CHOPARD ALPINE EAGLE
スポーツシックのエレガンス:ショパール「アルパイン イーグル」
February 2023
1980年に誕生した「サンモリッツ」にインスパイアされ、現代的に解釈されたショパールの「アルパイン イーグル」。今年登場した33mm径は、心憎いほどのリッチなテイストとコンテンポラリーな美しさを湛える。
text kioko kobayashi
Alpine Eagle 41(上):アルプス山脈のビオトープからインスパイアされた新色パイングリーンダイヤルに、ワシの虹彩を思わせるサンバーストモチーフが施された「アルパイン イーグル 41」。18Kエシカルローズゴールドによるヘアラインとポリッシュ仕上げが組み合わせられたブレスレット。COSC取得の自社製ムーブメント「Chopard 01.01-C」を搭載。ショパールブティックのみで販売。自動巻き、18KRGケース、41mm。
Alpine Eagle 33(下2点):新登場となった33mm径モデル。ダイヤモンドベゼルと8個のビスのリズミカルな輝きは格別なスポーツウォッチを印象づける。いずれもCOSCを取得した自社製自動巻きムーブメントを搭載したシースルーバック。左:一体型ブレスレットのセンターリンクにもダイヤモンドがあしらわれ、優雅なドーンピンク文字盤と相まって上品に華やぐ。自動巻き、18KRGケース、33mm。右:ルーセント スティール A223×18Kエシカルローズゴールドケース&ブレスレットで、コントラストの効いたコンテンポラリーな美しさのあるコンビネーションモデル。文字盤は光沢を帯びたシックなベルニナグレー。ゴールド仕上げのローマンインデックスが映える。自動巻き、SS×18KRGケース、33mm。
華麗で豊かな輝きは、メゾン ショパールの核である。カンヌ国際映画祭でショパールのハイジュエリーを纏う女優たちは、驚くほど多様なアイデンティティをジュエリーで表現する。しかしながら、ショパールが他と一線を画すのは、むしろその華やかな舞台裏で最も現代的なアプローチを怠らない点。エシカルな視線で見た将来にわたる価値を追求し、ショパールは素材の改良について一歩先んじた手を打ってきた。
例えばこの「アルパイン イーグル」が発表された2019年、ショパールはこのモデルのために独自のルーセント スティール A223を生み出す。抗アレルギー性は元より、従来の輝きもレベルアップさせただけでなく、1.5倍の硬度、そして70%のリサイクル素材から製造するという画期的なマテリアルを誕生させた。月の輝きのような陰影を映し込んだ上品なテイストは、これまでのスティールのイメージを一新する。もう一点特筆に値するのは、100%エシカルなゴールド。環境保護や労働環境などにおいて、倫理的に配慮された方法で発掘・供給されたゴールドは、ジュエリーだけでなく時計にも使用される素材となった。
ここまでマテリアルについて述べてきたが、スポーツウォッチの本領ともいえるメカニカルな精度とデザイン性はどうだろう。ショパールの開発技術と確実な進歩は「アルパイン イーグル」に組み込まれている。いずれのサイズにおいても、ムーブメントはスイス公式クロノメーター検定局の厳格な認定を受けており、文字盤に「CHRONOMETER」の認証が刻まれる。
機能を重視するあまりデザインに行き過ぎの感があるスポーツウォッチが多いが、この「アルパイン イーグル」はむしろ明快な表現で無駄がない。大胆なインデックス、くっきりとした針、8本のビスにセンターリンクが際立つ一体型ブレスレット、遠目からもそれとわかる個性の引き立つデザインだ。さらにいえば今回追加された33mm径は、これまでに発売された44mm、41mm、36mmとは異なる趣があり、完成された優雅さを引き出している。ベゼルに滑らかにセッティングされたダイヤモンドはむしろ控えめ。現代的な色彩のコントラストは、ローズゴールドとダイヤモンドの溶け込む優美さ、スティールとローズゴールドのエッジの利いた美しさをカバーする。いずれも自分らしさを大切にする女性には不可欠である。
さて「アルパイン イーグル」誕生にはふたつの物語がある。ひとつはショパールのエシカルなアプローチの一環として、アルプスの豊かな自然にインスピレーションを得たこのモデルを通じ、アルプスの環境保護にコミットする物語であり、もうひとつはショイフレ家3代のスポーツウォッチの原点を巡る、ファミリーとその情熱の物語である。
1980年に誕生した「サンモリッツ」は、世界の富裕層の冬のリゾートであるサンモリッツの社交界を反映したスポーティでありながらラグジュアリーな時計であり、大胆なデザインは8本のビスに象徴的にあしらわれていた。これに対し「アルパイン イーグル」は「サンモリッツ」と同様、一体型ブレスレットのコントラスト豊かなコンビネーション、ダイヤルのテイストフルなサンバースト模様、ローマンインデックスと調和したビス留めベゼルを統合したタイムレスな美しさが際立つ。
ショパール現共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレが考案した初のクリエイション「サンモリッツ」を息子カール-フリッツは常に意識していたに違いない。密かに祖父カールのサポートを取り付け、新プロジェクトを進行、一時は父の反対を受けたものの、時計への情熱と信念が揺らぐことはなく、結果3世代は協力して「アルパインイーグル」の完成へと足並みを揃えたことにより、息子カール-フリッツのデビュー作となった。名実ともに進化した現代的で端正なスポーツウォッチ「アルパイン イーグル」は、ファミリーにとって新世代誕生のマイルストーンとなったのである。
ショパール現共同社長カール-フリードリッヒ・ショイフレ、鷹匠のジャック=オリヴィエ・トラヴェール(「レマン湖のワシ」動物公園クリエイター)、NGO団体「Freedom」のマネージングディレクターであるロナルド・メンゼルの3人が中心となり、2019年に「アルパイン・イーグル・ファウンデーション」を設立。「アルプスを守る」をスローガンに、まずは生態系のトップに立つオジロワシの再導入計画を進める。レマン湖の魚を主食にし(別名「フィッシュ・イーグル」)、雄大な翼を持ち、俊敏で軽快なオジロワシは、130年もの間この地域から姿を消していたが、財団が「レマン湖のワシ」動物公園に新個体を導入したことにより、親鳥の巣で81日間過ごした雛鳥の最初の4羽が巣立った。GPSを付けたワシは今のところ順応しているという。財団はさらにアルプス山脈全体の生態系保護へと活動を拡大させる。「アルパイン イーグル 41」の新作、パイングリーンダイヤルモデルのケースバックには財団のロゴが施されており、売り上げの一部が財団に寄付される。
THE RAKE JAPAN EDITION issue49