シャツ 100Hands for Anderson & Sheppard サングラス ¥66,220 Oliver Peoples ポケットチーフ Budd Shirtmakers

DIGITAL TECHNICIAN: DERRICK KAKEMBO
LIGHTING TECHNICIAN: JOE DABBS
FASHION ASSISTANT: SOPHIE CALLAGHAN
GROOMING: HANNAH WYNNE AT JOE MILLS AGENCY

THE RAKE JAPAN EDITION issue 67