Fuji Speedway Hotel

モータースポーツファンならずとも訪れたい「富士スピードウエイホテル」

July 2024

 

 

 1965年にオープンした静岡県・小山町に位置する富士スピードウエイは、数々の名勝負を生んだ日本を代表するサーキットである。戦後の高度成長期の人々は、圧倒的な性能差の外車勢を相手に、根性で戦った日本車の活躍に大歓声を送った。

 

 76年にはマクラーレンのF1ドライバー、ジェームス・ハントがニキ・ラウダとチャンピオンを競い、ハントはここ富士でシリーズ優勝を決めた(この物語は映画『ラッシュ/プライドと友情』(2013年)でも描かれた)。

 

 現在でも、スーパー耐久富士24時間レース、WEC富士6時間耐久レース、SUPER GTなど、多くの国際級レースの舞台となっている。

 

 

 

 

 そんなモータースポーツの聖地には、これまたインターナショナル級のラグジュアリーホテルが隣接している。「富士スピードウエイホテル」である。

 

 4万平米を超える巨大な敷地面積に、地上9階、地下1階の巨大なビルディングが建てられている。部屋数は115室を誇り、そのうちの21室がスイートとなっている。別途独立したヴィラが5室ある。

 

 

 

 

 スピードウエイの名前を冠しているが、このホテルはグランドハイアットやパークハイアットを擁するハイアットグループの「アンバウンド コレクションby Hyatt」に属している。アンバウンドは個性の際立ったラグジュアリーホテルに与えられるブランドで、現在世界に40軒しかないという。

 

 

 

 

 エントランスを抜けると、真横に傾けられた名車トヨタ7が目に入る。1階部分は「富士モータースポーツミュージアム」となっており、国内外問わず、歴代の名車が並べられている。ホテルとミュージアムが渾然一体となっているのだ。ロビーフロアへ続く長いエスカレーターからは、トヨタ2000GTやNISMOスカイラインGT-Rなど、マニア垂涎のクルマたちを眺めることができる。

 

 

 

 

 インテリアはモダンかつ温かみを感じさせるもの。デザインはシンガポールに拠点を置き、世界の名だたるラグジュアリーホテルを手掛けるハーシュべドナーアソシエイツが担当した。至るところにモータースポーツをモチーフにしたデザインが散りばめられている(例えばロビーラウンジの天井はクルマのグリルをイメージしたものだ)。

 

 

 

 

 館内には数え切れないほどのアートピースが飾られている。それらの多くがモータースポーツにインスパイアされた作品だ。写真の球体は世界各地のサーキットのコースを組み合わせたオブジェである。複雑な曲線が独特の存在感を醸し出している。その他にも工具やミニカーをモチーフにしたものなど、クルマ好きが思わず笑みを浮かべるような品々が並べられている。

 

 

 

 

 客室はスタンダード、デラックス、スイート、ヴィラの4種に大別される。スタンダードでも43㎡〜の広さを誇り、ゆうゆうとした空間を満喫できる。富士山サイドからは雄大な霊峰を眼前に望むことができる。サーキット・サイドからは富士スピードウエイのパナソニックコーナーに手が届きそうだ。部屋からのレース観戦も可能である。大きなウォーキングクローゼットが備え付けられているのが、洒落者にとってはありがたい。

 

 

 

 

 面白いのは、まるで組み立て前のプラモデルのように並べられたアメニティ(MIKIMOTO製など)。ホテルの隅々にまで遊び心が散りばめられている。「ゲストを楽しませよう」という一貫した姿勢が感じられる。

 

 

 

 

 独立棟であるヴィラは全部で5室用意されており、最大のものは150㎡もの広さを誇っている。部屋とガレージの間はガラスウィンドウで仕切られており、室内から駐車されたクルマを見通すことができる。愛車を眺めながらグラスを傾けるのも悪くない。

 

 またこちらはペットと一緒の宿泊も可能となっている。最大3匹までの愛犬を同伴することができる。ケージや専用ドッグランなど、ペット用の設備も充実している。

 

 

 

 

 このホテルのウリのひとつは、充実したスパ施設「Omika Wellness & Spa」である。スパ棟は別館となっており、20mの長さの広々としたプールやジャグジーをはじめ、スポーツジム(マシンは伊テクノジム製)、トリートメント・スペースが設えられている。またヨガレッスンなども行われている。パートナーがサーキット走行に興じている間、ゆっくりとリラクゼーションを楽しむことができる。

 

 

 

 

 トリートメントは「Omika シグネチャー グリーンティーピュアリチュアル」をはじめ、多彩なメニューが用意されている。アメニティは最新の植物バイオメソドロジーを掲げる「Waphyto(ワフィト)」と真珠粉を添加したMIKIMOTOのものが奢られている。

 

 

 

 

 日本人なら誰もが嬉しい大浴場も完備されている。富士山を眺めながら、大きな湯船の中で手足を伸ばす快さは何物にも代えがたい。ホテルの地下1,500mから汲み上げられる源泉の泉質は硫酸塩泉というもので美肌に効くという。

 

 実はあまり知られていないが、ここはホテル宿泊者でなくても日帰り温泉(予約制・¥2,550)として利用することが可能である。サーキットを走った後に、汗を流すことができるのだ。

 

 

 

 

 ジム内にはレーシングシュミレーターが置かれている。富士スピードウエイを精密に再現したコースを、フェラーリやポルシェ、トヨタGRなど数百種類のクルマを選んで走行することができる。シートやステアリングホイールを通じてリアルな振動が伝わり、まるで実際のコースを走っているような気分にさせられる。プロのレーサーも練習に利用するほどだという。

 

 

 

 

 もちろん、本物のサーキットを走行することもできる。ホテルを通じて、体験走行のレンタル車両の優先予約が許されている。ゲストには一番人気のアトラクションだという。

 

 トヨタGRカローラやGRスープラなど人気のスポーツカーをレンタルし、数々の名勝負が生まれたアスファルト上を、自らハンドルを握って周回することができるのだ。気分はレーシング・ドライバーである。

 

 

 

 

 さて、富士スピードウエイホテル最大の目玉はグルメである。館内には2つのレストラン、1つのバーが設けられている(写真は「TROFEO(トロフェオ)イタリアン」)。宿泊するゲストは、ほぼ全員がホテル内で食事をするというから、厨房も気合いが入ろうというものだ。

 

 

 

 

 イタリア語でトロフィーの意味を持つ「TROFEO」は、洗練されたイタリア料理を提供する。こだわっているのは地元・静岡の食材を使うこと。高糖度アメーラトマト、朝霧高原のモッツァレラチーズ、静岡クレアファームのオリーブオイルなどが使われている。いずれもフレッシュさが身上だ。

 

 

 

 

 一方、和食派は「Robata OYAMA」を選びたい。こちらも地元食材をふんだんに使った料理を供している。カウンターの手前に氷が敷き詰められ、客の眼前に本日の食材が並べられている。材料に自信がある証拠だ。

 

 コース料理は¥13,200(全7品)〜。その一端をご紹介しよう。

 

 

「サカグチヤ豆腐の冷製茶碗蒸し 海ぶどう」

 

 

 

 サカグチヤは御殿場に位置する有名豆腐店。富士の湧き水で豆腐を仕込んでいるという。これに県産の高糖度トウモロコシ「甘々娘(かんかんむすめ)」のすり流しを合わせてある。トッピングされている海ぶどうは沼津のプールで養殖されたものだという。

 

 

「オリジナルスパイスで楽しむ鰹のタタキ 炭火炙り」

 

 

 

 御前崎で揚がった鰹を炭火で炙った一品。これを塩、コリアンダー、ピンクペッパーを混ぜ合わせたスパイスにつけて食す。実はコリアンダーと鰹はよく合うのだ。付け合せのポテトサラダには鰹の酒盗が混ぜられている。

 

 

「蝦夷アワビの炭火焼き 駿河湾産アカモクと長ねぎ 鰹節和え添え」

 

 

 

 新鮮なアワビを炭火にかざし、アカモクをかけたもの。アカモクとは駿河湾で採れる海藻で、食物繊維やミネラルを豊富に含み、スーパーフードとして注目されている。口中いっぱいに潮の香りが広がる。

 

 

 

 

 これらに合わせた酒は、「佐吉の里 巧 純米吟醸(花の舞酒造)」と「天虹 純米大吟醸 50 山田錦(駿河酒造)」。前者の佐吉とはトヨタ創業者、豊田佐吉のことで、トヨタ系列のお店にしか卸されないものだという(富士スピードウエイホテルのオーナーはトヨタグループである)。静岡は知られざる左党天国で、県内には25もの蔵元がひしめき合っている。

 

 

「焼津ミナミマグロ中トロと旬魚の握り寿司3貫とお任せ巻物」

 

 

 

 焼津といえばマグロである。極上の中トロ、イサキ、駿河湾産のアジ。巻物は小山町特産の水かけ菜の醤油漬け。いずれも超一流の味である。

 

 聞けば料理長の泉地浩二氏は静岡県の出身で、長らくハイアットリージェンシー箱根に務めていたとか。県産の魚の目利きとして右に出るものはいないのだ。

 

 

 

 

 メニューは3ヶ月毎に変わり、来る人を飽きさせない。海と山に挟まれた静岡の豊かな自然を感じさせる「口福」な体験であった。

 

 海外からのゲストも多く、最高レベルの和食に舌鼓をうっていた。スタッフは英語での応対も流暢にこなす。

 

 

 

 

 食後はバー「BAR 4563」へ。4563という数字は富士スピードウエイの全長を表している。ここにはガイアフロー静岡蒸溜所のジャパニーズ・シングルモルトが揃えられている。2020年に初リリースされた新しい蒸留所だが、早くも国内外で高い評価を得ている。蒸留器ごとに原酒を分けたプロローグ「K」「W」とふたつをバッティングさせた「S」が一度に楽しめるティスティングセットがおすすめだ。

 

 

 

 

 翌朝の朝食はビュッフェとなる。ここでも静岡の味が並べられている。東海道五十三次にも描かれた丸子宿の老舗、丁子屋のとろろ(同店以外で提供しているのはこのホテルのみ)、サカグチヤの豆腐、御殿場米はぜひ試してみたい逸品たちだ。

 

 

 

 

 富士スピードウエイホテルは、モータースポーツのファンだけでなく、そうではない人々にとっても格好のデスティネーションである。世界でも類を見ない、サーキットに隣接するラグジュアリーホテルというユニークさのみならず、ひとつのリゾートとして特筆に値する存在なのである。

 

 

富士スピードウエイホテル

静岡県駿東郡小山町大御神

TEL.0550 20 1234

www.hyatt.com/ja-JP/hotel/japan/fuji-speedway-hotel/fswub

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