ルイ13世エクスペリエンス・ディナー
@アンダーズ東京 with THE RAKE

October 2022

text KENTARO MATSUO

 

 

 

 

 変わりゆく東京を象徴するエリアが虎ノ門である。数年後には、現在建設中の日本一高いビルを中心とした、一大アーバン・リゾートが誕生するという。その中でも一際高いステイタスを誇るのが、虎ノ門ヒルズの高層階を占めるラグジュアリー・ホテル、アンダーズ東京だ。

 

 エレベーターで51階まで上り、メインダイニングのザ タヴァン グリル & ラウンジの奥に隠されたプライベート ダイニングの扉を開けると、東京の街並みを一望できる特別な空間が広がっている。

 

 9月某日、この最高の舞台で、至高の美酒を味わおうという試みが行われた。フランスが誇るコニャック、ルイ13世のエクスペリエンス・ディナーである。

 

 ルイ13世は1本を作るのに、なんと1世紀の時を要するという。その芳醇な香りを生み出すのに、100年間熟成させた原酒が必要だからだ。1874年の誕生以来、歴代のセラーマスターが、その伝統を守り抜いてきた。

 

 

 

 

 まずは食前酒として一杯。ルイ13世が抜栓されると、部屋中がかぐわしいアロマで満たされる。凡百のブランデーとはまったく違う、馥郁たる芳香である。

 

 特製のクリスタル・グラスは、杯同士を打ち合わせると「カーン」と高らかな音を鳴らす。一口含むと、その深く複雑な味わいに瞠目する。フローラル、フルーツ、スパイス……、鼻腔に広がるノートは数百にも及ぶという。

 

 ブルゴーニュの3ツ星レストランなどで腕を磨いた山口卓也シェフが提供するキャビアや雲丹、青首鴨などを使った贅沢な料理は、ルイ13世の親会社であるレミーコアントロー グループの銘醸ワインとペアリングにてサーブされた。参加者は料理とワインのマリアージュに舌鼓をうった。

 

 

 

 

 ルイ13世は、100年間という時間を実感してもらうために、俳優ジョン・マルコビッチやミュージシャン、ファレル・ウィリアムスとコラボし、100年後に公開される映画や音楽を製作したこともあるという。アンバサダーが語る壮大なストーリーは、ゲストたちを果てしない時空の物語へと誘った。

 

 食後酒として、さらにもう数杯。飲み干したグラスに残るアフターノートは、1時間以上も続くという。その余韻を楽しみつつ、参加者は心地よい酔いに身を委ねたのであった。