ESPACIO THE HAKONE GEIHINKAN RIN-POH-KI-RYU

幽玄なる山間の宿で、“本物の美”を体験する

September 2024

photography natsuko okada

「匠」のダイニングルーム。この客室は、2組のファミリーに加え、多数のゲストをもてなすことができる。欧米の富豪のカントリーハウスを思わせる間取りだ。箔工芸作家・裕人礫翔氏の屏風「風と月」が存在感強く飾られている。

アートミュージアムの中に泊まる、唯一無二のエクスペリエンス

「エスパシオ 箱根迎賓館 麟鳳亀龍」は、ホテルというよりミュージアムに近い。館内は大小さまざまのアートピースが、数え切れないほど飾られているのだ。

 まず来訪者を驚かせるのは、国道沿いのアッパーレセプションに鎮座する3領の鎧兜であろう。圧倒的な荘厳さに溢れ、見る者の目を奪い、日常から仙境へと誘う。客はここで異世界への一歩を踏み出すのだ。

アッパーレセプションに鎮座する3領の鎧兜たち。圧巻の存在感を放っている。左から、伊達政宗、箱根からの小田原攻めを命じた豊臣秀吉、徳川家康の甲冑を再現したものである

 各客室は別々の作家が担当している。素晴らしい芸術的感性と、抜きん出た匠の技を併せ持つ、巨匠たちの作品を間近で鑑賞できるのだ。

 例えば「煌(きらめき)」と名付けられた部屋には、彫刻家・橘智哉氏の作品が飾られている。金属を加工し、その表情を引き出す作風は、部屋のネーミングにふさわしい。

 また「大地」と呼ばれる部屋は、左官職人・挾土秀平氏によって手がけられたものだ。伝統の技術を駆使し、土に刻み込まれた模様は、まさに豊穣の大地を思わせる。

「煌(きらめき)」は総面積約141㎡。ふたつのリビングダイニング、ふたつのベッドルーム(Wベッドふたつずつ)、ふたつの内風呂を備える。プール、露天風呂、サウナも併設されている。

「大地」は総面積約195㎡。2組のファミリーがそれぞれのプライベートを保ちながら滞在できる設備になっている。国内はもとより海外からの超富裕層にも対応できる超一流のファシリティといえる。

 圧巻は最大の広さを誇る「匠」である。箔工芸作家・裕人礫翔氏の絢爛な大作をはじめ、7名の作家陣の作品で埋め尽くされているのだ。ホテルが持つすべての要素を集めた部屋となっているのである。「エスパシオ 箱根迎賓館 麟鳳亀龍」は、まるでアートミュージアムの中に宿泊しているような気分を味わえる、唯一無二のホテルなのである。

館内にちりばめられた、当代一流のアーティスト

「麒麟」「鳳凰」「亀」「龍」という吉祥の象徴をさまざまなアーティストが表現。意匠とし部屋を飾っている。


左:裕人礫翔(ひろとらくしょう)/金箔加工技術を駆使したアート作品で知られる。右:橘智哉/音、風、火、光などを、金属素材を使って鮮やかに表現する彫刻家。


左:トトアキヒコ/和紙に手仕事で文様を写す伝統技法を継承しアートへと昇華。右:塩澤正信/日本の伝統工芸「組子」を繊細かつ独特の手法で芸術へと押し上げた。


左:挾土秀平/壁などにコテを使って模様を描く左官の技で力強い造形を生み出す。右:村本真吾/しならせた竹の上に布を張り、漆を施す。艷やかな光沢と曲線が美しい。

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