Interview – dunhill / creative director SIMON HOLLOWAY

【独占インタビュー】サイモン・ホロウェイはダンヒルをどう導くのか?

September 2024

ダンヒルのクリエイティブ・ディレクターに就任し、2024年秋冬、英国クラシックへのオマージュたっぷりなファーストコレクションで素晴らしいデビューを飾ったサイモン・ホロウェイ氏への、独占インタビュー。

Simon Holloway / サイモン・ホロウェイ英キングストン大学でファッションデザインを学ぶ。キャリアを積んだのち、名門ジェームス・パーディ&サンズのクリエイティブ・ディレクターに。2023年、ダンヒルのクリエイティブ・ディレクターに就任。2024年秋冬がファーストコレクション。

THE RAKE ファーストコレクションを拝見し、現代的な英国らしさの中にタイムレスなエレガンスを強く感じました。“英国クラシック”へのオマージュが、今までのダンヒルの中で最も強く表現されていたように思うのですが、コレクションを築くうえで、最も大切にしたいことは何でしょうか?

Holloway デザインをする際、このハウスの130年のダイナミックな歴史を探求したいといつも思っています。アーカイブにある、自動車が発明された時代のカーコートやドライビングジャケット、アールデコ時代のサドルレザー製品、ハードラグジュアリーの数々、20世紀後半のテーラリングまで、その豊富な遺産はダンヒルの真髄であり、それを自身の視点で表現できるのは無上の喜びです。

THE RAKE テーラードに対する強いこだわり、愛も強く感じられました。テーラード製品は、紳士にとってどういった存在であるべきだと思いますか?

Holloway 男性のスタイルには、常にテーラリングが身近にあります。スーツを所有することが必然の人もいれば、スーツを着たり仕立てることが欲求である人もいますが、テーラリングは個性の表現手段であるべきです。全身フォーマルなメンズウェアでも、ソフトなテーラードやニットウェアを取り入れたハイブリッドなスタイルでも構いません。今ではTシャツやポロシャツを合わせることも一般的です。それはスタイルであると同時に、快適さを追求した結果でもあります。

THE RAKE フォーマルコレクションの華やかでエレガントな世界に夢を感じましたが、トルーマン・カポーティがダンヒルのタキシードを着用したヒストリーがある中で、ダンヒルのフォーマルな世界は、あなたがコレクションで強く表現したいことのひとつなのでしょうか?

Holloway 私は昔のイギリスやハリウッドの映画スターのイメージが大好きです。ケーリー・グラントやクラーク・ゲーブルが髪を後ろに流し、タキシードを完璧に着た姿は実に洗練され、上品さと身嗜みがありました。トルーマン・カポーティやフランク・シナトラを着飾ってきたダンヒルにとって、イブニングウェアは必要不可欠なものです。だからこそ、クラシックなイブニングウェアの限界を押し広げたく、試行錯誤しました。上質なチェスナット、ダークチョコレート、ミッドナイトブルー、グレーのベルベットで作られたイブニングスーツ、インディゴシャンブレーのイブニングシャツ、オーバーサイズのウールシルク製ボウタイ、ダブルフェイスコートとテーラードスニーカーを組み合わせた、目を見張るエクリュのスリーピースイブニングルックなどです。

THE RAKE あなたが考える紳士像を教えてください。それを形成するうえで影響を受けた人や英国カルチャーがあれば教えてください。

Holloway 現代のダンヒルマンは、落ち着きがあり、静かな自信に満ち、少々のエキセントリックさと享楽主義の雰囲気を漂わせた男性であると私は考えています。フォーマルのコードは、クールな不遜さと無頓着さを引き立てます。コレクションでは、丹念に仕立てられた、クラシックでマスキュリンな「ブリティッシュ ハリウッド」の装いに多大なインスピレーションを受けました。映画スターの装いに憧れない人がどこにいるでしょうか?

THE RAKE 最後にこれからのダンヒルで表現したいことを教えてください。

Holloway アルフレッド・ダンヒルは、先見の明と、職人技、革新性、卓越性への情熱を持った人でした。品質とセンス、すべてのものが最高でなければならないという意識の高さに共感しています。ラグジュアリーを表現するこのエキサイティングな旅を続けるために、彼と同レベルの卓越性が求められます。そのために私は、ハウスの中心にある典型的な英国の感性に焦点を当てています。英国のカラーパレットや古典的なメンズウェアからインスピレーションを得た英国生地のパターンやテクスチャーは、コレクションの根幹を成します。軽やかかつ時代性を大切に、すべてを作り上げています。