DIOR STRAITS

ディオールの真髄はテーラードにあり

February 2024

「流行の神様」と讃えられたクリスチャン・ディオールは、布地と縫製にこだわる真のクチュリエだった。その精神は現代に至るまで引き継がれている……
photography kim lang
fashion direction grace gilfeather
creative direction brandon hinton

キャメルウールのオールシーズン・スーツベージュのキャメルウール ツイルを使用したオールシーズン活躍するスーツ。フィット感が際立つシングル・ジャケットに、クラシックフィットのトラウザーズが組み合わされている。
スーツ ¥840,000、シャツ ¥100,000 both by Dior

 クリスチャン・ディオールは、1905年、ノルマンディーの実業家の息子として生まれた。画商からデザイナーに転身し、第二次大戦後の1947年に「ニュールック」を発表。長くフレアしたスカートが話題を呼び、一世を風靡した。

 だが、上半身のジャケットは、テーラードの技術を駆使して作られていた。彼は芯地や裏地とのかみ合わせにこだわり、「いかにして造形的な服を生み出すか」に腐心していた。

 1957年にディオールが世を去ると、ブランドはイヴ・サン=ローラン、マルク・ボアンなどの実力派によって引き継がれた。彼らは「~ライン」「~ルック」など常に新しいトレンドを提唱し、ファッション界を牽引していたが、その背景にはいつも確固たる技術的な裏付けがあった。

 2001年には、ディオール オムのクリエイティブ ディレクターにエディ・スリマンが就任し、メンズ服飾界にセンセーションを巻き起こした。彼のデザインしたスーツやジャケットは、非常にスリムで、極限まで絞り込まれていた。それでも袖を通すことができたのは、パターンや縫製にさまざまなテクニックが駆使されていたからだ。

 現在、メンズ・コレクションのクリエイティブ ディレクターは、キム・ジョーンズが務めている。ストリートやコラボが注目されてきたデザイナーだが、伝統技術に対するリスペクトは忘れてはいない。

 スーツやジャケット、タキシードのベースとなっているのは、すべてクラシックなテーラードである。これを少しだけモダナイズし、着る人を凛々しく、若々しく見せるコレクションを完成させている。ショルダーやウエスト・ラインの美しさは特筆ものだ。ブランドとしてのディオールは、多くの変遷を経てきたが、一貫して変わらないのは、「シンプルなデザイン」と「サヴォワールフェール(匠の技)」である。テーラードはディオールの真髄なのである。

ディオール流、POWチェックプリンス・オブ・ウェールズ・チェックが採用されたワークウェアベースのジャケット。包みボタンなど、さり気ないディテールへのこだわりもディオールの特徴だ。
ジャケット ¥370,000、シャツ ¥100,000、トラウザーズ ¥79,000(参考価格)、サングラス ¥63,000、リング ¥66,000 all by Dior

モダンに進化したダブルジャケットブラックの軽量ウール&モヘアキャンバスで仕立てた4つボタンのダブルブレステッド・ジャケット。ストラップで留める前立のボタンとフラップ付き胸ポケットを特徴としている。ラペルには取外し可能な“CD”のアイコン・ピン付き。
ダブルジャケット ¥380,000、シャツ ¥100,000、トラウザーズ ¥135,000、タイ ¥34,000(参考価格)、シューズ ¥148,500 all by Dior

ネイビーカラーのタキシードサンドブラスト加工を施したネイビーブルーのバージンウール製1Bタキシード。細身のショールカラーがスタイリッシュだ。シャツとボウタイを合わせれば、特別なシーンにふさわしいルックが完成する。
タキシード ¥560,000、ボウタイ ¥30,000(参考価格)、シャツ ¥100,000、シューズ ¥154,000 all by Dior

究極のお洒落シーンで白のタキシードをシングル・ブレステッドとピークドラペルを組み合わせたホワイト・タキシード。サテンの包みボタン付き。時にはこんな1着で洒落のめすのも悪くない。
タキシード ¥510,000(参考価格)、シャツ ¥95,000、ボウタイ ¥30,000(参考価格)、リング ¥60,000、シューズ ¥154,000 all by Dior